文学

三島由紀夫の総合研究

創立35年の老舗「三島由紀夫研究会」の会報を兼ねた、あらゆる角度からの総合研究メルマガ

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三島由紀夫研究会メルマガ

2018/07/11

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『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
    平成30年(2018)7月11日(水曜日)
         通巻第1263号   
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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
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 加賀藩下級武士の末っ子、幼き頃からのペシミズム
  這い上がっても、そこに理想はなかったのか、徳田秋声の生涯

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松本徹『徳田秋声の時代』(鼎書房)
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 かなり長い時間、ツンドク状態だった。
 三島由紀夫研究の第一人者が、「なぜ? 徳田秋声なのか」
 加賀藩の下級武士の小せがれ、廃藩置県で父は職を失い、一家離散。ペシミズムが身についている。
 徳田は当時の文学状況に、尾崎紅葉や二葉亭四迷、坪内逍遙の活躍を夢見ながらも、「そこに自身の目標だとか理想はなかった。その点では怖ろしく冷淡で、冷めていた。それというのも、そこに理想を見出したところで、没落の過程に身を置く者が、どうしてそれを目指して進むことが出来るだろう。自分はその資格を欠いた者、との気持がいよいよ深まる一方だったのである」(171p)。
 そうした青春時代に転機がきた。
 徳田秋声は泉鏡花とならんで尾崎紅葉門下、もうひとりの弟子は田山花袋であることは知っていたが、現代日本人から見れば、いかにもかび臭い作家、そういえば徳田秋声には『黴』という作品もありましたが。
 評者(宮崎)にとって、秋声と泉鏡花は石川県人なので、親しみはあるし、室生犀星とともに、金澤には文学館もある。釈超空も、鈴木大拙も石川の人である。文学、哲学で、巨人を産んだ叙情の豊かな土地だったけれども、いまや石川県は「巨人の松井」という選手が有名なだけ。
 おくに自慢はそれくらいにして、徳田秋声は通俗小説と自然主義文学との境目を、はてしなく彷徨した。流浪の貧困人生。ある日、突然流行作家になる。
ところがなぜ流行作家になったのかと言えば、正統な評価からではなく、かの檀一雄と同様に、現在進行形のフリン物語を書いた。檀には、『火宅の人』があって、映画にもなって、ベストセラー。本来は浪漫派の作家だった。傑作は『花かたみ』と『夕日と拳銃』だろうが、誰も顧みない。
 徳田秋声もまたフリンの実話(いわゆる「順子」もの)を現在進行形で連載小説とし、完成前に映画になるという時代の寵児だった時期がある。
 しかし尾崎門下時代は、英語力を買われ、片っ端から西洋の小説を翻訳して糊口を凌いでいたという。
 翻訳は自ら丸善にでむいて選択するのではなく、紅葉のもとに新聞社、雑誌社から翻訳依頼がきて、その仕事を貰っていたということで、他方、田山花袋はモーパッサン、ゴンクールに集中した。
 「取り組み方が対照的であった。花袋は能動的、秋声は受け身的である。また、花袋は理念的、秋声は実際的と言って良いかもしれない。しかし花袋は、自分の語学力もあまり気にせず、関心の趣くまま、読んだのに対して、秋声は、紅葉訳とされる『鐘楼守』にしても、英訳本を参照して、かなり厳密に訳している」(30p)と、その姿勢の違いを明らかにしている。
 そのうえ、秋声はと言えば、田山花袋と異なって「翻訳から「本質的に影響らしい影響をほとんど受けず、我が国の風土、暮らしに根付いた、すぐれた自然主義的文学を生み出すことになった」。
 以下、秋声の伝記と文学論が続くが、国文学ファンでもなければ、徳田文学の意味は、卒論のテーマにもないにくい時代となった。
 それにしても、この徳田秋声と三島由紀夫研究とは、松本氏の脳裏のなかで、いかなる相関関係になるのか?
十年ほど前に金澤の徳田秋声文学館開所式に行くという松本氏に訊いたことがある。「それは、三島研究の合間に、息抜きとして徳田秋声がちょうど良いのです」という意味のことをいわれて、なるほど、そういう相関関係の方程式で、この謎がとけたような気になったのである。
                          (評 宮崎正弘)
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 事務局からおしらせ
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七月の公開講座は、憂国の空の将軍として知られる織田邦男元空将を迎えて国防講座を開催します。

日時  平成30年7月26日(木)18時半開演(18時開場)
場所  アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師  織田邦男(おりたくにお)空将(退役)、元航空支援集団司令官
演題  「混迷する東アジア情勢と日本の安全保障」
参加費 2000円(会員千円)
   (織田氏の略歴 昭和27年生れ。愛媛県出身。昭和49年防大卒(18期)同年航空自衛隊入隊。F4戦闘機パイロットを経て第6航空団司令、航空開発実験集団司令、航空支援集団司令官などを歴任。平成21年空自退官。現在は東洋学園大学客員教授。一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員をつとめる)


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8月の公開講座は澤村修治氏
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日時   8月24日(金)18時半開演(18時開場)
場所   アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師   澤村修治先生(作家・文芸評論家)
演題  「西郷隆盛、日本浪曼派、そして三島由紀夫」(仮題)
<講師略歴>昭和35年生れ。東京都出身。千葉大学人文学部人文学科卒。大手出版社勤務、新書や選書の編集長をつとめる傍ら、主に評論と評伝の執筆を行う。『表現者』にも寄稿。主な著作『悲傷の追想「コギト」編集発行人、肥下恒夫の生涯』(ライトハウス開港社)『敗戦日本と浪曼派の態度』(ライトハウス開港社)『唐木順三―あめつちとともに』(ミネルヴァ書房〈日本評伝選〉)『西郷隆盛 滅びの美学』(幻冬舎新書)その他多数
会場分担金 会員・学生1千円(一般2千円)
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9月公開講座講師は作家・伝統文化評論家の岩下尚史氏。
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 日時 9月25日(火)18時半開会(18時開場)
 場所 アルカディア市ヶ谷(JR・地下鉄「市ヶ谷」下車2分)
 演題 三島由紀夫と「ヒタメン」の世界(仮題)
 講師 岩下尚史(いわした ひさふみ)
     作家・伝統文化評論家、國學院大客員教授
     略歴 昭和36年生れ。熊本県出身。國學院大卒、新橋演舞場企画室長を経て作家・評論家に。平成19年『芸者論:神々に扮することを忘れた日本人』で和辻哲郎文化賞受賞。三島由紀夫を論じた『見出された恋:「金閣寺」への船出』や『ヒタメン』の著作がある。(いずれも文春文庫)
 会費 会員・学生1千円、一般2千円
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  三島由紀夫研究会 http://mishima.xii.jp/contents/index.html
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創刊日:2006-01-12  
最終発行日:  
発行周期:半月刊  
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