ニュース・トレンド

すべてのクリエイターのために【日刊デジタルクリエイターズ】

デジタルメディアで活躍する現役クリエイターたちのコラムで構成されている本格派。総発行部数約16000! 真のクリエイターを目指している方からデジタルに関わる方まで、すべてに向けて発行中!

全て表示する >

日刊デジクリ[#4385] ショート・ストーリー「Meは何しに大阪へ?」

2017/07/13


           《やっぱり「触感」が大事》

■ショート・ストーリーのKUNI[218]
 Meは何しに大阪へ?
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンター奮闘記[99]
 仕事は3Dプリンター、ワンフェスは手作り
 織田隆治


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ショート・ストーリーのKUNI[218]
Meは何しに大阪へ?

ヤマシタクニコ
http://bn.dgcr.com/archives/20170713110200.html
───────────────────────────────────

私はドンゴリラ星の第一大臣である。遙か彼方のドンゴリラ星から、スペース
シップに乗ってやってきた。ていうか、いまやって来てるところだ。

窓からは地球が見える。小さな星だ。こんな小さな星のくせに生意気なやつら
だ。いや、そんなことは思ってはいけない。

ドンゴリラ星は平和の星だ。他者をおとしめたりけなしたり、争いを挑むよう
なことはしない。たとえ地球の文明が、われわれのそれよりずっと遅れていた
としても。

スペースシップは快調に進む。

──間もなく右方向。その先、直進です。

ナビも快適だ。どんどん進む、進む、進む。

──目的地周辺です。音声案内を終わります。

うむ。あともうちょっとナビってくれたらいいのだが。

しゅぽしゅぽしゅぽ……。たよりない音を立ててスペースシップが止まる。
私はスペースシップを降りて、あたりをきょろきょろ見回す。はたしてそれら
しい看板が見える。

「失礼します」

「らっしゃい!」

「私はドンゴリラ星からやってまいりました、第一大臣です。第一大臣という
のは主に外交関係担当と思っていただければけっこうです。で、さっそくです
が、実はわれらがドンゴリラ星では、先頃地球で制作された映画について、こ
れはさすがにひとこと言わないわけにはいかんだろうという声が高まっており、
私がまいった次第です」

「はあ?」

「その映画というのは『メッセージ』という作品です。これに出てくるエイリ
アンは、明らかにわれらドンゴリラ星人をモデルにしていると思われます。な
のに、重大な点で間違っている。

あの映画の中ではエイリアンは『ヘプタポッド』と呼ばれるように7本足です。
しかしわれわれは9本足。9本足だからこそ高度な文明を築くことができたので
す。7本足では困る。大変困る。これはドンゴリラ史に関わる問題なのです」

「あのな」

「はい」

「何をごちゃごちゃゆうてんのか知らんけど注文は何やねん」

「ちゅうもん?」

「注文やがな! うちはラーメン屋やで。何ラーメンにするか、聞いてんねん
がな。塩、みそ、とんこつ、チャーシュー大盛り、季節限定ハモのせに冷麺、
激辛。なんでもあるで。何にすんねん」

「ラーメン屋、さんですか?」

「何やと思てんねんな」

私は第5足でポケットをまさぐり、そこから取り出したメモ帳を第4足でめくり、
第6足で鉛筆をなめながらメモの態勢を整え、たまたま脇腹がかゆくなったの
で第2足でかきながら言った。

「ドンゴリラ星の第一大臣としましては、地球に関する小説や映画を観てどう
すればよいか考えました。その結果、たいていのエイリアン関係の映画では、
大統領とやらが出てきてリーダーシップを取るらしい。なので大統領に会うの
がよかろうと」

「確かにうちは大統領という名前やけどな」

「では間違ってはないのですね」

「あほか! 間違いないどころか、もろ間違うてるやないか! なんでおれが
エイリアンの相手せなあかんねん!」

私はがっかりしてスペースシップに戻った。地球人ごときにあのように言われ
る筋合いはない。だが、自分より劣る者たちを責めて何になる。抑えよう。

スペースシップのフロントには、「駐車違反」と書かれた黄色いものが貼られ
ていた。赤い円に斜めの直線を組み合わせたマークも描かれている。これは何
だ。まあいいだろう。私はシートに座り、部下に電話してみた。

「あ、第一大臣ですか! いまこちらから電話しようと思ってたところですよ!」

「え、なんで」

「大臣、スペースシップを間違えて乗って行ってます。それは大阪観光用のス
ペースシップです!」

「え、じゃあ」

「ナビも大阪仕様ですし、燃料もそんなに積んでないので、そこからあまり遠
くへ行けません」

「それでか。『大統領』で検索しても『ワシントン』で検索しても『アメリカ』
で検索しても、ラーメン屋とか靴屋とか喫茶店しか出てこない」

「すみません、ひとこと私に声をかけてくださればよかったんですが。まあ仕
方ないので大阪観光楽しんできてください」

ぶつっ。電話が切れた。どっちが部下だかわからない。

私はがっかりした。とてもがっかりした。ドンゴリラ星の名誉が自分にかかっ
てると思い、張り切ってやってきたのに。私は第1足でティッシュを一枚取り、
第3足を添えて鼻をかみ、第7足でそれをくずかごに投げ入れた。

なかなか第8足とか第9足が出てこないなと思うかもしれないが、その2本は予
備である。もちろん、予備こそが大事なのだ。予備がないところに文明の発展
はない。たぶん。

私は第6足と第7足を胸の前でからませ、しばし考えた。大阪とはいえ、私にで
きることはないのか。ドンゴリラ星のために。スペースシップの運転席に座っ
たまま私はさらに考えた。

すると、なんだかませた、鼻持ちならない感じの小学生男子と思える地球人が
やってきた。窓からのぞきこんで言う。

「おじさん、何してるんですか?」

「私は高度な文明を持つドンゴリラ星からやってきた。誤解に満ちたドンゴリ
ラ星人のイメージを修正し、正しい姿を伝えたいと思ってね。だからアメリカ
の大統領に訴えようと思ったのだが、なかなかうまくいかないのだ」

「ふうん。まあ何をしようとおじさんの自由だから別にいいんですが、それは
間違ってると思います」

「え、どういうことだい」

「アメリカであれ中国であれ、どこかひとつの国が世界の王様として君臨して
いるわけではありません。地球に何か起こったときは、みんなで話し合って解
決の糸口を探すからです」

なんとすばらしい。地球にもこんなことをいう子供がいたとは!

「そうか。では私はどうすればいいのだ」

「おじさんが行くべきところは、国際」

そこでバイクがブオーッとやかましく通り過ぎた。通り過ぎたときにはませた
小学生はもういなかった。

仕方ない。私はナビに「国際」と入れた。もちろん、ろくな結果にはならなか
った。スペースシップは勢いよく舞い上がったと思うとあっという間に減速し、
しゅぽしゅぽしゅぽと止まった。ナビが告げる。

──目的地周辺です。

そう言われて降りてみると、そこには大きなきらきらした派手な店があり、時
たま客が扉を開け閉めすると、ヒュンヒュンジャンジャンとものすごい音がも
れる。ああ、これがうわさに聞いていたパチンコ屋というものか。

「え? 国際? あー、千日前国際劇場な」

「確かにここにあったけど、もうのうなったわ」

「なくなって何年もたつで。なあ」

「最近はシネコンばっかりでおもろないなあ」

「途中から入られへんしなあ」

「昔はよかったなあ」

道行く人々が説明してくれた。そうか。ここで世界の人々が集まってさまざま
な問題を話し合っていたのか。そして、それはもうなくなったのだという。

なんと残念なことだろう。地球という野蛮な星で芽生えたささやかな良心はむ
なしく滅びてしまったらしい。私はまたがっかりして第4足と第5足をひろげ、
肩をすくめた。これは村上春樹作品の「やれやれ」に相当するポーズだ。と思
っている。

私はそれでもまだ希望を失わず、歩いていった。あたりはごちゃごちゃした商
店街で、あちこちの店で呼び込みをしている。

私はふと、視線を感じた。そこで視線のもとを探ると、なにやら奇妙な生き物
がいた。黄色いタヌキのようでありネコのようであり、人間のようであり、そ
れがまた頭が異常に大きい。重そうだ。全体はふかふかして、暑苦しい感じで
ある。

その妙な生き物が通行人にうちわを配っている。私はつい好奇心にかられて、
その生き物のほうへ近づいていった。相手は異常に親近感を示し、うちわを手
渡すふりをして私にささやいた。

「君のその着ぐるみ、ようできてるなあ」

着ぐるみ? はあ? 

「ごっつリアルやん。新素材? ええなあ。通気性悪そうやけど、そうでもな
いんかな。おれなんかもう汗びっしょりで」

私がまったく理解できずにいると、あちこちから人間が集まってきた。

「あっ、着ぐるみが2体も」

「ラッキー! 写真撮ろ!」

「私も私も!」

何ということだ。私は着ぐるみというものと思われているのだ。そういえば、
どこに行っても怪しまれたり、逃げられたりしなかったが、そういう事なのか。

「いやー、ようできてるなあ、あんた、これ、宇宙人の着ぐるみ? へー、た
いへんやなあ」

「着ぐるみって暑いんやろ?」

おばはんたちが私に話しかけ、さわりまくる。ぶぶ無礼者! 私を何だと思っ
ている。ドンゴリラ星の第一大臣だぞ! ドンゴリラはおまえたちの住むこの
地球よりずっと文明が進んでいるんだぞ! 

「あんた、さっきそこのパチンコ屋さんの前で何か聞いてはったやん。ひょっ
として道に迷ったんちゃう?」

「わかった! なんとかおじさんのチーズケーキの店探してるんちゃう?」

「なんやそうかいな。あの店はこっちやで。連れてったろか?!」

私の第3足を引っ張るな! もげるじゃないか! ああ第8足がねじれる! 
もう! いや、それより、今そこの道路を私のスペースシップがトラックに引
きずられて、どこかに運ばれようとしてるではないか! 

だめだ、だめだ、持って行かないでくれ! おい!


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
http://midtan.net/
http://koo-yamashita.main.jp/wp/

暑いので何を書こうとしていたのかわからなくなってしまいました。読者のみ
なさんも暑いのでどうでもいいかもしれませんね。

ところで、私は人一倍、いや二倍三倍、蚊にかまれやすいです。毎日、夕刊を
団地の集合ポストから取り出してる間に五か所くらいかまれます。

で、蚊にかまれやすいのは「O型の人」とか「汗かきの人」「色が黒い人」と
かいろいろ言われますよね。最近では「足裏の雑菌が多い人」だとか。なんか
いやです。

蚊にかまれやすいのは「心が繊細な人」「美しい人」とかいう研究結果がどこ
かで出ないものでしょうか。お願いします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3Dプリンター奮闘記[99]
仕事は3Dプリンター、ワンフェスは手作り

織田隆治
http://bn.dgcr.com/archives/20170713110100.html
───────────────────────────────────

もう7月半ば。そろそろ蝉の声も五月蝿くなってきましたねぇ。。。

7月と言えば、僕たち造形をやっている輩にとっては、大きなイベントがあり
ます。それは、「ワンダーフェスティバル」。

年に二回、夏と冬に開催されるんですが、フィギュアやホビーのお祭りで、自
分で作った「ガレージキット」と言われる、レジンキャストで複製されたキッ
トを販売するイベントです。

これが、もうお祭りでありまして、僕もここ十年くらいずっとディーラーとし
て参加しています。

ここ数年で、原型を制作するのに3Dモデリングを行い、それを3Dプリンターで
造形している物がかなり増えてきました。

3Dモデリングするためのモデリングソフトや、造形するための3Dプリンターの
展示も、ここ三〜四年でかなりの盛り上がりを見せています。

こういったホビーの分野では、かなりの普及率になってきたように思います。

3Dプリンターもこの二年くらいで、驚くほどの進化を遂げており、造形レベル
も格段に上がっていて、前までは一部の3Dプリントサービスを使っていた人達
も、ある程度は自宅等で3Dプリンターを導入し、プリント(造形)が出来るよ
うになってきました。これって、すごいことだなぁと思います。

僕が3Dプリンターを導入した時期から考えると、本当にレベルが上がってきま
した。FDMプリンター(熱融解式)も光造形のプリンターも、どちらもある程
度緻密に造形できるものが、個人でも手に届くものになってきましたし、今後
はもっと普及して行くんじゃないでしょうかね。

FDMプリンターと光造形の3Dプリンターを比べて見ると、FDMプリンターの造形
レベルは、光造形の3Dプリンターにかなり近づいてきています。

素材についても、色々な企業が開発をしており、こちらもかなり良いものが出
て来ました。

以前は、FDMで使われているPLA素材(ポリ乳酸)の樹脂は、凄く固くて後の整
形がかなり困難で敬遠されていましたが、最近ではABSに近い特性を持ったPLA
も出て来ています。

ABSというのは、家電や僕たちがよく用いるプラスチック製の製品にはよく使
われている、強度とある程度の「しなり」を持った素材で、加工性も高いので
すが、3Dプリンターで出力する時、熱収縮等の影響で、テーブルの温度や庫内
の温度管理等をかなり気を使って行う必要があります。

物質は熱を加えると体積が増え、冷えると収縮します。このため、造形物をテ
ーブルに固定している部分が冷えると収縮し、底面の大きいものになると、そ
の収縮によりテーブルから造形物が剥がれてきてしまう現象が起きます。

これを予防するために、テーブルの温度を一定の温度に保ったり、3Dプリンタ
ーの庫内の温度を上げておく必要が生まれて来ます。

この熱による膨張や収縮が、PLAに比べてABSの方が大きく、ある程度大きなも
のを出力するには、ABSよりPLAの方が向いているということですね。

しかし、PLAにも弱点があり、造形後の素材が固く、融点が低いために熱によ
る変形が起こり易い、湿気に弱く、素材のフィラメントが折れ易い等といった
ことから、PLAを敬遠するユーザーも少なくはありません。

FDMプリンターで使われる素材は、基本的にフィラメントといわれる線状の樹
脂を、リールに巻いた状態で使うのですが、現在は1.75mmΦのものが主流。

素材が細いため、PLAは長期間使用しないで放置しておくと、温度や湿度によ
る劣化がABSに対して大きく、造形途中でフィラメントが折れてしまって、3D
プリンターに供給されない状態になることが多く見られました。

それと、曲げに弱く、すぐに折れてしまいます。リールに巻かれている最後の
方は、かなりきつく曲がっているので、それを伸ばした時に折れてしまいます。

それに対して、ABSはある程度の粘りがあり、曲げに強く、湿度による影響も
少ないことで、やはりユーザーはABSを選びたい気持ちが強いんですね。

ABS素材に関しても、色々と開発が進んでおり、熱による変形を少なくし、テ
ーブルから剥がれる現象を抑えたものも出て来ています。

3Dプリンターの進化に伴い、素材の進化もここ数年はかなり進歩していて、こ
れからどんどん良い環境で、効率良くプリント出来るようになってくると思い
ます。

一方、光造形のプリンターに関しても、このテーブルから剥がれてしまい、造
形が失敗することが多くみられます。

インクジェット式を除く光造形式のプリンターは、テーブルからつり下げる方
法を取っています。これは、素材が液体ということもあり積み上げて行くこと
が困難だからですね。

テーブルに固定している一層目の造形がうまく行かないと、出来上がったと思
って見てみると、上がってきたテーブルには何も付いておらず、素材が溜まっ
たプールが大変なことになっていた、なんてことが多々あります。

光造形のプリンターでは、造形ミスの中ではこの失敗が著しく多いのです。

先ほどのFDMプリンターでも同じなのですが、基本的に造形を成功させるカギ
は、「造形テーブルに、一層目がどれだけ定着しているか?」ということに尽
きるでしょう。

ここさえうまく行く方法が定着すれば、3Dプリンターの利便性がかなり上がり、
さらに普及していくんじゃないかなぁ……なんて思います。

最近では、色々と工夫された3Dプリンターや素材が増えてきて、こういった開
発が多くのメーカーが行なわれています。

ホビーで使用する人は、元々物作りが好きな方なので、そういったトラブルに
も比較的対応可能なんですが、一般に普及するには、そういったところの改善
が必須なんでしょうね。

さて、冒頭に述べた「ワンフェス」ですが、僕もそろそ尻に火が付いてきてい
て、目の前にある原型をいい加減仕上げてしまわないと……。

ところで、僕の場合ですが、仕事で3Dプリンターを使うことが多く、すべて手
作りも減ってきました。本当に便利になりましたね。

ワンフェス等の趣味の造形に関しては、基本的に手作りをモットーにしていて、
ほとんど3Dプリンターを使うことはありません。やっぱり手作業が好きなんで
すよねぇ。

これ、かなり重要なことなんですが、造形をする場合、手作りの触感で立体を
把握できるのです。まあ、技術の進歩により、始めからデジタルのみで手作業
なんてやった事ない! って人も今後増えて行くんだろうなぁ。

凄いぜ未来。AR技術も進んでいて、触感を持ちながら、バーチャルでモデリン
グするような技術も出て来ていますし。

これ、やっぱり「触感」が大事、って事をみんな感じているんでしょうかね?
まあ、この「触感」とか、五感をいかにバーチャルで表現するか、ってのがAR
の目指すところなんでしょうけど。

さて、そろそろ原型を進めないとエラいことになりますので、本日はこのあた
りで……。


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(07/13)

●山本淳子「枕草子のたくらみ 『春はあけぼの』に秘められた思い」を読ん
だ(2017/朝日新聞出版)。枕草子は中高の教科書にあったなあという程度の
記憶だが、リズミカルな初段「春は、あけぼの」だけは、いつの間にか覚えて
いて、今でも暗唱できる。「つとめて」が早朝だと知っているのがうれしい。

古文にしては比較的読みやすい、一人の女房の個人雑記という認識だったが、
その正体は違っていた。お気楽なものではなかった。清少納言には明確な企み
があった。そして、それは成功したのだという。この作品は清少納言が仕える
中宮定子の下命で作られたのだ。そして、創作の全権が清少納言に委ねられた。

「枕草子」は定子のための作品だ。執筆が本格的となったのは、政変によって
定子が絶望的な状況にあった頃らしい。悲嘆にくれる定子に捧げたのは、悲劇
的現実にはいっさい触れない、感動やときめきに満ちたものばかりだ。悲しい
ときこそ笑いを、くじけそうな時にこそ雅を、これがコンセプトだった。

この企画は中宮定子後宮の文化の粋を表すものでもあった。幸せに満ちた定子
サロン文化を書き留める執筆方針は、定子の死後9年を経ても続いた。生前に
は定子が楽しむように、死を受けては定子の鎮魂のために。枕草子の核心がこ
こにある。枕草子は定子後宮の「文化遺産」といえる作品なのである。

定子の一生は24歳で終わるが、この人の浮沈の人生はお気の毒である。波瀾や
苦悩続きというべきだ。にもかかわらず、定子を描いた枕草子は幸福感が満載
である。闇の中にあって闇を描かない。定子の出家は「なかったこと」なので
ある。それでいいのだ。枕草子は清少納言が定子に捧げた作品なのだから。

最後まで理想的だった皇后定子、それを世に示すことこそが枕草子の戦略だっ
た。枕草子の中では定子は死なない。定子はこの作品の中でいつまでも燦然と
生き続ける。定子の文化は決して潰えることなく、作品の中に永久保存された。

枕草子が死守しようとするのは定子の理想性である。定子は気高く、不幸など
ではなく、もちろん誰からも迫害されてなどおらず、誰のことも恨んでいなか
った。いつも雅を忘れず幸福に笑っていた、と描かれる。枕草子は世が内心で
欲しているように定子の記憶を塗り替えた。これが清少納言のたくらみだ。

枕草子が記しているのは、定子のためのひたすらな「文学的真実」なのだ。一
方「清少納言こそ、したり顔にいみじう侍りける人」と呟くのは紫式部である。
紫式部は「紫式部日記」で清少納言を批判し、現実味がなさすぎるとこきおろ
した。だが同時代人である紫式部も、事情は分かっていたはずである。

清少納言は宮廷生活で定子に鍛えられた機知の才で「枕草子」の冒頭を飾った。
「紫だちたる雲」は紫雲、瑞祥の兆しであり、天皇家を表す。また中宮の暗喩
であり、定子その人なのだ。たとえどんなときでも人生は美しい。そのことは
「はたいうふべきにあらず」なのであった。久しぶりに感動できる本を読んだ。

橋本治「桃尻語訳枕草子」は1980年代の女子高生の話し言葉で一貫し、ふざけ
たことやってるなあと当時バカにしていた。この度、ようやくその第一巻を読
んで驚愕した。ミーハー訳はともかく、解説が半端ない。ものすごい情報量で
ある。第一巻途中で投げ出す。やっぱり橋本治、ただ者ではなかった。(柴田)

山本淳子「枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022630574/dgcrcom-22/


●「ラーメン屋とか靴屋とか喫茶店」で大爆笑した。良かった、電車や飲食店
で読まなくて。「国際」は予想通りだったぜ!/「アメイジングモデルエキス
ポ」は今年開催されないみたい。来年復活するといいな。

/走るなら心拍数わかった方がいいよねと買ってしまったApple Watch(AW)、
単体でできること続き。

音楽を聴く、写真が見られる、心拍数が見られる、呼吸アプリが使える、アク
ティビティが見られる、ワークアウトを記録できる、Apple Payで決済・乗車
(モバイルSuica)。

他にやれること。当たり前だが時刻がわかる。タイマーにアラーム、ストップ
ウォッチが利用できる。

Wi-Fiに繋がっていると、やれることが増える。リマインダー、天気、メッセ
ージの送受信、株価表示、ルート案内、IoTな家電コントロール(うちには対
応家電類なし)、その他対応アプリ。

そして条件つきだがWi-Fiでの通話。FaceTime。試していないけれどSkypeや
LINE通話もできるのではないだろうか。          (hammer.mule)

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2000-08-22  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。