小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.093

2005/07/22

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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「椛島さんの知り合いって、どういう方なの」
 気をとりなおして、千勢は秀子にたずねた。秀子は首をふった。
「日本でロシア語を習っていた先生ということしか……」
「じゃあ、日本語がわかるの?」
 玉玲がきいた。
「ええ、そのようよ。故国へ帰ったときいていたのが、先日、大連であって驚いた、といってたわ」
「日本語のわかるロシア人なら、ひとり、知らないでもないけど」
 玉玲がいった。
「知ってるの?」
 秀子が驚いて、玉玲を見つめた。
「知り合いってわけじゃないけど、昨日、見かけたの。でもその人かどうかなんて、わからないわ」
「そりゃそうね。わたしだって、見てもわからないもの」
 三人は困ったように顔を見あわせた。
「でも、そのロシア人が、椛島さんの知り合いのロシア人を知ってるかもしれないわよね。ロシア人同士ってことで」
 千勢が励ますようにいった。
「そうね。今のところ、なにもわからないんだから、そのロシア人をさがしてきくしか、方法を思いつかないわ」
 秀子がいった。玉玲はうなずいた。
「わかった。もうすぐ夕飯の買い出しの時間だから、市場で月華さんにきいてみる。この時間だと、つかまるかどうかわからないけど」
「ありがと、玲ちゃん!」
「おねがい、玉玲さん!」
 玉玲は両手をふたりに握られ、照れたように笑った。
「秀子さん、このまま家に帰る?」
 秀子は首をふった。
「そういうわけにはいかないわ。椛島さんの無事を確かめてからよ。家に戻ってしまったら、もう会うこともできないでしょうから」
 千勢は苦しげな顔で、秀子を見つめた。
「家に帰りたくないのよね……でも」
 千勢は自信たっぷりにつづけた。
「駆け落ちのチャンスは、これからだってあるわ。わたしたちがいるから、次はぜったいだいじょうぶよ」
「まあ」
 秀子は千勢をまじまじと見て、ぷっとふきだした。
「駆け落ちなんて……でもいいわ、頼もしいわ、有島さん」
 秀子は力強いまなざしで、千勢を見ながら、いった。
「わたし、星ヶ浦でいろいろ考えてたの。これからどうするか。あなたがたの話をきいてから、家に帰るしかないだろうとは思ってた。でも、もう少し大きくなったら、仕事をさがして、堂々と家を出るわ。もう、だれにも迷惑はかけない」
 そういう秀子は、すでに大人のような顔つきになっていた。千勢はまぶしい思いで、秀子を見つめた。そして、やっぱり自分はまだまだ子どもだ、と思ったのだった。


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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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