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仕事と家庭の両立のために〜両立支援を考える

学生のときは男も女も対等だったのに、どうして社会人になると男社会になってしまうの? 仕事と家庭を両立する方も、一旦退職した方もその後のライフスタイルをどうしたいかを一緒に考えてみませんか

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創刊日:2005-10-20  
最終発行日:2017-11-17  
発行周期:月2回  
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仕事と家庭の両立のために〜両立支援を考える

2017/11/17

仕事と家庭の両立のために〜両立支援を考える 第177号 2017年11月17日
保育無償化騒動について感じていること
 ファイナンシャルプランナーの永田です。先月22日に行われた衆議院選挙は、
自民は3議席、公明は5議席減らすも、総議席数そのものを削減したことも
あり、自公で310議席と3分の2を占める大勝に終わりました。
 そして安倍総理が衆院解散に伴う記者会見で0〜2歳は低所得世帯に限って、
3〜5歳については全ての世帯で保育料をタダにすると表明したこと。
 自民党の公約でも、
1)0〜2歳児の幼稚園・保育園費用を低所得者世帯に対して無償化
*2019年度から導入予定
2)20年度までに3〜5歳児の全ての子供の同費用を無償化
 を唱えて、教育無償化や待機児童対策などにかかる2兆円のうち、これまで
目途の経っていなかった約3000億円分について産業界からの拠出を求める
発言を行ったこと。
 ただ、その後実際に試算を出してみて、現実的な金額におじけずいたのか、
『保育士の配置や面積などの基準が認可施設よりも緩いことから、無償化の
対象にすることと政府が認可外施設の利用を推奨していると受け止められ
かねない…』などというとんでもない理由を打ち出して「幼児教育・保育の
無償化」を巡り政府は認可外保育施設を対象から外すことを検討しはじめた!
…と報道
 9日の発表では、0〜2歳児の保育園の無償化は、年収約260万円未満の
住民税非課税世帯に絞り、一時期保育園では認可外の保育所を対象から
外す検討をしてきた一件でも、木原誠二党政調事務局長が記者団に「全て
(が対象)というのが私どもの答えだ」と述べ否定的な考えを示し
(大方、庶民や子育て問題に詳しい一部政治家の猛反発に焦り、慌てて
火消しに追われたのでしょう)
 15日の各紙朝刊では、〇〇保育室や認証保育所といった自治体独自の
無認可保育施設ばかりでなく、ベビーホテルも含めると言い出すなど、日々
言っていることがコロコロ変わり、子育て世代層の不安も悪戯に煽っています。

*2020年度までに3〜5歳で幼稚園と保育園に通う場合は、親の年収に関係
なく支援の対象とする としている件では、勿論消費税が10%に引き上げに
なってからの話で、財源の確保を考えるとあまりにも荒唐無稽で現実味に
欠ける(こちらも収入制限はかけざるを得ないでしょう)ため今回は割愛
したいと思います。

 「無償化より待機児童解消を優先すべきだ」という当事者からの切実な
訴えは当然の言い分として、私は、負担金を誰が拠出するのか、本当に無償化
した場合の公平性の問題、中途半端な無償化が逆に更に保活問題を深刻に
しかねない問題から疑問を呈したいと思います。
*15日朝までの情報を基に執筆しています。

 まず負担金の供出の問題ですが、社会保険料負担が毎年重くなる不満や
将来への不安から、厚生年金については保険料率に上限を設けて固定すること
を一旦決めてしまった以上、これ以上労使折半の保険料率に反映することは
困難です。
 そこで子育て支援費用は事業主拠出金という形での負担を求めてきました。
 元々は児童手当拠出金と呼ばれていたこの制度。子供のいる方は勿論、子供が
おらず独身であっても厚生年金に加入している場合は対象に含めて金額を算出
するもので、労災保険料と同様に事業主が全額負担するため、一般の働き手には
あまり知られていませんが、拠出金率は1996年9月までは0.11%だったのが、
2003年4月の総報酬制の導入に伴い0.09%に、2007年4月より0.13%に、
2012年4月に0.15%に、2016年4月に0.2%に、2017年4月に0.23%と
昨今になって急に引き上げピッチが拡大しています。
 産業界に負担させるということから、おそらくはこの事業主拠出金の料率を
更に引き上げることで調整する(新たに制度を設けるよりも既存の制度を
変更する方が、法律を1つ通すことだけ考えてもずっとラクです)ことになる
と思いますが、本当にそれでいいのでしょうか。
 保育所に子供を預けることで親が育児休業から職場復帰したり、一旦家庭に
入っていた方が仕事にありつけ、企業にとっては人材の供給を受けられる役割
を果たしていたことから、これまでこの事業主拠出金の存在は、一応は徴収の
名目もあり、またお給料から直接控除されるものでもないため、働き手に
とっては一見目に見えにくい費用だったことから、経営者や総務担当者以外
にはあまり知られておらず、世間一般的にはそれ程厳しくその存在意義や
使用使途についても問われることもなかったように思います。
 ただ、負担率がこれ以上高まるようだと、企業にとってもその負担も
バカにならず人件費に回す費用が減ってしまう(*)という意味では決して
無視できない存在になる可能性があります。
*企業は利益を出して、その中から人件費を捻出。その年に賄いきれなければ、
銀行から借金して賄ったり、毎月の基本的給料は減額しにくいので、賞与等の
減額で対処することになります。そういう意味では社会保険料で行われている
事業主全額負担も折半負担も、直接目に見えないだけで、間接的には働き手が
主に負担していると言えるでしょう。

 参考までに厚生年金保険料は今年の9月分から18.3%を労使折半負担。
 健康保険は健保組合と協会けんぽがあり、協会けんぽの保険料率は都道府県
ごとに異なり、今年度の料率は9.69%〜10.47%(大雑把にみて北海道と
西の方の多くの県で10%超)を折半負担(これとは別に介護保険料率も1.65%
ありこちらも折半負担。
 健保組合は高齢者拠出金の負担増の影響もあり、保険料率が10%を超える
見込みの組合もあり、解散して協会けんぽに合流する流れが再び加速する
可能性が濃厚。

 これに対する事業主拠出金率は全額事業主負担で0.23%。
 比率だけを見ると桁が1つ2つ違うじゃないかと言われそうですが、
厚生年金は将来年金として受給要件を満たした方は終身年金として戻ってきて、
健康保険も高齢になっても医者いらずなごくごく一部の方を除けば、ほぼ確実
にお世話になる性格のものに対して、事業主拠出金率は子供のいない独身者
は勿論、既婚でも子供のいない方、既に子育てを終了した方も含め、広く薄く
負担を求めると言えば聞こえは良いですが、すべての方に戻ってくる
ものではないという性質のものである違いには注意が必要です。



 次に、0〜2歳児の幼稚園・保育園費用を低所得者世帯に対して無償化、
20年度までに3〜5歳児の全ての子供の同費用を無償化 が本当に子育て世代
にとって平等となるのかの問題について指摘したいと思います。
 幼稚園については高額な私立幼稚園に通う子も対象にするのかという
感情的な問題(政府としては高所得者向けの私立幼稚園の料金を全額補填
するのは避ける方向で考えているようです)もありますが、同じ幼稚園に
通うなら費用も基本同額だと思います。
 一方、認可保育園の保育料は世帯の地方税(市町村民税)の課税額に応じて
数段階で区切り、更にその自治体に財政的に余裕があれば独自に補助を出す
形をとる、その自治体によって異なる金額設定になっていると思いますが、
基本的には生活保護者などの第1階層は負担ゼロ、市町村民税非課税世帯は
第2階層で月数千円の負担。以降住民税納税額に数区分を設けて、階層が
上がる程保育料負担が高くなるものの、当然上限があることから、その上限に
貼りつけば、たとえ2000万円プレイヤーであろうと、数億円プレイヤーで
あろうと上限を収めて貰うことになります。
 そして自治体によっては、第三子がいる場合には極端に保育料が安くなる
など独自の支援をしたり、3歳以上と3歳未満でも負担額は通常変わるなど
特に自治体をまたいで保活を行う(都会なら珍しいことでもありません)
方にとっては非常にわかりにくい制度となっています。
*10月30日の日経記事「保育無償化 誰のため? 所得水準で恩恵に差
自治体負担、国が肩代わり」では、現在の3〜5歳の保育料の負担は生活保護
世帯はゼロ、年収約260万円未満の住民税非課税世帯の場合の保育料は
年7.2万円だが、年収約1130万円以上の世帯では最大年121.2万円を
支払っているそうです。(自治体によって変わります)

 さてここで考えて貰いたい問題があります。9日に公表された試算では、
0〜2歳児の保育園の無償化は、年収約260万円未満の住民税非課税世帯に
絞る方向で調整しているようなので、おおむね第二階層までは面倒を見るよ
ということになりそうですが、ではそれ以降のぎりぎり年収要件を超える方
は恩恵を受けられないのでしょうか。
 年収260万円と一言に言っても首都東京など都市部と地方都市ではその
金額の重みも全然違うと思いますが、金額的には月数千円レベルとはいえ、
賃金水準も考慮せず一律に補助するかどうかをドライに判断してよいもの
でしょうか。
 そして国から出して貰えば、これまで自治体から出してきた上乗せ補助も
必要なくなることから、その分の財源がどこに回るのかという問題も発生して
きます。
 待機児童問題が深刻な自治体はたとえ財源が厳しくとも浮いた分を回して
保育所の整備とスタッフの確保に尽力してくれると信じたいのですが、
田舎の方の財源の厳しい自治体はどう振舞うのか。
 オンブズマン制度が十分発達していない日本では、この検証がおろそかに
なり、数年後に問題が発覚する……ということも、ひょっとしたら起こり
得るかもしれません。



 そして都市部の方が特にピリピリしているのですが、『「幼児教育・保育の
無償化」を巡り政府は認可外保育施設を対象から外すことを検討しはじめた!』
という続報。
 実は都市部で〇〇保育室と称する認証保育所や企業主導型保育室は、認可外
扱いだが公的な補助を受けていて、認可外利用者の4割は認可保育所に入所
できなかった子供達で、そういう子供達を、質が伴わない無認可保育所(高額の
保育料を徴収して、認可保育所より高度の独自教育を与えている一部の優良
無認可保育園と区別する意味で、あえて質が伴わない無認可保育所という
露骨な表現を使わせて頂きます)に預けるよりは子供にとって環境も良い
だろうと次善の策として預け先として選択している方も、待機児童問題が
深刻な都市部では決して珍しくもないのですが、この子達は国が公表している
待機児童26081人にはカウントされず、この認証保育所等まで他の無認可
保育所と一緒くたに、補助の対象外となるようなことになると、ますます
保活競争が激化しかねないのです。
 現実的に考えれば、自治体の認可保育園の整備が間に合わないから、
認証保育所や企業主導型保育室に対応をお願いしているわけで、こちらを
外すようだと相当の混乱が予想されることになり、その結果が9日の
自治体主導の保育室も基本対象から外さないというコメントにつながり、
15日の朝刊各誌では事業所内保育所や自治体が独自に補助金を出している施設、
児童発達支援施設だけでなくベビーホテルまで対象に含める という、
いささか対象を拡大しすぎな論調にさえなり(対象外は病児保育、一時預かり、
延長保育としているので、保育の質の議論は無視して、日常的に預かるか一時的
に預かるかで単純に補助の対象とするか、面倒臭いから形式的に判断………
ということでしょう)おいおい…という感じになってきましたが、どう
着地点を導き出すつもりなのか…。
 野村総研の調査 によれば、利用希望がありながら申し込まなかった
人の4割が、「どうせ無理だろうと諦めた」のだとか。
https://www.nri.com/jp/news/2017/170928_1.aspx
*コンピューターウイルス対策は自己責任でお願いします。

 お国の統計では、政令指定都市で〇〇保育室も含めた参考数値としての
待機児童数も公表されていますが、保育の質など、補助対象に一定の基準を
設けないと、今度はこの「どうせ無理だろうと諦め」ていた層、特に無償化の
恩恵を受けられそうな低所得層が急に入所申し込みを再開しはじめることに
なり、今は表面化していないどれだけの潜在的な待機児童数が更に追加される
ことになるのか予想がつきにくくなるリスクが今度は発生することになります。
 今回の対象を年収約260万円未満の住民税非課税世帯に絞るのも、潜在的な
預け入れ層が急に浮上してくることを避けるためにあえて低いラインに設定
したのではないかとさえ勘繰りたくなるのですが、肝心の保育の枠が足りない
状態が続く限りは、所得の低い層からは、結果的に最高額を払うような高所得層
の方に対して「あなた方のような所得の高い方が認可保育園に預けるから、
我々低所得者が子供を保育園に預ける枠が足りなくなるんだ」と文句を言えば、
高所得者の方も「何をいうか! こっちだって預け先が決まらなければ働き
続けることさえできない。優良な無認可保育園だって、保育料だけでは簡単には
見分けがつかない。地域によっては優良な無認可保育園さえ存在しない所も
ある、地元の認可保育園を第一候補に狙うのは当然ではないか」と応酬。
所得階層間の争いが激化するのが目に映るようです。
*批判されそうなのは十分承知ですが、保育士や復職間際の技術者と、
最低時給に程近い方が最後の1枠を争うのならば、国力向上のためにも
できれば前者を優先して救済して欲しいんですよね…。


 まだ始まってもいない制度にグタグタ言ってもキリがないので、そろそろ
まとめに入りたいと思います。
 保育無償化は一見聞こえはよい響きですが、実は様々な問題をはらんで
いますし、高校無償化問題のように一定額を支給するという比較的取組み
やすい制度とは異なり、また自治体が独自に支援していることもあり、
もしこの仕組みにメスを入れるならば、相当の周知時間と事前調整が必要で、
それを怠るようだと無用な混乱を招きます。
 特に自治体が独自補填している分はその分新たに子育て支援に回して
貰えなければ何のための制度改正なのか? となりかねませんが、そもそも
保育士を確保できなければ保育所というハードができた所で肝心の児童を
預かることもできません。だとすれば、もし財源を確保できるのならば、
このような人気取り政策ではなく、民間保育士の給与補てんにこそ財源を
投入して保育士が長期的に働き続けられる環境こそ真っ先に整備すべきかと
思いますが、どうなることやら。
 2015年2月14日付け日経によれば、都内の公立保育園で働く保育士も、
非正規職員の割合は全体で44.7%を占め、23区外では70.8%に上る自治体も
あるそうですし、フルタイム勤務者ばかりとは限らないものの、年収は200万
円未満が8割に達し、うち100万円未満も4割超だとか。これ2年半前の
報道とはいえ、最低時給が日本一高い東京の話だったりします! 
 そういう方の正規職員化や賃金補填こそ、優先課題としては余程高い
(彼女らの処遇を改善することで、やる気の高い保育士を確保することで
保育の場を拡大することの方が有意義)のではないかと思いますね。

公立保育園の非正規職員4割超 都内、明星大が調査
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG13HDX_U5A210C1000000/
*コンピューターウイルス対策は自己責任でお願いします。



2.あとがき
 政府がマイナンバーカードの普及に苦労しているようです。
日経有料記事 マイナンバー背水の陣 利便性とお得感、普及のカギ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22906010R31C17A0EA1000/?n_cid=TPRN0003
*コンピューターウイルス対策は自己責任でお願いします。

 マイナンバー自体、当初の1年間は、税と社会保障の実務のためだけに
利用するという名目で導入された経緯がある(その後法改正もあり拡大)だけに、
自治体ポイントだの、スポーツイベントやコンサートで高額転売を防ぐ仕組み
よりも、認可保育園の入園手続き時にマイナンバーカードを活用したら
ポイントをアップするようにすれば、自分の子供を認可保育園に通わせる
ために、無認可保育園に一定期間以上預ける実績をつけたり、偽装離婚を装う
ことで1点でも保育の点数を上げようと画策する方が一定数存在いるような
保活激戦区では、我先へと普及するのではないかとも思うのですが、これも
やるなら事前に十分な周知期間が必要でしょうし、それでも知らされて
いなかったとゴネる人が必ずと言ってもいい程出てくるでしょうから、
よくよく考えたら愚策か…(汗
 そもそもマイナポータルというアクセス履歴を本人が確認できる仕組みの
導入が遅れていたのに、環境も整備しないで、普及率もへったくれもないだろう
とも思うのですが、保有を促すのならば、保有した方が有利になる何らかの
実利がないと浸透もしないと思うんですけどね…。

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