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仕事と家庭の両立のために〜両立支援を考える

学生のときは男も女も対等だったのに、どうして社会人になると男社会になってしまうの? 仕事と家庭を両立する方も、一旦退職した方もその後のライフスタイルをどうしたいかを一緒に考えてみませんか

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創刊日:2005-10-20  
最終発行日:2019-01-17  
発行周期:月2回  
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仕事と家庭の両立のために〜両立支援を考える

2019/01/17

仕事と家庭の両立のために〜両立支援を考える 第191号 2019年01月17日
妊婦加算凍結騒動について思うこと

 ファイナンシャルプランナーの永田です。今号では9月の上旬頃から、
ツイッター等で注目を浴び、12月の中旬に急遽凍結を発表。翌1月から
正式に凍結された妊婦加算 について思うことについて、振り返ってみたい
と思います。

 騒動の発端は、昨年の9月6日、あるツイッターユーザー(当時23歳の
妊婦)が、皮膚科を受診した際に、会計時に「妊婦加算」という料金を上乗せ
されたとして激怒。これがネット上で拡散されたことで物議を醸しました。
 この方のツイート内容が、皮膚科を「何箇所もはしごする予定だっだけど
やめた」「いや逆に安くしろよ馬鹿かよ」といった乱暴な口調だったことから、
「皮膚科をはしごして薬を多くもらおうとしていた」「ヒルドイド目当て
だったのでは(なんでも美容目的で使う人もいるらしいです)」などという
批判も一部で出ていた(この批判に対して、当人は皮膚科を受診した理由は
「虫刺され」で、よくならないので病院を巡っていたと弁明)のですが、
他にも「ここでは無理だから産婦人科で相談してと言われたにもかかわらず、
診察料と妊婦加算までとられた」とツイートしたケースも見られたようで、
これをきっかけに医療費明細書をチェックし直した方も少なくなかったのか、
結果的には、『保育園落ちた 日本死ぬ』騒動の時のような、『一番最初の
言い出しっぺはどこへ行った?』状態になったものの、一方で「妊婦税だ」と
批判的な世論の高まりもあり、11月の中旬頃から厚労省の動きが慌ただしく
なり、11月28日にはコンタクトレンズ処方といった加算が認められていない
例を医療機関に周知するも、それでも庶民の怒りを抑えられないとみたのか、
12月13日に事実上の凍結と20年度の廃止を含めた見直し、実際に今月の
1月から凍結と、実にあっけにとられるような形で騒動が終結? しました。
→ 当初は予算措置で自己負担の上乗せ分を実質ゼロにする案も検討していた
ようですが、上乗せ分の助成だけで年間で国費計約10億円かかり、事務経費
なども合わせると更に数倍に膨らみ、制度設計や手続きにも時間を要する
ため対応は困難と判断したようです。
 
 診療報酬を年度途中で見直したと言えば、抗がん剤のオプシーボの適用対象
が大幅に拡大されたのに、薬価が高いままで、医療保険財政を圧迫するとの
不満から2017年の2月に50%もの大幅引き下げになった特例を思い出します
が、あれはあくまで医療費の膨張を抑える非常措置で、米国や英国では薬価が
日本の半分以下になっていて、引き下げる合理的な理由も存在しましたし、
そもそも診療報酬の改定は2年に1度で、期間途中での臨時改定は難しい
はずが、まさかの凍結(凍結事例自体も、2008年に回復が難しい75歳以上の
高齢者の病状が急変した際に、延命治療を行うかなどを医師が家族と事前に
連続1時間以上をかけて話し合い本人に説明した場合に支払われた診療報酬
(後期高齢者終末期相談支援料)を導入3カ月後に凍結した時 以来………
だそうです)になってしまったのです。
→ 但し、薬の公定価格については、21年度からは毎年実施することを
決めていて、19年度は消費増税に合わせて臨時で価格を見直すことに
なっています。

 この妊婦加算という制度は今年度の診療報酬改定で導入され、その背景には
どうも(処方する薬などの副作用や誤診などを恐れて)、妊婦さんに対して
「産婦人科で診てもらってください」と帰してしまう医師が少なくなく存在
する現実が発生していたこと、逆に妊婦患者を扱う産婦人科としては、
風邪の患者をぽんぽん送りこまれてきても困る(インフルエンザなど自覚症状
が風邪と区別のつきにくい感染症患者だとより厄介です)ことから、診療に
インセンティブを与える意味で設けられたようです。
 「あのドクタ−何か嫌」といった曖昧な理由で、複数の診療所や病院を
選ぶことができる都市部や市街地に住む方ならば、それこそ今回の騒動の
ように、ネットで対応の悪さを吐き捨てて、その一方でちゃっかり他の医者に
罹ることもできますが、地方や過疎地では、その医者に診て貰えなければ、
車で遠距離の医者に診てもらわざるを得ないという、実害があまりにも
大き過ぎるわけです。
→ 橋経由でようやく陸続きになった離島の診療所で、診療拒否される事態を
想像してみたら、そのダメージの大きさも連想しやすいでしょうか…。

 更には、厚労省の疑義解釈や周知不足も混乱に拍車をかけました。
 「産婦人科」に関わらず「内科」「眼科」「整形外科」「耳鼻科」そして
「皮膚科」など「歯科」以外のすべての診療科で加算することができ、
妊婦であるかの確認方法も、必ずしも妊娠反応検査の実施や母子健康手帳の
確認ではなく、医師が診察の上で妊婦であると判断した場合に算定可能とされ、
実務上は医師から確認されたわけではなく、受付で質問されて加算される
ケースもあった(ツイートで援護? の炎上材料を投下したケースはまさに
それでしょう)こと。
 逆に後日妊娠している事実が発覚しても、遡及して妊婦加算の算定分を
請求することはできないなど、運用指針がかなり不明瞭だったこと。
 行政(厚労省)の周知も、「すこやかな妊娠と出産のために」という名前の
リーフレットを作成して、更に「妊娠中の健康管理及び妊婦加算の周知に
ついて(協力依頼)」という通達も出していたらしいのですが、この通達が
出たのが騒動になった後の11月2日付け。それこそ担当窓口の方しか
知らなかったと思いますし、『産婦人科以外の診療所でポスターが貼られて
いたのか?』と聞かれれば、近所の内科など、少なくとも私の知る範囲では
見覚えはなく、何で産婦人科以外の診療でも妊婦加算が取られるのか、
医療事務や医療保険制度に詳しくないごくごく一般の方から見れば、
感情的反発を招く面も少なくなかったのではないかと思います。


 さて、改めて考えてみたいと思いますが、この妊婦加算 周知不足は
あったものの、本当にそこまで問題視される制度だったのでしょうか。
 多くの人が疑問に思うこととしては、診察を受けた時に医師から妊娠の
有無の確認を受けていないのに妊婦加算がされるケースがあったことや、
産婦人科以外の診療科でも妊婦加算がされる主に2点だったと思います。 

 まず、医者から妊娠の有無を確認されないのに、受付などの判断で加算
されたケース。
 こちらは、単純に産婦人科医以外の男性医師が診察したと考えたら
わかりやすいと思いますが、明らかに見た目で判断できる場合や、初診時の
聞き取りや諸症状・カルテ等から判断できなければ、適齢期の女性に一律に
「妊娠していますか?」などという質問は 逆に「何でそんなことを
聞くのか?」と感情的反発を食らい、最悪診療所が風評被害を被るリスクも
あるわけで、そんなリスクを冒してまで怖くて質問できないと思います。
 医師から質問されていないのに妊婦加算だけ徴収された不満についても、
昭和の時代の診療所のように、医師先生と看護師の奥さんが受付も兼任して
いた時代ならまだしも、今は医療事務は診察の現場と分業している時代。
 現場から見れば、お国が決めたルールを遵守。雇い主である上司の指示に
淡々と従っていたに過ぎず、その受付を責めるのも筋違いです。

 次に、何故産婦人科以外の他の診療科でも、妊婦加算の算定が行われる
ような制度にしたのでしょうか?
 お腹の中に赤ちゃんがいる時は、血圧が普段より高い状態が長期間継続
することから、出血しやすい歯科治療のリスクが高い(歯科は元々妊婦加算の
対象ではありませんでしたが、妊娠を望んでいるなら事前に極力治療は先に
済ませておくのがベターな判断かと)ことや、眼圧も普段より上がりやすい
ことは、素人にも容易に想像がつくと思いますが、当たり前と言えば当たり前
ですが、妊婦さんと一言にいっても、産婦人科の領分ばかりでなく、風邪を
ひいたりお腹が痛くなって内科に通うこともあれば、目の不調を訴え眼科に
通う(厚労省が不適切事例として掲示したコンタクトレンズの処方より、
普通に目の違和感や目ヤニが気になるといった理由から受診する方が自然。
高齢の方なら緑内障や白内障の治療目的でコンタクトレンズを装着する
ケースも考えられますが、妊娠中なら逆に目に過度の負担をかけないために、
これまでコンタクトレンズ派だった方でも、これを機にメガネを作る方が
むしろ自然な流れだと思います)ケースも当然あり得ます。
 皮膚科も、虫刺され(アブやハチ、南京虫のようなものではなく蚊)程度
なら、「ステロイドの入っていないムヒでも塗っておいて下さいな」
(注:ステロイド入りのものでも今までムヒを塗って胎児に影響が出た事例
はなく、あくまでも動物実験レベルでの懸念。常識的な使い方をする限りは
問題は考えにくいことを断っておきます)と突き放したくもなりますが、
手荒れが酷くてステロイド入りの薬を処方して貰うケースだってありうる
でしょうし、診療所を運営している開業医にとっては、風評リスクが怖くて
薬を出さない決断は中々しにくい(昔のように、薬は副作用と裏返しだから
なるべく出さない方針の、頑固?な診療所の医師は、かなりの少数派に
なりました)のが実情だと思います。
 また、これはある女性産婦人科医がネット記事に書かれていたことで
「へえ ご自身が専門でもそうなんだ」と少し吃驚したのですが、普段は
診療する側であっても、ご自身の妊娠の時には、定期的な妊婦検診以外にも、
ちょっとした不調が気になって頻繁に通院したそうですから、医師と患者の
信頼関係を壊さない程度の常識的な範囲内ならば、ご自身の心配事に対して
頻繁に相談することも、とかく問題視されるような出来事ではなく、歯科以外
の全ての診療科で徴収の対象にしたのも、妥当な判断だったと思います。
→ むしろそれを促す意味での妊婦加算創設だったと思います。

 さて、ここで向き合う医師として怖いのが何といっても薬の副作用や誤診で、
患者さんが妊婦さんだとわかれば、この薬は副作用が起きるかもしれないと
別の薬を処方したり、その過程で色々と頭を悩ますことになります。
 また今は少しでも医療費を減らそうと、ジェネリック医薬品の利用が推奨
されていますが、成分上は一緒でも全く副作用が出ないとも限りません
(お役所としては認めたくない現実だと思いますが、実際問題として個人の
体質で合う、合わない薬は存在します)し、その薬の種類も一通り覚え
なければならず、患者さんの心理的不安も解いてあげなければならず、
心のケアと一言に言っても、どこまでやれば十分努力を尽くしたと言えるのか
までは、中々難しい問題があるでしょう。

 そして、出産年齢が全体的な傾向として高止まりし続けていることから、
妊婦さんに対する実務的な医療現場での必要な配慮もより強く求められる
ようになり、母体に影響が出たり、生まれてくる胎児に異常があった場合に、
最悪責任問題にも巻き込まれかねない(産科は訴訟問題に直接巻き込まれる
可能性が高いですが、地域に根差した診療所も、たとえいいがかりレベル
でも患者離れは怖いです)と、薬の処方を拒否したり、診察をためらったり
する医師も中には出て来てしまう弊害が、実際に顕在化しはじめて
きていたと…。  

 そんな理不尽な出来事を少しでも減らしたいとの目的から導入されたはず
だったのですが、いきなり医師側の意識変革を迫るにはあまりにも時間が
足りず、一方機械的に加算する医院も出てきていて、そんな事情も知らない
妊婦さんからは妊婦税と揶揄されたり、反発を食らい凍結に追い込まれて
しまったのが実情ではないでしょうか。

 そもそも診療報酬自体、よくよく医療費明細書を眺めていると「何これ?」
的な細かな自己負担が、実は細々と存在していたりするものですが、
そういった諸項目が炎上しないで妊婦加算だけが炎上に追い込まれた
というのも、違和感を感じずにはいられません。
 例えば眼科なら、目の中にまつげが入りこんで、それをスポイトで取り除く
だけの措置でも、「結膜異物除去」と称して、再診の場合でも100点取られ
(3割加算なら300円)、これだけのことでも妊婦加算(妊婦加算は初診
75点=同230円、再診38点=110円)より実は高かったりします。
 さてさて、この措置に「余計なことをしやがって」とケチをつける人は
いるのでしょうか?
 他にも産婦人科医の先生方がよく指摘していますが、同じ加算でも、
乳幼児加算は多くの自治体で子供の医療費負担が無料になっていることから
乳幼児医療証があると、窓口での医療費負担がないこともあり、「少子化対策
に逆行する」と炎上しないことも、何で「妊婦加算だけ槍玉にあがった?」
とモヤモヤ感が残っているようです。
→ また聞きですが、乳幼児加算にはそれこそ色んな加算があり、心電図
検査や超音波検査などのなかには、通常の検査料に15〜60%の加算が
つくものもあるそうです。

 まあ、この問題を放置したままだと、妊婦であることを隠して診察を受ける
方もそのうち出て来かねない(その結果重大な医療事故につながらないか)
といった懸念や、妊婦側の感情的反発のあまりの強さから、異例の早さでの
凍結に追い込まれてしまったのが実際の所なのだと思いますが、妊婦加算
やその凍結にはご自身が健康保険料を負担している立場なのか、扶養されて
いる立場(自営業で国保の保険料を夫が払っているケースも含めます)なのか
によっても、不満の度合いは違うのではないかなと個人的には考えたり…。
 3割自己負担と言っても、会社員ならばお給料から毎月徴収されている
「健康保険料の負担の方が余程重いわ!」と感じる方が普通だと思いますし、
逆に扶養者の立場にいて夫が保険料の負担を全て引き受けていて、日常的な
生活費を、「はい○万円で家計をやりくりしてね」と任されている専業主婦の
ような立場の位置づけにいる人ならば、3割負担で初診230円&再診110円
(診療時間内)という診察の度に、「こちらは家計の節約のために必死なのに、
何この出費は?」と、噛みつく態度に出てくる人が出てくることも予想できた
わけで、せめてネーミングだけでも患者さんの理解を得られるものに
出来なかったのかとか思わずにいられませんでした。
*診療時間外、休日受診、深夜受診の負担額は異なりますが割愛します。



 そろそろまとめに入りたいと思います。
 妊婦加算への不満が、妊婦さんが一番お世話になる本丸とも言える
産婦人科から炎上したのならば、この凍結騒動も「ええっ?」と思いながらも、
例えばフォーラムを開催して医師と妊婦が直接意見交換する場を設けて、
その上で審議会を開いてでの凍結ならば、まあ受け入れるのも仕方が
なかったのかな…と思いますが、火元はまさかの皮膚科から、しかも同一
診療科のはしご疑惑? のおまけつきでした。
→ 複数の診療所に通えば、その分近所の知り合いと出会う確率が高まり、
格好の詮索の対象になります。まして、はしご行為は、これまでお世話に
なったかかりつけ医との信頼関係が壊れかねず、100歩譲って別の医師に
変えるとしても、症状を一々説明し直さなければならず、一番酷い時の症状も
伝わらない可能性も高いなど、お腹の中に赤ちゃんがいる人の言動としては
非効率かつ不自然極まりない(出産という重要イベントを控えているのに、
何してんの?)としか…。

 また不適切事例として取り上げられたコンタクトレンズの処方も、わざわざ
妊娠している時期にコンタクトレンズの処方を望む妊婦さんがどれだけいるか
を考えれば、(まあ最近は使い捨てコンタクトレンズに拘る方もいるのかも
しれませんが、こちらも)いささかレアな事例過ぎて、参考事例としては
ピントが外れているような…。
 そして、政治家のお偉いさん組の中で、この問題に真っ先に噛みついたのは、
農政問題でも派手なパフォーマンスで名を知らしめた小泉進次郎議員…。
 誰も好き好んで彼を敵に回したくはないでしょうし、正直、今回も彼の
政治的パフォーマンスに上手く利用されてしまった感しかしないのですが、
どちらかと言えば周囲の社会的差別や偏見に晒されながら、それでも世の
不条理に耐え忍んで出産を心待ちにしている大半の妊婦さんの方は、
この問題についてどう解決することが望ましいと考えていたのでしょうか…。
 立場の違いや周知不足とはいえ制度の理解が十分進まないまま、医師側など
専門家側の意見も十分聴取することなく、随分早く結論を出してしまった
ものだと思いますが、あと1年3カ月 足りない財源の確保をどうするのか、
もし負担額の返還を求めるクレーマー気質の人が出てきたらどう対応するのか
(間違っても診療所に責任丸投げしないで下さいね)…とか、そういった
議論も深くなされないまま、いきなり凍結を決めてしまって本当に
よかったのか…。
 そして、今後どのような形で妊婦さんに対する、特に産婦人科以外の
診療科が配慮していくことになるのか。
 「目先の細々な出費が減っただけで、誰も得しなかった………」などという
ことにならなければいいのだけれど…とただただ懸念するばかりです。

2.あとがき
 …と妊婦加算の話題を書いていたら、厚労省でもっととんでもなく大きな
騒動(雇用保険や労災保険が本来よりも少なく支給されていた問題)が
発覚しました。
 政府のお偉いさんには、こちらの問題こそ迅速な対応をお願いしたいです。
はい。

最新のコメント

  • でめきん2008-03-07 19:07:06

    >『ちゃんずけ』くらいで、お給料を減らされなければならないのだと憤慨している

    男性も多いのではないでしょうか)



    裏にはちゃんとした訳があるようです。

    大学における権力者=教授を訴えるということは学生にとっては容易なことではありません。現実に訴えることも無く教授のパワハラで自殺なんていう話はめずらしくもありません。

    例えとして適切ではないと思いコメントさせていただきました。



    http://www.zakzak.co.jp/top/2007_12/t2007120518_all.html