小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.075

2005/06/27

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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 千勢がため息をつきながら、いった。
「とにかく、町じゃそういうことで、日曜の夜から大騒ぎなのよ。共産党の抗日運動にまきこまれたんじゃないかとか、北京のお宝にからんでならず者にさらわれたとか……」
「それは問題が大きいわね」
 秀子が形のいい眉をひそめた。この人はどんな顔をしてもきれいだなあ、と千勢はまじまじと秀子を見つめた。
「でも、駆け落ちとわかったら、別の意味で大問題よね」
 美智子が考えこみながらいった。
 秀子は困り果てた顔になった。
 千勢がみんなをしきるように、いった。
「さあ、無事だとわかったからには、これからのことを相談しましょう」
 時間が気になりはじめたのだ。
「いま大連にもどるのは、危険だわ。ならず者があなたをさがしているの」
「どうしてなの? 北京のお宝なんて、わたし知らないわよ」
「そうでしょうとも。でも、わたしも市場であなたにまちがわれて、ならず者にからまれたの。本物のあなたがあらわれたら、知らないって言い張っても、無視してさらわれてしまうわ」
 美智子と八重が、うんうんとうなずいた。
「じゃあ……しばらくここに隠れていたほうがいいわね?」
 秀子がいった。
「そのほうがいいと思うけど……よくわからないわ」
 四人の少女は、そろってため息をついた。
 椛島がおろおろしていった。
「誘拐、ということは、もしかして僕が犯人、ということになるんでしょうか」
 あ、忘れていた、と千勢が椛島をふりかえった。
「そうですね、もし椛島さんが秀子さんといっしょのところを見つかったら、犯人扱いされるでしょうね」
 千勢は警察の人々の顔を思い浮かべた。見つかれば、椛島はきっとただではすまない。誘拐ではないといっても、これだけの騒ぎをおこしたのだから――正確には、騒ぎを助けたというべきだが――、なんらかの処罰はあるだろう。
「どうしよう」
 椛島は頭をかかえたが、そうだ、とつぶやいて顔をあげた。
「ロシア人の知人が、大連にいるんです。先日偶然にあったんです。なにか力になってくれるかもしれない……」
「でも、あまり出歩かないほうがいいと思いますわ。痩せた眼鏡をかけた日本人学生ということで、警察も躍起になってさがしてるんですもの」
「ええ……そうですね……」
 そういいながら、椛島はおちつかないようすで、目をきょろきょろさせた。
 秀子さんのお相手としては、ちょっとつりあわない気がするけれど、と千勢は少しがっかりしながら、そんな椛島を見ていた。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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