小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.088

2005/07/14

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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「なにをするか!」
 日本人が怒鳴った。
「あやまらんか! それとも斬られたいか!」
 酔っ払いを抱きすくめたロシア人は、肩をすくめて首をふるばかりだ。
「ちっ、日本語がわからんのか」
 機械のように、なおも首をふりつづけるロシア人に、日本人は地面に唾をはいた。そのすきに、酔っ払いとロシア人は、そそくさと人ごみにまぎれてしまった。
「あいつ、日本語わかるくせに、うまく切り抜けたな」
 月華が笑った。玉玲は驚いた。
「月華さん、あのロシア人、知ってるの?」
「知り合いじゃないけど、あいつが最近、市場や浪速町をうろついてるのを見かけてたからね。それにこのまえは、日本人の学生と話していたのも見たもの」
 月華の裏ルートは、たしかに貴重な情報源だと、玉玲は考えた。
「ねえ、これから月華さんに会いたいと思ったら、どこへいけば会えるの」
 月華は警戒心をあらわにした。
「どういうことだい。あたしを警察にでもつきだそうってのかい」
「まさか!」
 あわてて玉玲はいった。
「そんなこと、ぜったいするもんですか。だいたい、月華さんが悪者だなんて、わたし思ってないわ。わたしたちを助けてくれた恩人だもの」
 月華は大きくうなずいた。
「そうさ。恩を仇でかえすようなことを、中国人がしちゃいけないよ」
「月華さんもね」
 月華は玉玲を軽くにらんだ。
「あんたもいうね」
 玉玲はにこっと笑って、話を続けた。
「わたしの友だちが、月華さんにききたいことがあるかもしれないから……そういうとき、どうすれば会えるかと思って」
「ただじゃ教えないよ」
 月華はいった。
「いまは小遣い銭ていどでも、ほしいときだからね。とくに相手が日本人なら、しっかりもらうもんはもらうよ」
「わかったわ、で、どこへいけばいい?」
「あたしに会いたければ、このまえあんたたちを連れていった屋台にきな」
「でも、遅い時間じゃないと、やってないでしょ」
「あそこの親爺は気まぐれだからね。日によって店開きの時間はちがうんだ。ま、運を頼むことだね」
 長居しちまった、そういうと月華は、さっと身をひるがえして人ごみに消えた。さよならもいえず、玉玲はしばらくつったったまま、月華の消えた方角をながめていた。


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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
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