小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.107

2005/08/11

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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 運転手はロシア人だった。ゴドノフと運転手は、ロシア語でひそひそと話をした。
 車は裏通りを選んで走りつづけ、やがて寺児溝地区にはいった。
 並ぶ住宅も、はじめのうちこそふつうの住宅だったが、奥へ進むにつれ、しだいに粗末なものに変わっていく。屋根に石を載せ、いまにも潰れそうにみえるバラックが見え隠れした。
 少女たちにとっては立ち入ることさえ許されない地区に、ついにはいってしまった。後部座席を、不安げな空気が包みこんだ。
 車が停まった。
「このさきの家です」
 ゴドノフが指さした先をみると、小さな崖のうえに、へばりつくように建っている掘っ建て小屋が見えた。
 うながされて車をおり、千勢はあたりを見まわした。そこは寺児溝でも、もっとも貧しい苦力《クーリー》たちの住む地区のようだった。かろうじて屋根と壁とよべるようなものにかこまれた家が、並んでいた。
「用事がおわるまで、外で待っていてもらえますか。すぐに出てくるでしょうから」
 車のなかからゴドノフがいった。
「あの、外で待ってなきゃいけないんですか」
 千勢がおずおずときいた。
「ええ、すみませんね。わたしはまだ用事があるので、先に失礼しますよ」
「ええっ?」
 千勢が驚いているうちに、ゴドノフはさっさと車をだしてしまった。
「待って!」
 少女たちは車に追いすがったが、車はあっという間にふりきって、遠ざかってしまった。
「置いてけぼりにされるなんて」
 八重が泣きそうな顔でいった。
「しかたないわ、待ちましょう。椛島さんがでてきたら、路面電車ですぐに帰ればいいのよ」
 不安に押しつぶされそうになりながら、千勢が励ました。
 そのとき、掘っ建て小屋のほうから、怒鳴り声が、きこえてきた。
 少女たちは、不安そうに顔を見あわせ、崖の下へ走った。
 小屋から椛島がでてきた。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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