小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


全て表示する >

[ibunko]アカシア少女探偵団 No.078

2005/06/30

■アカシア探偵団ブログ■http://blog.melma.com/00134063/
■■あいぶんこブログ■■http://blog.livedoor.jp/ibunko/
┏━━━━━━━━━━━━
┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
┗━━━━━━━━━━━━

「そうなのよ。遠足の途中でぬけだして、あやうく警察に通報されるところだったの」
 ぷりぷりした口調で千歳がいうので、千勢はうつむくしかなかった。
「おい、千勢、たのむよ、あんまり俺を心配させないでくれ」
 直武の愁い顔は、ますます深くなった。
「ごめんなさい……」
 千勢は悲しくなった。心配させるつもりはないのに。みんな勝手にわたしのことを心配しないで。でも、それが無理な願いだというのも、わかっていた。
「有島さん!」
 右側から、声がした。劉生だ。とたんに直武の顔がこわばった。
「あら、劉生さん」
 劉生は軽い足どりで、道をわたってきた。
「めずらしいですね、買い物ですか」
 窓をのぞきこんで、向こう側に直武が立っているのに気づいた。劉生は、いたずらを見つかったような顔になって、ちらっと千勢をみて、肩をすくめた。
「軍にはなかなか協力できなくて、もうしわけない。またなにか見つけたら、まっさきに教えるよ」
 劉生は声をかけたが、直武はむっとした顔で黙ったままだ。ふたりの間で座席にちぢこまりながら、千勢はなんとかしなくてはならない、と思った。
「劉生さん、あの……今夜……」
「え、なに?」
 消えいりそうな千勢の声をききとろうと、劉生が耳に手をあてると、
「千勢、劉生の仕事の邪魔をしちゃいかん」
 直武が恐い声でいった。
 千勢は黙った。
「さあ、いつまでもこんなところに停めていちゃいけません」
 直武がせかすようにいった。
「そうね。劉生さん、暇をみつけて、いらしてね」
 千歳が声をかけ、車は発進した。
 劉生の姿が、すっと後ろにさがった。
「劉生さん!」
 千勢は窓から身を乗りだした。
「千勢、あぶない!」
 千歳が叫んだ。引きずりこまれる前に、千勢は叫んだ。
「今夜きて! あのこと……お兄さまに!」
 劉生の顔は、見ることができなかった。
「どうしてこの子は、いちいち親を心配させるの!」
 泣きそうな声で、千歳がいった。千勢も泣きたくなった。


---------- 
※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
---------- 
■解除・登録⇒ http://ibunko.com/text/mbook/acacia.html
□問い合わせ⇒ acacia@ibunko.com
■制作・発行⇒ アイ文庫(有) http://ibunko.com

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。