小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.090

2005/07/19

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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「ねえ、お兄さま……」
 千勢はおずおずと口をひらいた。
「いつになったら、外へ出してもらえるかしら」
 直武はあっさりと、
「おまえが本気で反省したとわかってもらえないことには、だめだな」
 といった。
「わたし、もうじゅうぶん反省したわ」
 千勢はむっとしていった。
「自分でいってるだけじゃ、だめなんだよ。親に心配かけるなんて、子としてあるまじきことだからな。今回のことは、おまえが自覚してる以上に重要なことなんだぞ。それに、おまえが動きまわったからって、なにができるわけでもないんだからな」
「わたしだって、すごい働きをしたのに」
 秀子発見を思い、ぷっと頬をふくらませて、千勢はつぶやいた。玉玲がそしらぬ顔で、千勢のももを軽くつねった。
「なんだよ、働きって」
 直武が不審そうにいったので、千勢はあわてて、両手を顔の前でふった。
「ううん、なんでもない。でも、秀子さんが帰ってきたら、わたしも外で遊んでいいわよね?」
 秀子さんのことなどだして、直武が気づいたらどうする、と玉玲は焦ったが、直武は別のことを考えたようだった。
「うむ……秀子さんか。いったい誰につかまってるのか……」
「秀子さんのこと、親御さんは心配してるのかしら」
 ふと千勢がいった。む、と直武はつまった。
「当然だろう」
「でも、秀子さんの身を案じてるとは思えない」
「失礼なこと、いうんじゃない。ほかの家には、ほかの家の事情があるんだから」
 秀子は家にいたくなかったのだ。千勢の手紙を読んで、帰ってくる気になるだろうか。やにわに千勢は不安になった。

 土曜日。
 女学校で毎日のようにやっていた、美智子、八重との三者会議も、その日は帳面に新たに書くこともなく、もりあがらずに終わった。
「秀子さん、帰ってくるかしら」
 そのことばかりで、堂々めぐりをしていた。
 八重は帳面のページをくりながら、誤字などがないかを調べているようだったし、美智子は、秀子が帰ってきたらいっしょに歌舞伎座へいくんだと、これからの演目の予定表を熱心に見ていた。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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