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三島由紀夫の総合研究

創立35年の老舗「三島由紀夫研究会」の会報を兼ねた、あらゆる角度からの総合研究メルマガ

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三島由紀夫研究会メルマガ

2010/11/21


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『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
      平成22年(2010)11月21日(日曜日) 
          通巻第445号 
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  あの時、学生寮にいた
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前衆議院議員 西村真悟 

十一月の後半に入れば、あの時のことを想い出す。それは三島由紀夫自決の日のことだ。
 しかし、何も特別なことを想い出すのではない。学生寮の玄関から出てきた寮生の顔に当たっていた木の葉の影を想い出すのだ。奇妙なことだ。
 学生時代、銀閣寺近くの大文字山麓の学生寮に住んでいた。「海の星学寮」という。
あの日、十一月二十五日、大学から吉田山を越えて「海の星」に歩いて戻ってきていたと思う。寮の玄関近くの垣根のところに来ると、玄関から飛び出してくる寮生とぶつかりそうになった。
彼は、僕に言った。
「今、三島さんが市ヶ谷の自衛隊に立て籠もっている」。その瞬間、僕は、あっ、三島さん、死ぬんだ、と思った。
寮生の顔には、晩秋の陽と木の葉の影が当たっていた。

それから四十年。今もその木の葉の影が瞼に浮かぶ。昨日、大阪市内で「日本の再興」について話す機会があり、我が国の現状を説明し現内閣と民主党のもたらしている惨状を語っていると、自然に三島さんが述べたことが口から出た。
まさに今、無機質でニュートラルで無国籍で抜け目のない人種が、この列島にいる。特に政界に満ちている。三島さんが、あの時、腹を切って指し示したものは、今まさに生きる警告となって国の病を照射している。
その時、「坂の上の雲」を書いていた司馬遼太郎さんは、翌日の朝刊に三島さんの死についての一文を載せた。
彼は、吉田松陰は、民族に一人いていい、しかし二人になっては困る、吉田松陰が二人もいれば、民族の精神病理の領域の問題になる、と書き始めていた。そして、「かの名作、まことに名作」である三島さんの「午後の曳航」の主人公の死を三島さんの死に重ねたうえで、我々は、この二度と現れないかもしれないこの作家の死を如何に悲しんだらよいのだろうか、と結んだ。
三島さんの死の翌日の朝刊に一文を載せるということは、三島さんの生首が運ばれているのを見ながらこの一文を書いたということである。僕は司馬遼太郎の力量に舌を巻く思いだった。
しかし、司馬遼太郎の「坂の上の雲」が描く、乃木希典愚将論は正さねばならない。司馬さんは、乃木愚将の極めつきを「白襷隊」三千名の旅順要塞突入とみて、これを「兵の屠殺」とする。
ところが、ロシア側記録には、「余等の日本軍への屈服は、この白襷抜刀隊の突入を受けたときであった」と書かれ、白襷隊がロシア軍に甚大な精神的動揺を与えたことが記録されている。
そして、イギリス国防委員会の「公刊日露戦史」も「(旅順要塞陥落の)最後の決定は従来と同様に歩兵によってもたらされた。・・・この旅順の戦いは英雄的な献身と卓越した勇気の事例として末永く語り伝えられるであろう」と書いている。この白襷隊三千名は、午後六時に行動を起こし、深夜に抜刀して要塞内に突入し消滅した。その日は、十一月二十六日である。
十一月二十五日と十一月二十六日は、日本人として忘れてはならない日であろう。共に、「英雄的な献身と卓越した勇気の事例」である。
本日、福井県立大学教授の島田洋一さんのブログをみると、懐かしい「海の星学寮」の寮生だった島田さんが、同じく寮生だった外務省南部アジア部長(前駐中国公使)の梅田邦夫さんを国家基本問題調査会に呼び状勢を聴いたと書かれていた。それを読んで、十一月二十五日の「海の星学寮」の玄関でのことがまざまざと甦り、以上の一文を書くことになった。
なお元上海総領事で病床で心にしみる文献である「大地の咆哮」を書き上げて亡くなった杉本信行さんは、僕と同年の法学部学生だったが、海の星の先輩寮生だった産経新聞の矢島誠司さんと義兄弟になった(矢島さんと杉本さんの姉さんが結婚した)。
遙か昔、矢島さんに連れられて比叡山の登り口にある杉本さんの家に上がり込み、外務省に入省して海外にいる同級生のことを思い、やはり、四年の間にもっと勉強しておけばよかったと思ったものだ。その時、僕は、まだ大学にうろうろいて六回生くらいだったのではないか。
  (前衆議院議員)


(編集部より)司馬遼太郎は三島事件を『毎日新聞』に、「薄汚れた模倣を怖れる」と書いたのです。関西版では、この箇所が削除されず、東京版からは削除されました。
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第四十回追悼会
 『憂国忌』
 ――三島由紀夫を通して日本を考えようーーー

 とき  11月25日 午後五時(四時開場)
 ところ 九段会館大ホール
     (東京メトロ『九段下』、都営地下鉄も『九段下』下車、徒歩二分)。

 会場分担金  お一人1000円
 プログラム
第一部鎮魂祭(齋主 乃木神社神職。祭主 松本徹)
第二部シンポジウム 『没後四十年 日本はここまで堕落したか』 
井尻千男、遠藤浩一、桶谷秀昭、西尾幹二
 当日会場ではロビィに関連グッズの展示。また関連図書の頒布があります。

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  お知らせ
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三島研究の決定版!
 松本徹、佐藤秀明、井上隆史、山中剛史責任編集

『三島由紀夫研究』(鼎書房版)第十号、発売中!
 ISBN 978-4-907846-73-2
<三島由紀夫研究10号>目次
特集「越境する三島由紀夫」

□三島由紀夫文学館会館10周年記念フォーラム
三島由紀夫の演劇――ドナルド・キーン
三島さんと会った日々――横尾忠則
    質疑応答――司会 佐藤秀明/井上隆史
□論文
ミッキー・マウスと三島由紀夫の身体――大塚英志
三島由紀夫の合わせ鏡としての横尾忠則の幻像――飯田高誉
尊皇と王殺しの思想――三島由紀夫の天皇観について――佐藤英明
イコンとしての三島由紀夫――『薔薇刑』体験までの道程――山中剛史
三島由紀夫と短歌――塚本邦雄と春日井建―― 山内由紀人
三島由紀夫と松本清張の東南アジア――「創作ノート」という方法 久保田裕子

□座談会
 『鹿鳴館』のオペラ化をめぐって――池辺晋一郎氏を囲んで――
  出席者 池辺晋一郎 松本徹 井上隆史 広瀬大介
□未発表 「豊穣の海」創作ノート!)翻刻   ・佐藤秀明 工藤正義 井上隆史
□資料  細江英公写真集「薔薇刑」について          犬塚潔
アンジェイ・ワイダ演出の「近代能楽集」関係資料について    西野常夫 編
寄稿 三島由紀夫文学館 退職にあたって            工藤正義
□研究動向  三島由紀夫研究の展開               武内佳代
□書評
佐久間隆史著『三島由紀夫論 −その詩人性と死をめぐって』    梶尾文武
清眞人著 『三島由紀夫におけるニーチェ』         ――岡村雅史
山口基編著『三島由紀夫研究文献総覧』           山中剛史ほか。
 ●この本は三島研究者必読です。定価2500円
 お近くの書店にない場合は鼎書房(03)3654−1064
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(編集部から)小誌は「三島由紀夫研究会」(昭和四十六年創設)の会員だけに限定せずに、三島研究の論文、エッセイをつねに募集しております。比較文学論(たとえば「村上春樹と三島」とか)、作品論(たとえば『美しい星』や『仮面の告白』に新解釈)、読後感、政治論、芸術論。まるで分野を問いません。三島さん自身、古典から前衛まで、映画からシャンソンまで万能の人でしたから。
 「憂国忌」への御感想、御希望でも構いません。皆さんからの御投稿を広くお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。ただし三島文学批判も構いませんが、明らかな誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。一部の原稿は年二回以上発行のメルマガ合本に掲載させていただくことがあります。    
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  三島由紀夫研究会 HP URL http://mishima.xii.jp/
      メール  yukokuki@hotmail.com
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