サッカー

サッカーを読む(フットボール書評)

ナチスに虐殺された選手。常勝チームに挑む盲目の少年。目も耳も不自由な観客。そんな逸話溢れる名著や芸能人の翻訳絵本から緻密で重厚な学術書まで、あらゆるサッカー本書評。ワールドカップ関連本多数掲載。

全て表示する >

サッカーを読む第98号:オシムの言葉

2006/07/27




━━━━━━━━━━━━━━━━━◎第98号━━2006/07/27━━
 サッカーを読む(フットボール書評)review football books        
 ────────────────────────────
 ☆目次
  ○ お礼
  ○ お知らせ
  ○ 今日の本『オシムの言葉』
  【あいさつ】
  【書評】
  【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ----------------------------------------------------------
 サイト → http://www7a.biglobe.ne.jp/~soccer_review
 ブログ → http://ameblo.jp/review-football-books/
       http://tagawamasaharu.seesaa.net/
 ----------------------------------------------------------



  ○お礼

  前号配信後、発行スタンドさんの方にコメントをよせてくださ
 った方がおられました。

  ありがとうございました。励みになります。

  もし、このメルマガを読んで、何かありましたら、どしどし感
 想をお寄せ下さい。

 (ご感想の内容は、他の漫画家のサッカー風刺画などについてだ
 ったんです。前号で取り上げたマンガは、サッカーダイジェスト
 連載なのですが、かつてサッカーマガジンに連載していたマンガ
 やイラストについても、単行本が出てこないかな、と思いました)




  ○ お知らせ

  次号は、7月31日(月曜日)に出します。







  ○ 今日の本

  書籍名 :オシムの言葉
  著者名 :木村元彦
  出版社名:集英社インターナショナル
  出版年月:2005年12月10日
  




 【あいさつ】

  ついに、日本代表監督が、決定しましたね。

  まあ、ワールドカップ開催中から、名前があがっていましたか
 ら、驚く、ということはなかったのですが。

  ただ一つ言えることは、日本の歴史の中で、これほどの名将に
 来てもらったことは、ないということです。

  ずいぶんと大げさなことを言うヤツだな、と思われるかもしれ
 ませんが、オシム監督がジェフでやってきたことを思い起こせば、
 当然だと思いますけど、私は。

  この本を読めば、私が決して大げさなことを言っているわけで
 はないことが、おわかりいただけると思います。

 (これまでいろんなサッカー本を購入してきましたが、新刊本で
 これほど入手困難なのは、たぶん初めてかもしれない。目の前で
 平積みのこの本が、どんどん減っていくなんて。こんな光景を目
 の当たりにしたのも、初めてです)




 【書評】

  今さらこの私が、現日本代表監督について論じるまでもなく、
 マスメディアでさかんに履歴や評価についてさかんに語られてい
 るので、多くの日本人にとっては、フットボール(サッカー)に
 興味があるないにかかわらず、本書の主人公の波瀾万丈の人生や、
 弱小クラブを常勝チームに育て上げたことなど、周知のことであ
 ろう。

  しかし、私も含めて、今回の一連の代表監督就任騒動が起こる
 前に、かの名将のことを、どれだけの人が、どれほど知っていた
 であろうか。

  サッカー雑誌を常日頃から注意深く読んでいる人なら、あるい
 はジェフのサポーターであったり、Jリーグを熱心に見聞きして
 いる人ならば、かの名将がジェフの監督に就任した直後から、そ
 の含蓄のある言葉に気づいていたであろう。

  じつは、記者会見などで話すことが、非常におもしろいという
 ことは、サッカー雑誌の記者の小さなコメントであったり、ある
 いはジェフのサイトなどから、私も少しは知っていた。

  そして、本書が刊行された当初、私は本書を、監督のいろんな
 言葉を集めた、いわば“語録”なのだろうと思っていた。

  しかし、このたび、本書を熟読してみて、いい意味でそれが私
 の誤解であることがわかった。

  本書は、監督の言葉を多々紹介してはいるものの、ただ単に並
 べているだけではなく、監督の波瀾万丈の人生そして彼の信条な
 ど、監督を取り巻く人々の人生、監督に育てられた人々の人生な
 どについても詳述している。副題に『フィールドの向こうに人生
 が見える』とあるが、この言葉がこれほど似合う人も珍しい。

  人生というと大げさかもしれないが、監督の場合は全然大げさ
 でもなんでもない。特に代表監督を務めていた時期の、国内外の
 情勢と代表・クラブのスケジュールの時系列の記述は、単なる事
 件・事実の羅列なのに、読んでいて心拍数が上がるような、緊迫
 感に溢れたものであった。    






  本書を読んでいて、凄味のある言葉も多々あるのだが、今、こ
 うやってメルマガを書いている者として、胸にグサッとくる言葉
 があった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  翌日、姉ヶ崎の練習場で、トレーニングが終わるのを待った。
 駐車場に向かう途中、不躾は承知でかねてからの疑問をぶつけた。

 ──あなたは、ご自分が紡ぎ出す言葉が、語録と称されて注目を
 浴びていることをどうお考えになっているのか。

  しばしの沈黙の後、彼は言った。

 「私は別にテレビやファン向けに言葉を発しているわけではない。
 私から言葉が自然に出てくるだけだ。しかし、実は発言に気をつ
 けていることがある。今の世の中、真実そのものを言うことは往
 々にして危険だ。サッカーも政治も日常生活も、世の真実には辛
 いことが多すぎる。だから真実に近いこと、大体真実であろうと
 思われることを言うようにしているのだ」

 ──あの会見の言葉も?

  じっとこちらを見つめて口を開いた。ミステリアスな監督が、
 ようやく漏らした本音だった。

 「言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は
 記者を観察している。このメディアは正しい質問をしているのか。
 ジェフを応援しているのか。そうでないのか。新聞記者は戦争を
 始めることができる。意図を持てば世の中を危険な方向に導ける
 のだから。ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある」

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





  直接フットボールとは関係ないのだが、私が、自分の人生にお
 いて、非常に勇気付けられた言葉がある。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  オシムはこう言って私に釘を刺した。

 「私のようなケースは本当に珍しい。運が良くて、心からありが
 たいと思っている。町中に水も電気もなく、厳しい冬には凍える
 しかなかったあの頃のサラエボで、家族は無事に生き延びた。
  人々は私の話になれば、良かったね。素晴らしいという美談に
 してしまう。しかし、そんなものではない」

 ──監督は目も覆いたくなるような悲惨な隣人殺しの戦争を、艱
 難辛苦を乗り越えた。試合中に何が起こっても動じない精神、あ
 るいは外国での指導に必要な他文化に対する許容力の高さをそこ
 で改めて得られたのではないか。

 「確かにそういう所から影響を受けたかもしれないが……。ただ、
 言葉にする時は影響は受けていないといったほうがいいだろう」

  オシムは静かな口調で否定する。

 「そういうものから学べたとするなら、それが必要なものになっ
 てしまう。そういう戦争が……」

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜














 【編集後記】

  じつは、この本の中で、思わず「ぎょっ!」と驚いてしまった
 箇所があったんです。

  我らが日本代表監督は、じつはパルチザン・ベオグラードの監
 督だった時期があるんです。

  そして、その頃、日本にも来ているんです。

  その時の写真を見て、驚くと共に、感慨深く拝見しました。

  私、じつは、その試合、見ていたんです。

  もちろん、当時はまだJリーグもない頃でしたから、日本代表
 の試合を放映しようなんていう粋なテレビ局は存在しません(例
 外はテレビ東京かな)。

  そうです。私は、その試合、日本代表vsパルチザン・ベオグ
 ラードのゲームを、スタンドから観戦していたんです。

  あの時、あの場所に、オシムがいたのか・・・・・・・。

  この本の中では、たびたび現日本代表監督と日本との浅からぬ
 縁(彼は東京オリンピックにも出場していた!)について述べて
 いますが、じつは私とも浅からぬ縁があったりして。
 (そんなこと言ったら、Jリーグが始まるはるか前に、前日本代
 表監督のプレーをスタジアムで見たことがあるから、前日本代表
 監督とも浅からぬ縁があることになってしまうが)
























  なんちゃって。



  ≪文中敬称略≫



PS:今日の内容はいかがでしたか?
   あなたの声を聞かせていただけないでしょうか。
   例えば……
    「こんな本を見つけました!」
    「この文章は、こんな風に直した方がいい」
  などなど。
   ご意見・ご感想・ご質問をお待ちしてます!
   メールはこちらまで → review@soccer.biglobe.ne.jp
   もし、私にメルアドを知られたくない方は、メルマのバック
  ナンバーの下のコメントにレビューを書くか、発行スタンドさ
  んまで。
    このメルマガのメルマのバックナンバーページ
   → http://www.melma.com/backnumber_140407/

   このメルマガを、お気に入っていただけましたら、ぜひ、あ
  なたのお知り合い、お友だちへ、紹介していただけないでしょ
  うか。
   下記の4行をコピー&ペーストして、お友だちやお知り合い
  の方に、Eメールをお送りいただけないでしょうか。

  【無料メルマガ『サッカーを読む(フットボール書評)』】
  こちらから登録できます。
   → http://www.melma.com/backnumber_140407/
  (解除もできます……。)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◇メルマガ名
   〜サッカーを読む(フットボール書評)〜
 ◇発行周期
   月・木(週2回発行)
 ◇発行者
   田川正治
 ◇『サッカーを読む』ホームページ
   → http://www7a.biglobe.ne.jp/~soccer_review
 ◇連絡先(メール)ご意見・ご感想はこちら
   → review@soccer.biglobe.ne.jp

    Copyright (c) 2005- TAGAWA Masaharu All rights reserved.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2005-05-22  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ週刊  
Score!: 100 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。