小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.081

2005/07/05

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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「この前、大津邸で千勢ちゃんを警察につきだしたろ」
「そんな言いかたはよせ」
「それでどれだけ千勢ちゃんがいやな気持ちになったか、わかるか」
 直武ははっとして、顔を伏せた。
「この話をして、また千勢ちゃんが警察になにかきかれることになったら、俺はどれだけあやまってもあやまりきれんと思った。だから黙っていた。まあ、これは俺の勝手な考えだから、その点はおまえにあやまる。だが、おまえがもっと冷静に話をきけるやつなら、そして多少の融通をきかせることができるやつなら、千勢ちゃんだって、直接おまえに話したはずなんだ」
 劉生が話すあいだ、直武は、必死でなにかを耐えているようだった。やがて、顔を伏せたままぽつりと、
「すまなかった」
 といった。千勢と玉玲は、驚いて顔を見あわせた。
「おまえたちに、俺のせいでよけいな気をつかわせたんだな」
「もうちょっと、気楽に生きろよ。疲れちまうぜ」
 劉生が声をやわらげて、直武の肩をたたいた。劉生がさしだした右手を、直武はしっかりと握りかえした。
「さて……からまれた婦人が千勢だったとわかったところで、そのときのようすをくわしく教えてくれよ」
 直武が、さっきとはうってかわった穏やかな表情で、千勢にいった。
 千勢と玉玲は、かわるがわる、日曜の市場でのことを、直武に話してきかせた。
「その月華というのに話がきけるといいんだがな」
 直武がいうのに、
「軍人が問いただしても、話すとは思えんな」
 劉生がいった。
「もしまた会うことができたら、わたしがきいてみましょうか」
 玉玲がいった。直武はうれしそうに、
「そうか、やってくれるか」
 といった。
「でも、家を知ってるわけではないから、あんまり期待しないで。変にさがせば、あやしまれてしまうしね」
「そうだな……そこは玲ちゃんにまかせよう。だが、秀子嬢の身の安全を考えると、あまりのんびりはできんな」
 直武はくやしそうにいった。
「その紙片の内容も、知りたいものだ。宝物といっても、文化遺産だ。そんなものが地下に流出でもしたら、国家的損失だからな」
「どうせ日本のものじゃないでしょ」
 玉玲がいった。直武はいやそうな顔をした。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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