小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.079

2005/07/01

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
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┃   acacia@ibunko.com    
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十三

「もう、絶対に外へ出しませんからね!」
 千歳がびしっといった。
「いけないことをしたと反省してるならともかく、にやけたり、あぶないまねをしたり、先生にどう顔向けしたらいいやら、ほんとに……」
 怒りと困惑が先走るようで、千歳は手にしたハンカチをもみくちゃにした。
 まあまあ、と直周が千歳をなだめた。
「好奇心旺盛な年ごろなんだから、少しぐらいの逸脱は認めてやりたいが」
 そういいながら、直周は、恐い顔で千勢を見た。
「だが、反省をしないというのはいかん。反省のできない人間に、進歩はない」
「はい……」
 反省していないわけではないけど、とは思ったが、父親に口ごたえが許されるわけもなかった。
 食事室には、家族全員がそろっていた。
 直武は黙っていたが、顔をみれば、千勢に味方する気がないのはあきらかだった。
 こんなに心細い気持ちになるのは、初めてだった。いつも兄がどれだけ千勢をかばい、守ってきてくれたのか、思い知らされたような気がした。
 ノックの音がした。
「なんだね」
 直周がこたえると、玉玲の、
「劉生さんがきました」
 という声が、ドアの向こうからした。話が終わるまで、誰もはいらないようにといわれているのだ。それがますます、千勢を孤立無援の気分においやっていた。
 直武が、
「なんの用だ」
 といった。
「千勢ちゃんに呼ばれたと……」
 父と兄が千勢を見たので、千勢はこくんとうなずいた。
「いま家族会議の最中だ。いつまでかかるかわからないから、帰ってもらえ」
 直武が不機嫌そうにいった。
「だめ!」
 千勢があわてて叫んだ。
「お兄さまにお話ししたいことが……あの、劉生さんから」
「劉生から、俺に話してもらいたいことが、千勢にはある、ということか?」
 直武が整理した。
「そうなの……そうです」
 丁寧にこたえなおして、千勢は目で直周にすがりついた。
「お願い、少し時間をください」
 千勢の真剣な表情に、直周は、
「わかった。今日のことはきちんと反省するように。おまえの明日からの行動で判断させてもらう。玉玲、劉生くんをこちらへお通しして。わたしたちはもう休むから」
 といって立ちあがった。千歳はまだ叱りたりなさそうだったが、直周が目で制した。千歳もあきらめて、最後に千勢にきびしくも悲しげな視線を投げ、直周といっしょに食事室を出ていった。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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