小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


全て表示する >

[ibunko]アカシア少女探偵団 No.108

2005/08/12

■アカシア探偵団ブログ■http://blog.melma.com/00134063/
■■あいぶんこブログ■■http://blog.livedoor.jp/ibunko/
┏━━━━━━━━━━━━
┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
┗━━━━━━━━━━━━

 それはむしろ、蹴りだされたというべきだった。椛島は入り口からふらふらと泳ぎでたかと思うと、ぶざまに地面になげだされた。
 少女たちは声もだせず、ただからだを固くして、崖の下からそれを見つめた。
「ばかやろう! 嘘もやすみやすみつきやがれ!」
 椛島のあとから、中国人たちがでてきた。先頭にいたのは、小太りの小さな男だった。
「あいつ……」
 月華と玉玲は顔を見あわせて、うなずきあった。市場で見た、あの男だ。
 六人は、息をひそめて、なりゆきを見守った。
「どこに金を隠した!」
 椛島は、男たちにこづきまわされて、地面を転がりまわった。
「ぼ、僕は、ただ、ゴドノフさんにいわれて、包みをもってきただけです」
「包みをまちがえたとでもいうのかい、兄ちゃん」
「日本人は信用ならねえ。途中でねこばばしちまったにちがいない」
 小太りの男は、あたりに響く声で、
「みんな、出てこい! 日本人が俺たちをだまそうとしているぞ!」
 とふれまわった。
 やがて、じわじわと人が増えてきた。それにつれて、騒然とした空気が漂いはじめた。
 空気を察して、月華が、
「その小路の陰へはいって、ようすをみよう」
 と少女たちにささやいた。六人はいそいで、掘っ建て小屋の隙間のような、小路にもぐりこんだ。
「陳、どうしたんだ」
 だれかが男にたずねた。
「この日本人が、共産党から俺たちに配られる予定だった金を、ねこばばした!」
 小太りの男が、まわりじゅうにきこえるように、大声をあげた。
「共産党だってえ?」
 月華は、わけがわからんといった顔になった。
 その間にも人垣は厚くなり、陳の声に応じて、椛島への罵声が飛び交いはじめた。
「ち、ちがう、そんなこと、してない!」
 椛島の必死の抗弁も、かきけされてしまう。
「誤解だ、信じてくれ」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにして、椛島は陳にとりすがった。
「だれがおまえのことなんか信じるもんか。打倒日本! 共産党万歳! 虐げられた俺たちを救ってくれるのは、共産党だけだ!」
 こぶしをふりあげながら、陳は演説した。
 どよめきがおこった。

---------- 
来週前半、メルマ!がメンテナンスを行なうため発行をお休みします。
次号No.109は18日に発行予定です。
---------- 
※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
---------- 
■解除・登録⇒ http://ibunko.com/text/mbook/acacia.html
□問い合わせ⇒ acacia@ibunko.com
■制作・発行⇒ アイ文庫(有) http://ibunko.com

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。