サッカーを読む第177号:勝利の時も、敗北の時も
発行日:1/10
━━━━━━━━━━━━━━━━◎第 177号━━2012/1/10━━
サッカーを読む(フットボール書評)review football books
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☆目次
○ 今日の本
『勝利の時も、敗北の時も』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140806028/soccerreview-22
【あいさつ】
【書評】
【編集後記】
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ブログ:『もっとサッカー本を読もう!』
→ http://ameblo.jp/review-football-books/
サイト:『サッカーを読む(フットボール書評)』
→ http://www7a.biglobe.ne.jp/~soccer_review
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○ 今日の本
書籍名 :勝利の時も、敗北の時も
著者名 :オスヴァルド・アルディレス
出版社名:NHK出版
出版年月:2001年4月25日
【あいさつ】
新年、あけまして、おめでとうございます。
といっても、もうすでに、1月も10日でありますが。
今年も、メルマガ、ブログともども、一読していただければ、
と思っております。
年末年始も、毎年のことではありますが、国内、海外とも、さ
まざまなサッカー関連のニュースが氾濫していて、パソコン画面
のインターネット上を駆け巡るいろんなサッカー報道を見るだけ
でも、瞬く間に時間が過ぎ去ってしまうような感じがします。
そんな慌ただしさの中に溺れて流されないよう、なんとか自分
自身を律しようとするのですが、なかなかできるものではない。
もしできたら、ブログもマメに更新、メルマガももっとすごいも
のになっていることでしょう。
選手の移籍や引退の記事を見て、寂寥感に襲われることもあれ
ば、新しいスターの活躍を夢見ることもある。いろんな思いが交
錯するこの時期、ややもするとサッカー関連記事を眺めるだけで
時が流れて行ってしまいそうなのですが、ここはなんとか踏みと
どまって、自分の人生を少しでも主体的に生きようと思います。
【書評】
アルディレス、という名前を聞いて、思い浮かべることは、人
それぞれ、まったく異なるのではないだろうか。
大昔から海外サッカーに精通しているオールド・ファンならば、
1978年アルゼンチンW杯の優勝メンバーである、初めてイン
グランドでプレーした英国系以外の選手である、などといった事
柄を想起するであろう。
Jリーグが勃興してからの若いサッカーファンならば、いくつ
ものJクラブを監督として渡り歩き、数々の栄冠を積み重ねてき
た名将としてのイメージが強いのではないだろうか。
また、サッカー以外では、例えば映画ファンならば、ペレらと
ともにシルベスター・スタローン主演映画『勝利への脱出』に出
演したことに気づくであろう。
私は、以上のどれも思い浮かべるのであるが、本書を熟読する
までは、著者の詳しい経歴は、じつはほとんど知らなかった。
私が本書を再読するきっかけとなったのは、著者がまた日本に
やってくるという報道を目にして(J2に昇格したFC町田ゼル
ビアの監督に就任)のことだったのだが、先日、じっくりと読ん
でみて、読後しばらく呆然と考え込まされることがいくつもあっ
た。
ここでは、二つだけ記しておこうと思う。
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あの時期、我々にとって軍事政権であるということはさほど異
常なことではありませんでした。その政権下で実際に何が起こっ
ていたのかも、まったく知りませんでした。ある人が消えたとい
うような、当時囁かれていた噂は、すべて共産主義の宣伝にすぎ
ない、誰かが捏造した嘘だとしか思っていませんでした。もちろ
ん我々のほとんどが若かった。そして政治とはまったく無関係な
場所にいました。ほとんどのアルゼンチン人が実際に起こってい
たことについて何一つ知らなかったのも事実なのです。私はワー
ルドカップのすぐ後にヨーロッパに渡りましたが、その後しばら
くたって、様々なニュースがアルゼンチンから届いたときですら、
私にはそれがとうてい真実だとは思えませんでした。やはり反政
府派や共産主義者の宣伝だろうと思っていたのです。そのことを
思い出すと、私は今も辛く、悲しくなります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
W杯自国開催時の軍政時代を、アルゼンチン最悪の時と言い、
当時の軍部を激しく非難する著者が、弁護士になるべくプロ契約
後もしばらく法学部で勉学にいそしんでいた聡明な著者ですら、
軍部の暴虐ぶりを詳しく知ったのは、かなりのちのことだという
のである。
私は、この一節を読み、真っ先に脳裏に思い浮かんだのは、じ
つは、今現在の日本である。
詳細はここでは述べない。原発神話の崩壊や記者クラブ問題な
どをいちいち列記せずとも、弊誌の読者ならお分かりいただける
と信じている。
もう一つは、渡英後、トットナム・ホットスパーズで選手とし
ての絶頂期を迎え、いくつものタイトルも獲得して、アルゼンチ
ン代表として1982年スペインW杯に出場する直前に、突然著
者を襲った驚愕の事態である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そのとき、まったく想像もしなかったようなところから問題は
起きました。それは南大西洋に浮かぶ、ほとんど忘れられていた
小さな島でした。我々にとってはマルヴィーナス諸島、イギリス
人にとってはフォークランド諸島です。戦争前、99・9%のイ
ギリス人はいったいそれがどこにあるのかも知りませんでした。
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ある日突然、私が生まれ育った国と自分が住んでいる国が戦争
を始めました。それは私にとって衝撃的なことでした。実際その
ショック状態から立ち直るのに長い、長い時間を必要としました。
少なくとも1年は何もできないような状態が続いたし、何とか元
に戻れたのは、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、2年、ある
いは3年がたってからでした。満ち足りて、すべてがうまくいき、
とても幸せなものに見えていた世界が、ある日、ボンッと爆発し
てしまったのです。とても大きな打撃でした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この時の様子を、著者は、『もうすべては過去とは違ったもの
になってしまうということがわかっていました。そしてそれ以降、
同じように見えても、でも実際にはもう何もかもが、かつてとは
同じではありませんでした』と述べている。
さらに著者は、『その時期非常に辛かったのは、私が何かをコ
メントするたびに、どちらかにとっては必ず『裏切り者」になっ
てしまうことでした』と当時の悲痛な状況を説明している。
もし私が同じような境遇であったら、果たして平常心を保てる
だろうか? いや、重圧に押しつぶされること必至だ。
それほどの困難を乗り越えて、著者は今でも監督として世界を
駆け巡っている。サッカーの世界に生きている。それは、著者の
聡明さや勤勉さや誠実さや向上心もさることながら、内に秘めた
るサッカーに対する情熱のたまものではないか。
【編集後記】
この本で著者は、教育の重要性や、共に戦う選手・スタッフと
の一体感や、自らの指導方針など、いろんなことを丁寧に語って
おります。
その一方で、ロンドンで歌手デビューしたり、あのマラドーナ
と一緒に合宿所を抜け出したりしていることからも、単なる堅物
というか、いわゆるガリ勉タイプや優等生タイプではないようで
す。
来季のJ2が楽しみです。
今年も、よろしくお願い申し上げます。
≪文中敬称略≫
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