小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.105

2005/08/09

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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「冗談じゃありませんよ」
「たしかにいるんだから、ここに」
 婦人と月華はしばらく押し問答をしたが、やがて婦人は、怒ったように家にはいってしまった。
「月華さん……」
「ほんとうに見たんだよ、この家で」
「椛島さん、といったからじゃないの? 別の学生さんだったのかもしれないわ」
 千勢がいった。
 秀子があからさまに落胆したので、千勢はなにかなぐさめることばをさがした。
 そのとき、ふたたびドアがあいた。今度は男性だった。
「あ」
 玉玲が声をあげた。市場で、元役人を連れ去ったロシア人だったのだ。
「あなたがゴドノフさんなの?」
 玉玲がたずねた。
 男はぎょっとした顔で、玉玲をみた。
「あんたたち、市場で……」
「椛島さんをつれにきたんですけど」
 男の目がするどくなった。玉玲は、手のひらがじっとりと汗ばんでくるのを感じた。
「椛島は、ここにはもういない」
 ほら、やっぱりいただろ、と月華が得意そうな顔をした。
「どこへいったんですか」
 秀子が日本語でたずねた。
 男は、わからない、といった顔で首をかしげた。
「ちょっと、あんた日本語わかるんだろ。なんでわからないふりをするんだ」
 月華がいった。
 男は一瞬からだをこわばらせて、月華を見つめた。緊迫したものを感じ、月華は思わず身構えた。
 男はすぐに表情をやわらげ、
「いや、そんなつもりは。寺児溝ですよ」
 と日本語でいった。
「どうしてそんなところへ」
 千勢はぎょっとした。寺児溝は、大連の東のはずれ、貧しい中国人労働者たちが多く住む地区だ。もちろん、千勢たちが足をふみいれたことはないし、仮にいくといえば、大人たちに止められるにきまっているような、治安のよくない場所ときいている。
「ちょっと使いを頼んだんですよ。きみたちがいけば、喜ぶでしょう。車を用意してあげるから、ちょっと待っていたまえ」
 男は家のなかにはいった。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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