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三島由紀夫の総合研究

創立35年の老舗「三島由紀夫研究会」の会報を兼ねた、あらゆる角度からの総合研究メルマガ

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三島由紀夫研究会メルマガ

2018/08/08

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『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
    平成30年(2018)8月8日(水曜日)
         通巻第1274号   
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「混迷するアジア情勢と日本の安全保障」
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 織田邦男(元航空自衛隊空将、東洋学園大学客員教授)
          国防問題研究会公開講座(平成30年7月26日)

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 今、日本国民の耳目は朝鮮半島に向いているが、中国は虎視眈々と日本を狙っている。また北朝鮮が核放棄するのかをめぐって、日本では二つの誤解がある。
北朝鮮はGDPの約20%を国防費に投入しており、その約2/3を核・ミサイル開発に注ぎ込んできた。その結果、通常戦力が犠牲になり、装備の中には朝鮮戦争時代のものがそのまま使われている。
つまり北朝鮮は現代戦を戦うための通常戦力がないのである。北朝鮮を追い詰めれば、暴発して再び南進するというが、もうその能力はない。これが第一の誤解である。

そのことを最もよく分かっているのが金正恩である。
北朝鮮にとって、今年6月にシンガポールで開催された米朝首脳会談の最大の狙いは金王朝の体制維持である。非核化のカードを出している間は米国から攻撃されないため、北朝鮮は可能な限り、時間を稼いで軍事面の安全を確保しようとしている。
また金正恩はこれまでの先軍政治を変更し、軍事と経済の並進路線を打ち出した。だが最近になって、経済重視路線に舵を切った。
そうしなければ、北朝鮮は経済的、政治的に生き残れないと分かっているからである。北朝鮮には20万の特殊部隊がいるものの核とミサイルを放棄すれば、完全に武装解除された状態とになると言っていい。金王朝を守る術がなくなるわけだ。
したがって北朝鮮が簡単には核とミサイルを放棄しない。

 そもそもCVID(完全な検証可能、かつ不可逆な核廃棄)を実現するには、金正恩が正直に申告することが前提である。
北朝鮮のミサイルは山に掘られたトンネルに格納されているため、米国の偵察衛星の情報収集能力だけで完璧な査察はできない。
しかるに日本は米国の情報能力を過大評価している点が第二の誤解である。
私はソ連崩壊の翌年、スタンフォード大学に留学した。当時、米国では冷戦時代に作り上げた核の生産基盤をどうするか、張り巡らされた対ソ諜報網をどうするか、ということが盛んに議論されていた。
結果的には、両者ともダウンサイズしてしまった。当時は北朝鮮へ諜報能力を振り分ける話は一切出なかった。
北朝鮮に対する諜報能力は偵察衛星を除けば、ほとんどなきに等しい。今の米国にはもし北朝鮮が意図的に申告しなかった場合、その未申告内容を全て明らかにし、特別査察を実施する能力はない。
おそらく金正恩はその盲点を突き、すべての核を全て正直に申告するのではなく10発程度は引き続き保有できるよう、隠しておこうとしていると思われる。


▲たしかに尖閣は安保条約第五条が適用されると米国は明言したが。。。

 2017年2月10日の日米首脳会談で最も画期的だったのは、日米共同声明で尖閣諸島が日米安保条約第5条の対象であると明文化したことである。
ただし安保条約第5条は日本の施政下にある領域に適用されるものであり、また米国の自動参戦を保障するものではないという点に注目しておく必要がある。
「米国が尖閣を守ると言った」というような日本のメディアの異常なハシャギ振りこそ、安全保障に関する日本国民の思考を停止させる原因になっている。

1969年のニクソン・ドクトリンは、領土・領空・領海を守る責任は一義的には当事国、つまり日本人であることを明確にしている。また、中国はさきに述べた安保条約第5条の盲点を認識しており、そこを突こうとしていることを日本人は自覚すべきである。
 中国は、尖閣諸島は核心的利益であると明言しており、決してあきらめることはない。そのために米軍に介入させない戦略を構築している。
具体的には軍は投入せず、非軍事・準軍事作戦により、徐々に実効支配を奪取するというものである。
現在、中国は公船によって尖閣周辺の領海侵犯を繰り返し、少しずつ実効支配を獲得しようとしている。
これを米国では「サラミ・スライス戦略」と呼んでいる。それに加えて世論戦で国際社会において、中国こそが実効支配をしていると訴え、国際世論を有利に誘導しようとしている。

 中国の戦略は米国とは事を構えないこと、しかしながら尖閣諸島の領有権は核心的利益であり、決してあきらめないとする二点にある。
中国の最優先課題は共産党一党独裁体制の存続であり、これを守るためには武力行使は躊躇しない。
二番目の課題は、国内社会秩序を維持であり、分離独立の動きを排除することである。
三番目の課題は、経済成長を持続することであり、これがなければ一番目、二番目の課題は立ちいかない。
従って国際社会で孤立したり、制裁を受けるなど、経済成長の障害を招来することは避けたいと考えている。
そのため、「不戦屈敵」に基づく三戦(心理戦、世論戦、法律戦)を展開することで、尖閣諸島の実効支配獲得を目指しているのである。


 ▲中国はグレーゾーンで勝負してくるだろう

中国は軍を出さず、準軍事作戦により成果を出すため、平時でも有事でもないグレーゾーンで勝負してくる。
その際に主力として投入されるのが海警や武装民兵である。
もうすぐ、中国海警局には76ミリ機関砲を装備した1万2千トン級のヘリコプター搭載型大型警備船が竣工する予定である。そして、今年7月には海警が中央軍事委員会直属の武装警察部隊に編入された。
現在、中国側は「3─3─2フォーミュラ」(毎月3回、1回につき3隻が2時間の領海侵犯)を繰り返し、かつ、メディアを通じて世界に発信する世論戦を展開している。海警による領海侵犯を常態化させたことにより、日本の実効支配を打破したという主張を国際社会に発信している。実効支配を奪うことにより、事実上、日本の施政下にない状態を作り出すことで、安保条約第5条の死文化を図ろうとしているのである。

 私が危惧しているのは、海警の行動が、質量ともに海上保安庁の対処能力を超える場合、日本政府が海上自衛隊を安易に出動させようとしていることである。
自衛隊は国際社会では軍として認知されている。「日本が最初に軍を出した」と中国が国際社会に宣伝すれば、米国の対日世論も悪化する可能性がある。軍隊の投入は最後の手段であり、警察権行使だからといって、軽々と自衛隊を投入すべきではない。
中国に海軍投入の口実を与えるだけであり、中国の思う壺である。
その結果、中国側が対抗して海軍を投入してくれば、警察権行使に制約された状態の自衛隊が負けるのは明らかである。

尖閣諸島については、中国が海警を投入する限り、自衛隊は投入せず、海上保安庁や警察で対応すべきである。
そのためには海保、警察をもっと強化せねばならない。世界の沿岸警備隊は準軍事組織であり、わが国も海上保安庁を改正して、現在の「海上の安全、治安の確保」という任務に加えて、領域警備、臨検活動、船団護衛等の任務を与えるべきである。

次に空のグレーゾーン事態について述べる。すでに空では熾烈な戦いが始まっている。冷戦時代、我が国周辺空域で活発に活動するのはソ連の爆撃機による偵察活動が中心であった。搭乗員も洗練されていたので、危険飛行もなかった。
今、尖閣周辺空域での中国の活動は戦闘機主体による実効支配争奪が目的である。搭乗員も未熟であるため、何をするか分からない危険な状況である。

空は陸や海と異なり、平時から航空自衛隊が対応している。本来、領空侵犯があれば、これに対し、退去、強制着陸させ、これに従わない場合、撃墜で対処することが国際慣例となっている。
これができて初めて実効支配していると言える。これに対し、自衛隊法には領空侵犯措置についての権限規定がないため、国際法、国際慣例に従って厳格に対応できないのが問題である。今の政府は領空侵犯に対しては厳格に対応すると言っているが、自衛隊に権限を与えていない点でダブルスタンダードとなっている。


 ▲謀略戦で熟柿の落ちるを待つ

 今、中国は米国と事を構えたくないので、謀略戦を多用し、熟柿の如く目的を達成しようとしている。
この「熟柿戦略」の目指す本丸は沖縄である。辺野古移転やオスプレイ配備、あるいは北部訓練用ヘリパッドの建設などへの反対運動の背後には中国系勢力がいる。
中国は恣意的に琉球と日本政府という対立構図を作ることで、沖縄を中国側に引き込もうとしている。2016年3月に公表された「米中経済安保調査委員会年次報告書」には中国の進める工作活動の実態が明らかにされている。
日本人だけが能天気に、こうした中国による「謀略戦」の実態を知らないことは恐ろしいことである。

 日本人は国を守るのは我々日本人であるという当事者意識を持つと共に、弱さを自覚し、リアリティーを追及しなければならない。
日本の平和と安全は一国では対応できない。

日本にとって、核、攻撃力、情報、シーレーン、軍事技術という5つの傘は米国に依存せざるを得ない。
日米同盟の活性化、緊密化が戦争を抑止する。中国が最も避けたいのは米国と事を構えることであり、ここぞという絶妙な時に機能しない日米同盟にしてはならない。

そのためには、日本が米国を巻き込む知恵が必要である。
米国の対外的な関与が縮小傾向に入っている今、日本の役割を拡大していくことで米を巻き込む知恵、米国を日本の為に活用する「活米」の知恵が求められている。同盟はガーデニングと一緒であり、少しずつ手を入れなければ、すぐに荒廃してしまうものである。
もしも米海軍が横須賀から撤退すれば、米国はインド・太平洋地域への影響力を失うことになる。
こうした事実を踏まえた上で、日本は日米同盟の強化に取り組むべきである。ただし、尖閣諸島は日本独力で守らなければならず、米軍の介入を期待してはならない。
中国は米軍が介入しない形でこれを奪取しようとしているからだ。安保体制のさらなる改善も必要であり、そのための憲法改正は待ったなしである。

(三島由紀夫研究会事務局速記)
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 事務局からおしらせ 事務局からおしらせ
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8月の公開講座は澤村修治氏
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        記
日時   8月24日(金)18時半開演(18時開場)
場所   アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師   澤村修治(作家・文芸評論家)
演題  「西郷隆盛、日本浪曼派、そして三島由紀夫」(仮題)
<講師略歴>昭和35年生れ。東京都出身。千葉大学人文学部人文学科卒。大手出版社勤務、新書や選書の編集長をつとめる傍ら、主に評論と評伝の執筆を行う。『表現者』にも寄稿。主な著作『悲傷の追想「コギト」編集発行人、肥下恒夫の生涯』(ライトハウス開港社)『敗戦日本と浪曼派の態度』(ライトハウス開港社)『唐木順三―あめつちとともに』(ミネルヴァ書房〈日本評伝選〉)『西郷隆盛 滅びの美学』(幻冬舎新書)その他多数。
会場分担金 会員・学生1千円(一般2千円)
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9月公開講座講師は作家・伝統文化評論家の岩下尚史氏。
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         記
 日時 9月25日(火)18時半開会(18時開場)
 場所 アルカディア市ヶ谷(JR・地下鉄「市ヶ谷」下車2分)
 演題 拙著「ヒタメン」について
    https://honto.jp/netstore/pd-book_28077482.html
講師 岩下尚史(いわした ひさふみ)作家・伝統文化評論家、國學院大客員教授
 講師略歴 昭和36年生れ。熊本県出身。國學院大卒、新橋演舞場企画室長を経て作家・評論家に。平成19年『芸者論:神々に扮することを忘れた日本人』で和辻哲郎文化賞受賞。三島由紀夫を論じた『見出された恋:「金閣寺」への船出』や『ヒタメン』の著作がある。(いずれも文春文庫)
 会場分担費 会員・学生1千円、一般2千円


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後藤修一氏を偲ぶ会を9月29日に開催します
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 当会幹事の後藤修一氏(享年66)を偲ぶ会を9月29日に開催します。
友人、同志が集まって誰からも愛された後藤修一氏の人柄を偲び、語り合う場です。

日時 9月29日(土)午後6時〜8時半(午後5時半受付開始)
会場 アルカディア市ヶ谷(私学会館。JR・地下鉄「市ヶ谷」徒歩2分)
    形式 立食パーティ
会費 1人7千円
主催 三島由紀夫研究会
 尚この会は当会関係者には後日正式のご案内をお送りします。一般の方で参加を希望される方は当会事務局までご連絡願います。
 事務局 TEL 090-1611-9839
       Eメール yukokuki@mishima.xii.jp


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10月公開講座、は憂国忌発起人で元朝日新聞記者・編集委員の井川一久氏
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 講演テーマのクァンガイ陸軍中学とは戦後残留した日本人将兵が教官としてヴェトナム青少年を教育して精強なヴェトミン軍、ヴェトナム軍の指揮官、将校を育成した陸軍士官学校である。
昭和29年ディエンビエンフーで仏軍を撃滅した戦いも、昭和50年サイゴンを陥落させて米軍を撃退した戦いも正にこの学校で鍛えられた日本精神を発揮したが故の勝利であった。井川氏がこの歴史と経緯を熱く語ります。

日時  10月25日(木)午後6時半開会(午後6時開場)
会場  アルカディア市ヶ谷(JR・地下鉄「市ヶ谷」徒歩2分)
講師  井川一久氏(元朝日新聞記者、編集委員、憂国忌発起人)
演題  ヴェトナム独立戦争に挺身した日本人たち
       〜典型としてのクァンガイ陸軍中学教官団
    (講師略歴 昭和9年生れ。愛媛県出身。早稲田大学政経学部卒後朝日新聞入社、以降、外報部で活躍。ハノイ初代支局長をはじめ長年インドシナ情勢を取材。現在も大東亜戦争終結後ヴェトナムに残留し、インドシナ戦争(対仏独立戦争)やヴェトナム戦争(対米戦争)で戦った日本人将兵の記録に取り組んでいる。
会費 会員・学生1千円(一般2千円) 
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  三島由紀夫研究会 http://mishima.xii.jp/contents/index.html
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創刊日:2006-01-12  
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