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三島由紀夫の総合研究

創立35年の老舗「三島由紀夫研究会」の会報を兼ねた、あらゆる角度からの総合研究メルマガ

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三島由紀夫研究会メルマガ

2010/01/25

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  『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
      平成22年(2010)1月25日(月曜日)
          通巻第376号 
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櫻チャンネルの社長でもある、水島総さんの文章で、三島さんに関する部分を紹介したいと思います。
水島さんは、今は亡き三浦重周・元三島研究会事務局長の追悼文も書いておられますが、心のこもったもので、今読み返しても心が震えます。
(引用開始)
「私の座右の銘のひとつに、「duruchhalten」(持ちこたえること)というドイツ語の言葉があります。これは私の尊敬するドイツの作家トーマス・マンが座右の銘にしていた言葉です。

ドイツ精神を最も体現している作家と言われるトーマス・マンは、第一次世界大戦が勃発すると、英仏側とドイツとの戦いを英仏「文明」とドイツ「文化」の戦いだとして、敢然と祖国ドイツの側に立って論陣を張りました。
その論文「非政治的人間の考察」(筑摩書房刊)は、三島由紀夫をはじめとして多くの日本の作家に深い影響を与えました。
 かく言う私もそうでした。
三島の『文化防衛論』を後で読んだ時、これはマンの焼き写しなのだという印象を持ったものでした」
 (中略)
「より大きな歴史の視点に立てば、ルネッサンスから始まった「人間中心主義」と言われたヨーロッパ近代が、決してギリシャ文明の本物の復興なのではなく、偽物の「文芸」復興であり、その結果として、既にヨーロッパ近代主義が行き詰まり、終焉を迎えているという痛苦な認識でした。
二つの世界大戦の中で、滅びゆくヨーロッパ世界を小説を通して世界に告知し、そして「持ちこたえ」「ドイツたること」が普遍的な人類と世界の再生へ続くことを、マンはいくつかの作品群によって表わしました。
その痛切な思いと思想的苦闘を小説にした名作が、「魔の山」「ヴェニスに死す」「トニオ・クレーゲル」でした。
「魔の山」では、スイスの結核サナトリウムにおいて、主人公がヨーロッパのあらゆる近代思想を体現する人々と出会いますが、ある日、世界大戦の勃発によって、それらのヨーロッパ近代思想がことごとく破産し、吹き飛ばされるのを知ります。
「魔の山」のラストは美しく悲しい場面です。
兵隊姿の主人公が、散兵戦の中を突撃していくのです。爆弾や銃弾が炸裂する中、走り、転び、立ち上がり、また走り出す、そんな主人公が突撃しながら何かを歌っていますが、それはシューベルトのリンデンバウム(菩提樹)の歌でした。

 泉に添いて 茂る菩提樹
 慕いゆきては 美し夢見つ
 幹には彫(え)りぬ 懐し言葉
 嬉し悲しに 問いしその影

 今日もよぎりぬ 暗き小夜中
 真闇に立ちて 眼閉ずれば
 枝はそよぎて 語るごとし
 来よ いとし友 此処に幸(さち)あり

 面をかすめて 吹く風寒く
 笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
 遥か離りて たたずまえば
 なおも聞こゆる 此処に幸あり
 此処に幸あり

死の散兵戦の中で、倒れていく戦友の姿を横で感じながら、主人公は突撃を続けます。
それはまさに溶解し始めた世界の中で、何としてでも生きよう、生き抜こうと戦うドイツの姿、人類の姿でした。
「わたしたちはどこにいるのだろう?あれはなんだろう? 夢に運ばれてわたしはどこへ流れついたのだろう?」 (「魔の山」より)

「魔の山」最後の一文を紹介します。

 「この世界的な死の祭典からも、雨にぬれた夕空を焼き焦がしている悪性の熱病のような猛火からも、いつの日か愛が生まれてくるのだろうか?」

今の日本の状況について、私もこれに似た感覚を抱いています。
「魔の山」は二つの大戦の間に書かれた小説ですが、私達人間の精神的危機は、いまだ全く解決していないのです。

私たち日本人もまた、今、それぞれの草莽が日本解体の散兵戦を戦っているような気がします。私達にとってのリンデンバウム(菩提樹)は、一体何でしょうか。
 それは「日本」です。
日本の皇室であり、日本の伝統文化です」
(引用止め)

 水島さんを駆り立てているものは何か?
それが解った気がします。                
   (深井貴子)

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 MISHIMA YUKIO みしま MISHIMA YUKIO
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『三島由紀夫研究』(松本徹、佐藤秀明、井上隆史・責任編集)の第九巻
  < 内容 >
 座談会「三島歌舞伎の半世紀」 織田紘二氏を囲んで  松本、井上、山中剛史
 グラビア『三島由紀夫が造りたかった六世中村歌右衛門写真集』  犬塚潔
 『三島由紀夫の歌舞伎舞踊』             神山 彰
 『擬古典という挑戦』                松本 徹
 『三島歌舞伎ヒロインの系譜』            木谷真紀子
 未発表『豊饒の海』創作ノート(6)         井上、佐藤、工藤正義
 『決定版三島全集』初収録作品事典          池野美穂
   ほか。
 http://www.kanae-shobo.com/kin.html#17

発行 鼎書房 (電話 3654−1064)
E-mail:info@kanae-shobo.com
 定価 2500円
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 三島由紀夫研究会『公開講座』のお知らせ
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次回『公開講座』は三月24日
ジャーナリストの桜林美佐さんを招いて「三島と男の浪漫」を語って貰います。

http://www.geocities.jp/misakura2666
 
桜林美佐さんは『終わらないラブレター』(PHP研究所)、『海をひらく』、『奇跡の船 宗谷』(並木書房)などの著作があり、櫻チャンネルのキャスター、放送作家、朗読家としても活躍されています。
       記
とき     3月24日(水曜日) 午後六時半
ところ    市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」四階会議室
講師     桜林美佐さん
会場分担金  おひとり2000円(会員&学生は1000円)
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 << 事務局よりお知らせ >>
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賛助会員の皆様には2月14日から16日までの間に、隔月刊の雑誌『表現者』の「憂国忌」特集号がお手元に版元のジョルダンより直接、届きます。ご留意下さい。
これは賛助会員(09年度)の皆さんへの贈呈です。現在、当該編集部が鋭意編集中です。
なお一般読者の方は2月16日、全国の有名書店で発売されますのでお買い求め下さい。
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MMMMMMMMM 三島 MMMMMMMMMMMMMM 三島 MMMMMMMMM
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(編集部から)小誌は「三島由紀夫研究会」(昭和四十六年創設)の会員だけに限定せずに、三島研究の論文、エッセイをつねに募集しております。比較文学論(たとえば「吉本隆明と三島」とか)、作品論(たとえば『仮面の告白』に新解釈)、読後感、政治論、芸術論。まるで分野を問いません。三島さん自身、古典から前衛まで、映画からシャンソンまで万能の人でしたから。
 「憂国忌」への御感想、御希望でも構いません。皆さんからの御投稿を広くお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。ただし三島文学批判も構いませんが、明らかな誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。一部の原稿は年二回以上発行のメルマガ合本に掲載することがあります。    
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  三島由紀夫研究会 HP URL http://mishima.xii.jp/
      メール  yukokuki@hotmail.com
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(C)三島由紀夫研究会 2010  ◎転送自由
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