映画日和

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流行なんかどうでもいい。面白いものは面白い。映画の知識ではだれにも引けを取らない筆者が、劇場やテレビで見た映画のことを自由に書きつづったメルマガ版映画日記。



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最終発行日:
2005-06-28
発行部数:
11
総発行部数:
22
創刊日:
2005-03-05
発行周期:
隔週
Score!:
-点

映画日和 No.2

発行日: 06/28


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                               2005年6月28日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
映画日和                                                       No.2 
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                                       http://www7.plala.or.jp/cine_journal/
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■index■

 01: What's New:
 02: Cine-Journal:
 03: DVD Chronicles:
 04: Postscript:



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┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃01┃What's New
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2005年6月22日
▽ソニーも二層式DVDレコーダーを発売

パイオニアの二層式DVD-R対応HDDレコーダー DVR-530H に食指が動いていたのだが、
つい先日、ソニーからも二層式に対応した DVDレコーダー新「スゴ録」シリーズが売
り出され、また選択肢がふえた。

今度の第3世代となる「スゴ録」は、二層式DVD+R 録画に加え、ダブル・チューナー
搭載など、前の2世代に比べ大幅にヴァージョン・アップしている感がある。正直、
心惹かれる内容なのだが、問題は、今回もマニュアル録画モードが見送られたこと。
これさえあれば迷うことなく買うのだが・・・。

「スゴ録」シリーズは録画画質の良さに加え、チューナーの性能が抜群にいいので、
ハードディスク録画の画質に関してはピカイチちといっていい。ただ、そこまで画質
にこだわりながら、DVD-R にダビングするときの画質にあまりこだわっているように
見えないのが残念というか、謎である。今度の「スゴ録」でも、「2時間モード」の
次は「2時間半モード」しかなく、たとえば2時間5分の映画でも、「2時間半モー
ド」でダビングするしかない。この点で、マニュアル録画モードを当たり前のように
備え、さらには従来の一層式DVD-Rに長時間映画を録画する際の画質にもとことんこ
だわっているパイオニア機は、わたしにはやはり魅力だ。

それから、「スゴ録」が対応している二層DVDメディアは DVD+R DL で、パイオニア
のほうは DVD-R DL だという違いも見逃せない。この二つの相違点は、わたしにはイ
マイチわからないのだが、どうもパイオニアの DVD-R DL のほうが互換性も高いし、
将来性もあるように思える(もっとも、どちらも次世代DVD がでるまでのつなぎ的な
ものであることは、否めないが)。ソニーのホームページを見ても、DVD+R DL の互
換性についてはなにも書いていないのも、不安を感じさせる。せめて、旧「スゴ録」
で再生可能かどうかぐらいは書いておいてほしいものだ。ちなみに、パイオニアの 
DVD-R DL は第2、3世代の「スゴ録」では再生可能だが、わたしの持っている第1
世代のでは、再生できないらしい(某レビューのページで実験の結果)。

どちらのメディアも今のところ千円強の値段で、あいかわらず結構な値段である。手
頃な値段になるまでにはまだ時間がかかりそうだ。

[その後、調査した結果、スゴ録の DVD+R DL のほうは ROM化することで、簡単にい
うと、DVDプレーヤーをだまして-Rとして認識させることで(とわたしは認識してい
る)、多くのプレーヤーで再生可能とのこと。とするなら、今後どうなるかはわから
ないが、現時点では、スゴ録の DVD+R DL のほうが古いプレーヤーでも問題なく再生
される可能性が高いといえるかもしれない。反対に、DVD-R DL のほうは規格が新し
いだけに、古いプレーヤーでは問題が発生する可能性があるが、今後対応プレーヤー
が増えてくれば、DVD+R DLよりも安定した再生を期待できるようになるかもしれない
。]

2005年6月17日
▽モンテ・ヘルマンの新作!

偶然だが、先日、モンテ・ヘルマンの簡単なバイオグラフィーを書いてからしばらく
して、フランスでヘルマンの『銃撃』『断絶』などがリヴァイヴァルされた。「リベ
ラション」の web サイトにヘルマン自身による略歴が掲載されていたので、それを
参考に「モンテ・ヘルマン」を一部加筆訂正した。

そこにも書いたが、モンテ・ヘルマンが新作を準備中とのうれしい知らせがある。ダ
リオ・アルジェント、トビー・フーパーらとともに、ホラー・オムニバス映画
『Trapped Ashes』という映画を撮っているらしい。

ちなみに、『バッドマン・ビギンズ』がフランスでも公開中なのだが、「ル・モンド」
のレビューにも、「リベラション」のレビューにも、Ken Watanabe の名前は一言も
出ていない。

2005年6月10日
▽ サマリテーヌが閉鎖

あのサマリテーヌ百貨店が閉鎖するらしい。建物が安全基準を満たしていないとかで、
これから6年間かけて改築するそうだ。6年間とは長すぎやしないか。実際、雇用者
のあいだではこのままずっと閉鎖されたままになるのではないかという不安も広がっ
ているという。『ポンヌフの恋人』の橋のたもとにも姿を見せていたあの瀟洒な姿が、
これから見られなくなるのかと思うと残念だ。

ちなみにサマリテーヌの名は、ポン・ヌフ橋北側の岸に17世紀初めから19世紀初めま
であった揚水ポンプの名前から来ている。そこからルーブルやチュイルリーに給水を
行っていた。 la Samaritaine (サマリアの女) の名称自体は、 「ヨハネによる福音
書」で、ユダヤ人と交際のないサマリア人の女にイエス・キリストが井戸の水を飲ま
せてほしいと頼み、不審に思う女に、「わたしが与える水を飲む者は渇くことがない」
と生命の水について教える説話にちなんでいる。

むろん、キム・ギドクの『サマリア』も、この聖書に登場するサマリア人のエピソー
ドからタイトルを取ってきている。が、こちらはむしろ、強盗に遭ってけがした男を
祭司やレビ人は見て見ぬふりをして通りすぎるが、サマリア人は傷の手当をして宿屋
まで連れてゆき、自分の費用で主人に世話を頼むという、「ルカによる福音書」が意
識されているようだ。

2005年5月23日
▽『神聖喜劇』がシナリオ化

以前、自分のやっているメルマガで、大西巨人の『神聖喜劇』のことを紹介したこと
がある。映画ファン向けのメルマガだったので、わたしの短い紹介をきっかけにして
この長い小説を読みはじめたという人は、皆無だったと思う。まあ、映画とは無縁の
話だったのだが、最近、この小説を映画のシナリオに書き直した本が出ているのを、
ジュンク堂で見つけた。出版されたのは去年の年末らしい。脚本家の荒井晴彦がシナ
リオ化したものだが、別に映画化の話が決まっているわけではなく、荒井がやりたく
て勝手にやった仕事みたいだ。荒井晴彦と『神聖喜劇』というのは、わたしにはだい
ぶ違和感があるのだが、そのシナリオを実際に読んだわけではないので、コメントは
控えよう。それにしても、『神聖喜劇』を映画化できる人間なんていまの日本にいる
のだろうか。だれが監督しても、熱血軍隊ものみたいな映画になりそうで怖い。スト
ローブ=ユイレならたぶん・・・などと、あり得ないことをふと夢想する。

『神聖喜劇』は今のところ光文社文庫から出ているが、5巻本で本屋のスペースも取
るので、近いうちに間違いなく絶版になると思う。買うならお早めに。

2005年5月17日
▽セガン島のプロジェクトが挫折

セガン島のルノー工場跡に美術館を作るという一大プロジェクトは挫折したらしい。
日本の安藤忠雄のデザインが採用される予定だったというから、残念である。行政側
の腰が重くて、プロジェクトがなかなか進行せず、結局中途で挫折したということだ。
セガン島のルノー工場はフランス労働運動の聖地といわれてきた。ゴダールが『愛の
世紀』の舞台の一つにここを選んだのは、むろんそうした歴史の記憶がこの場所に刻
み込まれていたからだ。その工場はいまや完全に解体されて更地になってしまってい
る。美術館のプロジェクトも挫折してしまったし、しばらくこの状態が続きそうだ。
『愛の世紀』がこの場所を最後にキャメラに収めた映画となったのだろうか。まだ工
場が残っているあいだに一度訪れようと思っていたのだが、結局果たせずに終わって
しまった。

2005年4月15日
▽北野武が「カイエ・デュ・シネマ」の特集を飾る

フランスの映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」は今月号で600号を迎える。その記念
すべき600号の編集企画を北野武が任されたらしい。武は609枚の写真をカイエに送り、
様々なシネアストがそのなかから4枚の写真を選んで、それを使って1ページの 
"cine-manga" を作るというゲームを思いついた。このゲームに参加したのは、アサ
イヤス、デプレシャン、ドワヨン、クロード・ランズマン、ホン・サン・スー、ガス・
ヴァン・サント、アピチャポン・ウィラーセクタン等々。そうそうたる顔ぶれだ。見
てみたい。それにしてもこういうことがほとんど話題にならないとは、日本のマスコ
ミにはほんとに感心する。(ちなみにカイエの400号はヴェンダースが、500号はスコ
セッシが編集した。)

長らく機能していなかった公式サイトのほうもまもなく再開するらしい。


              ・  ・  ・


DVD ニュー・リリースはわたしのサイトでチェックしてください。

→ http://www7.plala.or.jp/cine_journal/



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┃02┃Cine-Journal:
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2005年6月26日
▽XTC『オレンジ・アンド・レモンズ』

トム・ハウクがトム・ソーヤーとハックルベリ・フィンの名前を組み合わせたものだ
という説はなかなかおもしろい。ヘミングウェイ曰く「すべての現代アメリカ文学は
この小説に由来する」。南部の保守的な土地を同じように舞台としながらも、田舎町
から抜け出して冒険の旅に出かけたハックとは対照的に、『ポップ1280』の主人公は、
『内部の殺人者』の主人公同様、結局、偽善者だらけのちっぽけな世界のなかから抜
け出すことができない。

同時に「裏切る男と裏切られる男」である狂気のキリストの目をとおして見られたア
メリカ。シェイクスピアの道化師のように、とぼけた顔をしてすべてを見透かしてい
る主人公は、最後の最後の幕切れに冒頭と同じ言葉をつぶやく。

「おれは考えに考え、また考えに考えた。そしてとうとうある結論を得た。そこいら
の普通の人間と同様に、おれはなんにもわかっていないという結論さ!」

ジム・トンプスンが全然文庫になってないというのも不思議な話だ。この手の作品を
最初に評価したのはフランスだった。(ドゥルーズも若い頃「セリ・ノワールの哲学」
という文章を書いている)。それをヌーヴェル・ヴァーグがアメリカ映画礼賛という
かたちで継承していったのだが、タランティーノが活躍する時代になっても、パルプ・
フィクションの評価はまだまだということらしい。

トーキントン探偵社=ピンカートン探偵社についてはもう少し研究する必要あり。

---

相変わらずいらいらする事件が多い。というか、理解不能なことが。

ナベツネの会長復帰。意味不明だ。そもそも他のオーナーたちが情けない。要するに、
ナベツネがいないと、なにもできないのだ。このニュースを聞いたときは、XTCの 
"Here Comes President Kill Again" の最後の部分をつい思い出してしまった。

Hooray, everything's great. Now president Kill is dead. 
Hooray I'll bet you can't wait, to vote for president Kill instead...

ヴァージンの歌詞カードのこの部分の(というかこのアルバム全体の)訳はめちゃく
ちゃで、それこそ意味不明。ここは、最悪の大統領キルが死んで大衆は歓呼するのだ
が、結局、こともあろうにキル大統領にまた投票してしまうという、非常に皮肉な結
末を歌っている。パパ・ブッシュの湾岸戦争のあとに、息子ブッシュがイラク戦争を
起こしたときも、この曲のことが頭に浮かんだものだ。このアルバム自体はそんなに
好きでもないのだけれど、歌詞はどれもなかなか奥深い。翻訳がひどすぎるのが残念
だが。

6月26日
▽ジム・トンプスン『ポップ1280』

昨日寝る前に、買ったまましばらくほったらかしてあったジム・トンプスンの『ポッ
プ1280』を読み始める。少しだけ読んで寝るつもりだったのに、つい150ページほど
読み進めてしまう。物語は同じ作者の『内なる殺人者』と非常に似ている。ほとんど
双生児と言っていいくらいだ。

タイトルの「ポップ1280」とは、人口が1280人という意味。そんな小さな田舎町ポッ
ツ郡の保安官ニック・コーリーが、この小説の語り手でありまた主人公だ。彼は、
『内なる殺人者』の主人公ルー・フォード同様、町の人からはちょっと頭は足りない
が善良で人畜無害なやつと思われている。が、彼は実は非常に頭が切れる男で、しか
も最悪なのは、狂っていることだ。ルー・フォードもそうだったが、ニック・コーリー
も演技者、本能的な演技者である。せいぜい淫売宿のひもから賄賂をもらうぐらいが
関の山だったこの「凡庸な善人」が、突然堰を切ったように連続殺人を引き起こす。
だれも彼がそんなゆがんだ性格の持ち主であるとは思っていない。だから簡単にだま
されて、殺されてゆく。『内なる殺人者』の主人公同様に、なにが彼を動かしている
のかは、今ひとつよくわからない。それが不気味でもあり、また魅力でもある。

翻訳がいささか平板な印象を与えるのが残念だ。


2005年6月5日
▽マーク・ロブソン『殴られる男』

ハンフリー・ボガート主演のボクシング映画の傑作。マーク・ロブソンはいかにも編
集者上がりの監督らしいというのだろうか、たしかにそつのない映画は撮るのだけれ
ど、どうも際だった作家性に乏しく思えて、いまいち好きになれない監督だ。とはい
え、『チャンピオン』、『逆転』などの代表作をまだ見ていないから、あまり早く結
論を出さない方がいいだろう。

実際、『キャット・ピープル』の製作者ヴァル・リュートンのプロデュースによる、
初期の『恐怖の精神病院』や『吸血鬼ボボラカ』などは、ホラー映画の傑作といって
よく、忘れがたいし、今度初めて見た『殴られる男』(57)も、なかなかの傑作だっ
た。原題の "The harder they fall" とは、"The bigger they are, the harder 
they fall." (「体がデカけりゃ、そのぶん派手に倒れる」ぐらいの意)という表現
から。巨体だが心優しいボクサーを通して、腐敗したボクシング界が描かれる。テー
マ的には、エイブラハム・ポロンスキーの『苦い報酬』などを思い出させる作品だ。

ハンフリー・ボガートは、金のために八百長試合に荷担したものの、良心の呵責に苦
しむ新聞記者を演じて、相変わらずすばらしいのだが、この映画では、そんなふうに
悩む彼を尻目にかけて、ボクサーを食い物にしてひたすら金儲けに走るマネージャー
を演じているロッド・スタイガー(最近惜しくも亡くなった)が、ボガート以上に圧
倒的な存在感を見せている。わたしがこの映画が好きなのは、ひとえに彼の演技に惚
れたからだ。

この作品は、ボガートの遺作となったことでも知られる。ちなみに、『勝手にしやが
れ』で、映画館に張られていたボガートの写真は、この映画のもの。ベルモンドがそ
の写真に向けてたばこの煙を吹き付けるシーンがある。このときすでにボガートはな
くなっていた。(昔の記憶なので、要確認)。

この機会に、ボクシング映画のベスト10を作ってみた。

『鉄腕ジム』
『左側に気をつけろ』
『どついたるねん』
『街の灯』
『罠』
『拳闘屋キートン』
『ファット・シティ』
『殴られる男』
『静かなる男』 (ボクシングというより、殴り合いの映画です)
『ゴダールの探偵』(10本目が思い浮かばなかったので)

[そういえば『ボディ・アンド・ソウル』があったなとか、『キッズ・リターン』も
ボクシング映画といえないこともないな、などとあとになって考える。このときは
『ミリオンダラー・ベイビー』のことはまったく眼中になかった。まだ見ていなかっ
たからだが、結局十本目はこの映画のために開けてあったのだ。]


2005年6月3日
▽ウェス・アンダーソン『ライフ・アクアティック』

『天才マックスの世界』で、マックス青年は図書館の本に書き込まれたジャック=イ
ヴ・クストーの言葉をきっかけに、美人教師と知りあって彼女に恋し、その恋愛沙汰
が原因となって退学処分となり、最後には海洋博物館を作るに至るのだった。『ライ
フ・アクアティック』はそのクストーに捧げられている。『天才マックスの世界』で
は教室におかれた小さな水槽にミニチュア化されていたにすぎなかった海が、まさに
この映画の舞台である。

この監督の映画を一本でも見たことのあるものならば、たとえクレジットを見なくと
も、『ライフ・アクアティック』がだれの映画か一目でわかるだろう。例によって、
ビロードのカーテンによって全体が細かく章分けされ、人物や建物は主に正面から距
離を置いてとらえられる。ベラフォンテ号の巨大な断面セットを映し出すショットは、
まさにアンダーソン的である。『天才マックスの世界』や『ザ・ロイヤル・テネンバ
ウムズ』の重要なテーマの一つだった芝居は、ここでは映画に置き換えられている。
イタリアでの公開試写にはじまり、クストーの海洋映画もどきを撮っている探検隊
「チーム・ズィスー」の冒険を描くこの映画は、ある意味、ウェス・アンダーソン版
『81/2』であるといってもいい。巨大な船のセットはチネチッタで撮影されたという
し、監督がフェリーニを意識していただろうことはまず間違いないだろう。

ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、アンジェリカ・ヒューストン、シーモア・
カッセルなど、ウェス・アンダーソン作品の常連たち、ウィレム・デフォー、ジェフ・
ゴールドブラムの新顔、いずれの俳優が演じる人物も、相変わらずエキセントリック
だ。

ウェス・アンダーソンの音楽センスは抜群で、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』で
は音楽が圧倒的な存在感を見せていた。この作品では、ブラジリアン・ソウルのカリ
スマ、セウ・ジョルジュがデイヴィッド・ボウイのナンバーをポルトガル語で歌う場
面が、あたかもばらばらなエピソードをつなぐ蝶番のように各所に挿入されている。
ディーヴォのどこかレトロな電子音楽もいい。

『天才マックスの世界』は、最後に擬似的な親子が成立するところで終わり、『ザ・
ロイヤル・テネンバウムズ』は、崩壊した家族が緩やかに再生してゆく姿を描いてい
た。『ライフ・アクアティック』で描かれるのは、父による子の認知の物語を中心に
した、船=映画のクルーという疑似家族にも似た関係である。ただ、ビル・マーレイ
とオーウェン・ウィルソンの関係は、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のジーン・
ハックマンと彼の子供たちとの関係ほど説得力はない。映画全体としても、『ザ・ロ
イヤル・テネンバウムズ』ほど成功していないように思えるのはなぜだろうか。ひょっ
とするとアクション・アドヴェンチャー的なものはこの監督にはあまり 向いていな
いのかもしれない(未見だが、処女作の『アンソニーのハッピー・モーテル』Bottle 
Rocket はその手の映画のようなのだが)。あるいは、不可測な事態を引き寄せてし
まう海という場所のなせる技だったのか・・・。

2005年5月25日
▽キン・フー『大酔侠』

総督の息子が賊にとらえられ、交換条件として賊の首領の解放を要求してくる。息子
の妹が一人で兄の救出に向かう。武術の達人の乞食剣士が彼女を助ける。キン・フー
最初期の作品、そして彼の数ある傑作の一つ。すでにしてキン・フーの世界はほぼ完
成している。

客棧(宿屋)での立ち回りのシーン。キン・フーの映画を見ていると、とても人間が
演じているとは思えない瞬間がたびたびある。まるでサルが演じているみたいだ。サ
ルでなければあんなに素早く岩山を駆け上がれるわけがないし(『忠烈図』)、竹林
のなかを飛び回ることもできない(『侠女』)。しかし、あんなに美しく舞うように
剣を振りかざして大勢を切り倒していくことなど、サルにはとうていできない芸当だ。
食堂は吹き抜けになっていて、二階の廊下から一階が見下ろせるかたちになっている
(たしか『龍門客棧』の宿屋も同じ構造だったはず)。キン・フーにとって客棧は死
闘が演じられる場所と決まっているらしい。飛んできた矢を箸で掴まえる場面が、た
しか『龍門客棧』のワン・シーンにあったと思うが、『大酔侠』の宿屋でも超絶的な
武芸が披露される。それを見せるのがただの小娘(デビューしたてのチェン・ペイペ
イ)だというのがいい。チェン・ペイペイはこの映画で一挙にスターダムにのし上がっ
たが、人気絶頂期にあっさりと引退。いまは娘に演技を教えていて、『大酔侠』の続
編を娘主演で撮る計画を練っているらしい。

客棧の空間構造は西部劇のサロンに似ている。それだけでなくこの映画全体の空間設
計と物語構造を、西部劇と比較してみたい誘惑に駆られる。

キャメラは西本正。北京語。キン・フーはひたすら北京語にこだわった。ジャッキー・
チェンが子役ででているらしいが、確認できなかった。

2005年5月22日
▽フェリーニ『ボイス・オブ・ムーン』

月と井戸。フェリーニ的な上昇と下降の運動にふさわしいデコール。共同墓地のコン
クリートの屋根にあいた穴。死者たちの世界とつながっていることを一瞬期待させる
が、それはただの穴にすぎない。ポストモダン様式の教会。『インテルビスタ』同様
ここにも日本人観光客の姿が。地下の「地獄」とつながっているマンホールから現れ
た男は、今度は大型のクレーン車に乗って現れる。アンテナの林立する屋根のシーン
(実は兄弟の兄の方。弟は月が世界を監視するスパイだと思いこみ、なんとかして捕
獲しようと思っている)。片思いの女の靴を片方だけ肌身離さず持ち歩く男(ディス
コのシンデレラの場面へ)。

被害妄想の元知事。ニョッキ祭(といえばヴェローナが有名だが、ここはどう見ても
ヴェローナには見えない)。

「生きるよりも覚えている方がいい。どちらも同じことだ」

ざわめきのなかからメッセージを聞き分けること。ディスコ・ミュージックが突然停
止し、ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」が流れるなか元知事と彼の不倫
相手(?)が踊る場面。同時に、シンデレラの靴はどの女性の足にもぴったり合い、
女たちはすべて一人なのだという啓示をベニーニは得る。若者文化へのアンヴィヴァ
レントな眼差し。

地元では新しくできるテレビ局が話題になっている。ベニーニの生家の子供時代のま
ま残っている空っぽの部屋は、妻に離別されたベニーニの友人の空っぽになった部屋
とつながっている。友人はベニーニに月が捕獲されたことを伝える。ここから映画は
さらにもまして荒唐無稽になってゆく。月の捕獲は広場におかれた大型のプロジェク
ターにテレビ中継される。『甘い生活』に描かれた聖母マリアの顕現のヴァリエーショ
ン。「すでにすべては明らかなのです」と語る聖職者の超然とした態度に業を煮やし
た観衆の一人が、プロジェクターの月に向かって発砲し、たちまち広場は大混乱に陥
る。

2005年5月16日
▽ 土本典昭覚書4

『水俣─患者さんとその世界─』や『不知火海』、
あるいは『海とお月さまたち』などの「水俣」シリーズであれ、それ以外の『海盗り
─下北半島・浜関根─』であれ、土本の描く海の映画はいつも、日没時の海の沖合に
浮かぶ漁船を逆光でとらえた画面でおわっていたような気がする。海の映画作家土本
典昭。

『水俣─患者さんとその世界─』(71)は、わたしがたぶん最初に出会った土本典昭
の映画だ。大学の2,3回生ぐらいの時だったろうか。ラストの大阪チッソ株主総会
での会社側と患者たちとの壮絶なやり合いは、長いあいだ幻のように頭にこびりつい
ていた。今回ずいぶん久しぶりに見直してみて、こんなに静かな映画だったかと驚い
た。たしかに、巡礼姿で総会に参加した患者たちが、鈴を打ち鳴らし御詠歌を唱えな
がらチッソの社長に詰め寄り、会場全体が怒号に包まれる場面はいま見てもすごい迫
力である。ついついこういうわかりやすい場面に目がいってしまいがちだが、そこに
至るまでに水俣の人たちの生活の姿が丹念に描かれているからこそあれだけの感動を
呼ぶのだろう。それにしてもこの会社はひどい。チッソはいまのJRだ。チッソが最
初表明した、戦争中海底に沈んだ爆弾が原因だという姑息な説など、まるでJRの置
き石説ではないか。

こうやって「水俣」シリーズを短期間で何本も立て続けに見ているうちに、どの場面
がどの映画のものだったのかが次第に曖昧になってくる。それと同時にまさに「水俣
の世界」としか言い様のないものが浮かび上がってくる。30年以上にわたる時間のな
かで、遅すぎる感はあるものの、水俣病に向けられる社会の眼は徐々に変化してきた。
土本のキャメラはその変化にときには荷担しつつそれをつぶさに記録し、同時に変わ
ることなく存在し続ける生活のリズムをとらえてゆく。

『不知火海』(75):「不知火海」。それにしても美しい名前だ。この見た目には風
光明媚な海が工場から排出された有機水銀によって汚染されてしまっている。水俣病
が確認されてから20年近くたつというのに、不知火海の略図に記された水銀の濃度を
示す四角や丸の記号が、汚染の規模の大きさを端的に物語る。汚染の激しかった水俣
湾では、漁師の手で魚を捕っては捨てる作業が続いている。しかしその対岸では、
920ppmという人類最高の毛髪水銀量が確認されながら、何ら対策がとられていない。
食卓に積まれる魚の山を無造作にとって食べる人々を見ていると、思わず大丈夫かと
思ってしまう。しかし、彼らに魚を捕るな、食べるなというのは、死ねというのと同
じことだ。

海を間近にした岩場で、胎児性の少女が『医学としての水俣病』にも出てきた医者に
いろいろな質問を投げかける。「脳を手術したら治らない?」 答えようのない質問
に、医者は答えを濁すしかない。ふたりの応答はかみ合っているようには見えず、そ
の様子をとらえつづけていたキャメラはもどかしげにパンしてふたりに背を向け、岸
を映し出してから再びふたりのほうに戻ってくる。少女の後ろで、われわれには顔な
じみの同じく胎児性の少年が車椅子に無言で座っている。患者の内面世界を一瞬かい
ま見せる希有な場面である。

『海とお月さまたち』(80):実はこの作品が今回の回顧展のなかで一番見たかった。
見ていていつもの土本作品とはなにかが違うのだが、それがなんなのかよくわからな
かった。あとでこれが低学年の子供向けに作られた注文映画だとわかって、なるほど
そうだったかと思った。水俣の海を描きながら、この映画にはどこか童話のような雰
囲気があるのだ。ここでは太陽ではなく、絶えず姿を変え、潮の満ち引きさえも支配
する月が、同じように休みなく表情を変えつづける海のパートナーとして描かれる。
海と人間との調和に満ちた関係をこれほど美しく描いた作品は他に類がないだろう。
あらゆるものが慎ましく自分の場所に収まりながらその存在を主張している。海の様々
な生物が描かれるが、ここに描かれているのはむしろ植物的ともいえる静謐な世界で
ある。

船の上でひとり釣り糸を握る漁師。あるいは夜の海で、おばあさんのこぐ船でホコ突
き漁をする老人。土本版『極北のナヌーク』といったところか。さりげなく撮られて
いるが、恐ろしい技術の高さだ。釣り糸に食いついた魚をとらえていた水中キャメラ
が、魚が釣り上げられる瞬間に水面にあがるタイミングなど、プロにしかできない技
があちこちで見られる。

2005年5月14日
▽トラン・アン・ユン『夏至』

この監督の映画をあまりおもしろいと
思ったことはなくて、この作品もテレビで見たのだが、集中できずに他のことをしな
がらいい加減に見てしまった。 「映像がきれい」という観客のコメントが聞けそう
な映画である。

街には緑があふれ、窓から見える庭にも緑が生い茂って室内まであふれ込んできそう
だ。 所々はげ落ちた壁は色が一様でなく、時に現代絵画のようにも見える。窓辺や
家具の上に鉢植えの大きな葉をつけた植物が置かれ、部屋のしきり代わりになってい
るうすぎぬのカーテンや長いビーズの暖簾が、風が吹いたり人が通るたびに揺れる。
こういうのを「ヴェトナム的」と呼べるのかどうかわからないが、こうしたエキゾチッ
クな室内装飾がこの作家の評価につながっているのはたしかだろう。実際こうしたエ
キゾチシズムを取り去ってしまえばこの作品にはあとなにが残るのかはなはだ疑問で
ある。

ルー・リードの曲(Coney Island Baby, Pale Blue Eyes) で目覚める朝のけだるさ。
こういうのがほんとはヴェトナムなんかに興味のない欧米人に受けたりするのだろう。

2005年5月7日 
▽土本典昭覚書2

今日シネ・ヌーヴォで見た『海盗り──下北半島・浜関根』は紛れもない傑作だった。
が、それはまたあとで書くとして、まずは先日見た『医学としての水俣病』三部作
(74)のことを書こう。冒頭、静かに波立つ海をとらえたショット。オフで漁師の声
が聞こえる。ショットが変わると小舟に乗った漁師に、インタビュアー(土本)が話
しかけている。それまではほとんど決して画面に現れることのなかったスタッフの姿
がキャメラに捉えられている。この作品でなにかが変わりはじめたのかもしれないと
いう予感。

この4時間半にも及ぶ大作に映し出されているものは結局なんなのか。「医学として
の水俣病」。一見平凡なタイトルであるが、この題はくせ者かもしれない。水俣病が
ただの病気であるなら、「医学としての水俣病」という言い回しは変といえば変だ。
医学としての水俣病の他にいったいなにがあるというのか。そもそも、このフィルム
に写っているものは「患者」なのかそれとも「人間」なのか。一人の人間が「人間」
であると同時に「患者」でもあるということ。土本はむろんその人のなかの「人間」
を捉えようとしているのだが、「患者」として認定してもらえないことで苦しんでい
る人がたくさんいるという現実が一方にある。だからこそ、「医学としての水俣病」
をとことん追いつめてゆかなければならないのだ。

とりわけ第三部が興味深い。おびただしい図やグラフによって可視化されてゆく水俣
病。その一方で、症状の基準を満たしていないということで「水俣病」として認定さ
れない人たち。不可視の社会病としての水俣病。

2005年5月3日
▽土本典昭覚書

大阪シネ・ヌーヴォに「土本典昭フィルモグラフィー展2005」を見に行く。今日2日
は『パルチザン前史』『留学生チュア スイ リン』『水俣の子は生きている』『ある
機関助士』『ドキュメント路上』を見る。『留学生チュア スイ リン』『水俣の子は
生きている』『ある機関助士』は初見だ。いずれも60年代に撮られた土本の最初期の
作品に当たる。同録で撮られていないので口の動きとせりふのズレが結構気になる。
『留学生チュア スイ リン』のような作品の場合、同録で撮られていないことでずい
ぶん損をしているような気がする。あの千葉大の学長のふざけた態度も同録で撮られ
ていたならいっそうエモーションをかき立てなのではないかと思うと残念だ。日本で
同録が可能な16ミリ・キャメラが導入されたのは60年末というから、これは致し方な
かったのだろう。

『パルチザン前史』(69):ヘルメットをかぶった京大の学生たちが夜の暗いキャン
パスで行進をつづけるシーンで始まり、エンドクレジットに行進の足跡がかぶさって
聞こえてくるところでおわる「闘争」の記録。とはいえ土本の視線はいたって冷静だ。
最後のデモの場面で、突然上映中の映写機のたてるカタカタという音にかぶさって、
デモのやり方を批評しあう声が聞こえてくる。おそらくはデモを行った学生が、いま
われわれ観客が目にしている映像をデモの後で上映しながら述べたコメントを、その
映像にかぶせているのだ。

その最後の百万遍の交差点での激しいデモの場面。交差点は今よりもとても広々とし
ているように思える。市電の停車場があり、線路も走っているようなので、さっきネッ
トで調べてみたらこのころはまだ市電が走っていたらしい。この交差点は何度も通っ
たことがあるのだが、かつてここに市電が走っていたことを、恥ずかしながらいま初
めて知った。これからはここを通るたびに『パルチザン前史』を思い出すことになる
だろう。

『パルチザン前史』は「火」と「水」の映画だ。政治闘争を熱く語る学生たちは火炎
瓶という手段を使う。この映画のなかには、火炎瓶の作り方を事細かに説明し、学生
が大学のビルに向かってそれを投げつけて実演してみせるところまでを映し出したシー
ンが含まれる。百万遍のデモでは、車が激しく燃え上がる。それに対して警察と機動
隊がいつも使う手段はホースによる放水だ(エイゼンシュテインの『ストライキ』を
思い出せ)。京大の時計塔や、後半描かれる阪大での闘争で大学の校舎のてっぺんに
立てこもった学生たちに向かって、機動隊がホースで激しく放水攻撃を行う。上空を
旋回するヘリコプターのプロペラのたてるぱたぱたという音が、なにかこの場面を夢
のようなものに変えている。

坂道を撮った固定と移動による二つのショット。美しい。当たり前のことだが(本当
に当たり前か?)、土本のドキュメンタリーにはショットが存在する。

『留学生チュア スイ リン』(65):「われわれ」(あるいは「わたし」だったかも
しれない)という一人称によるナレーション。ただしスタッフはキャメラには写らな
い。『パルチザン前史』は字幕だけでナレーションは使われていなかったはず。政治
活動を理由に千葉大学を除籍させられた英領マラヤ(現マレーシア)の留学生の闘争
を描く。大学側の官僚のうさんくささが彼らをいい悪役にしたててくれている。

『水俣の子は生きている』(65):「水俣」シリーズの中ではどちらかというとマイ
ナーな部類に入る短編。水俣病のケースワーカーとして実習に参加した女子大生の一
週間の記録。彼女のナレーションで進む。ビデオ(もしくはビデオをフィルムに焼い
たもの)による上映。後で受付に確認すると、ネガがなくなってしまって残っていな
いとのこと。フィルムとビデオの違いもわからない人が多いのかもしれないが、こう
いう場合はせめて上映前に説明を行ってほしい。

『ある機関助士』(62):土本の記念すべき映画デビュー作。カラーだったので少々
びっくりした。駅を俯瞰するショットなど、非常に美しい。62年、三河島で起きた大
事故の印象を一掃するため、国鉄当局が鉄道の安産性をPRするために企画した映画。
この事故は機関士の赤信号見落としによる脱線・衝突と、その後の安全対策の不備に
よる二重衝突により死者160人の大惨事となった。ATSはこの事故の教訓から取り付け
られるようになったという。尼崎でJRの大惨事があった直後だけに、あまりにタイミ
ングよすぎる上映になにか予言的なものさえ感じてしまう。JRの腐りきった体質は今
度のことでほぼ明らかとなったが、スポンサーの意図とは別なところでこの映画のな
かにもその萌芽のようなものを見て取れる。事故の多くはダイヤの乱れによるもので、
そのために定刻通りに列車を発着させることが重要だ、列車が遅れたときには規定の
速度内でスピードを上げることも必要だ、と機関助士のナレーションが語る。列車が
脱線などで停止したときの安全訓練で、衝突事故を避けるために発煙筒を焚いて線路
を駆ける機関助士を移動撮影でキャメラが追いかける。スタッフ(土本?)がインタ
ビューしている場面(機関助士の運転中の健康状態を調べるために、裸の体に電極を
取り付けるところ)もあるが、キャメラには写らない。

『ドキュメント 路上』(64):最初この作品は『パルチザン前史』の後で撮られた
ものと思いこんでいたので、国家権力と戦う学生たちを描いた映画の後で、警察庁を
スポンサーにした映画をどうやって撮ったのかと思っていたのだが、やっぱり逆の順
番だった。不思議な映画である。最後の衝突の場面などが一番わかりやすいところだ
が、明らかに演出している場面も多い。ナレーションはないし、せりふもほとんどな
く、ドキュメンタリーという範疇を超えて、たとえば『ベルリン大都会交響楽』といっ
た映画と通じ合う部分もある。タクシー会社の前の坂道。キャメラの上下移動の多用。
一人のタクシー運転手とその家族が一応この映画の中心と考えていいのかもしれない
が、実際にはかなりとりとめのない映像の連続である。日活ニュー・アクション映画
に流れていそうなモダンな曲が使われている。


2005年4月30日

少女から大人の女への成長を描き、結婚したヒロインが着物を脱がされる場面で終わ
る幸田文の『きもの』は見事に完結しているように思えるのだが、作者自身はこれを
未完と考えていたようだ。

2005年4月24日
▽幸田文『きもの』

幸田文の有名な小説。前から好きな作家だったのだが、こういう機会でもなければ読
まなかったかもしれない。『崩れ』や『番茶菓子』などのエッセイものばかり読んで
いたので、小説を読むのはこれが初めてだ。小説のほうもとてもおもしろい。あの凛
とした文章は小説でも相変わらずで、読んでいて気持ちがいい。おもしろい小説はい
までもたくさんあるだろうが、こんな風に気持ちのいい文章を書ける人はもう少なく
なった。「文は人なり」という怪しげな言葉があるが、こういう文章を読んでいると
書き手の姿がありありと目に浮かんでくるのもたしかだ。

幸田文の小説を原作にした映画には、『おとうと』(市川昆)と『流れる』(成瀬巳
喜男)があるが、この『きもの』もぜひ誰かに映画化してほしかった。過去形で書く
のは、いまこれを映画にできそうな監督が思い浮かばないからだ。凡庸な監督がこれ
を映画にしようと思いつかなかったことだけでもありがたい。さて俳優のほうは? 
きかん気の少女であるヒロインのるつ子役には高峰秀子(の少女時代)。残る三姉妹
の長女と次女役には誰がいいだろう? 母親役には木暮美千代では我が強すぎるから、
田中絹代ぐらいが適当か。などと死んだ女優の顔ばかりが思い浮かぶ。



┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃03┃DVD Chronicles
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

お休みです。



┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃04┃Postscript:
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

第1号を出してからずいぶんになる。調べてみたら約3ヶ月ぶりだった。これは平謝
りに謝るしかないが、少し言い訳させていただきたい。最初は、ホームページに書い
ている日記をそのままメルマガにするだけだから楽勝だと考えていたが、結局同じ内
容のことをホームページとメルマガでやるのは二度手間だと思うと、わざわざメルマ
ガにするのがつい面倒くさくなってしまった、というのが真相だ。わたしのような怠
惰な人間には、むしろホームページに書いているのとはまったく別のことをメルマガ
にするという形のほうが、やっぱりよかったらしい。

なんだ、結局おまえの怠惰のせいじゃないかといわれれば、返す言葉もない。すいま
せん。

---

というわけで、突然ですが、このメルマガは今号で最後になります。初号で、あまり
長くつづけるつもりはないと書きましたが、こんなに早く終わることになるとは思い
ませんでした。もっとも、このメルマガはホームページで書いていることをほとんど
そのまま転載しているだけなので、興味がある人はホームページを見に来てください。

それでは。またどこかで。



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【編集】 井上正昭
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