小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.076

2005/06/28

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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「千勢ちゃん、そろそろいかないと」
 八重がいった。
「そうだった」
 千勢はあわてて立ちあがった。
「秀子さん、いい策を思いついたら、こちらへ手紙を出すわ。もし秀子さんのほうから何かあったら、こちらの住所へおねがい」
 千勢は肩にさげていた鞄から、小さな帳面をとりだして一枚破り、さらさらと自宅の住所を書き記した。
「ありがとう、有島さん。江上さん、田中さんも」
 秀子は目に不安を走らせながらも、にっこりと笑った。それは三人が初めて見る、社交辞令ではない秀子の笑顔だった。
「よし、いこう!」
 男の子のように美智子がいって、三人は大津別邸をあとにした。急ぎつつも何度もふりかえると、そのたび秀子が手をふっていた。
 三人はよろこびのあまり、歌でも歌いたいような気分で、浜辺へ走った。
 浜辺にとびだして、三人ははっとして立ちどまった。あたりはがらんとしていた。
「どうしよう……もう帰っちゃったのかしら」
 八重がおろおろしていった。
「まさか。わたしたちをおいて、帰ったりはしないわよ。集合時間になっちゃったんだわ」
 千勢は浜辺の真ん中へ走りでた。
「有島さん!」
 中島先生が叫ぶのがきこえた。遠くのほうに、女学生の一団が見えた。
 三人は息をきらしながら、みんなが集まっている場所にたどりついた。
「いったいどこへいっていたの!」
 いつも優しい中島先生が、目を吊りあげて怒っていた。
「すみません……」
 三人は頭をさげた。だが、押さえきれないうれしさがこみあげて、肩がふるえてしまう。
「いま、刑事さんが、地元の警察に捜索をお願いしにいこうとしていたところなんですよ!」
 見ると、刑事がこちらへ戻ってくるところだった。
「お騒がせして、申し訳ありませんでした」
 今度は刑事たちにむかって、三人は深々と頭をさげた。
「無事でよかった。しかし、先生の言いつけはきちんと守っていただかないと」
 刑事がいったので、三人はますますちぢこまった。中島先生は、ハンカチで目を押さえながら、いっしょになって刑事に頭をさげた。それを見ては、三人はいやでも神妙な気持ちになった。
 やがて、列をつくって、女学生たちは停車場へ歩きはじめた。
「さすがにちょっとまずかったわね」
 美智子が千勢に頭を寄せて、そっとささやいた。千勢も美智子のほうへ首を傾けて、ささやきかえした。
「うん。でもとにかく首尾よくいったんだから、このくらいがまんしましょう」
「そうね」
「そこ! 無駄なおしゃべりはしない! 反省しとらんのか」
「すみません!」
 引率の先生から叱咤が飛んで、二人は首をすくめた。


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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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