小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.069

2005/06/17

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「僕は知りませんよ。これから調べようというところです」
「もっとなにか知ってるだろう。だいたい、どうしてその婦人が秀子嬢かもしれんなどといえるんだ。秀子嬢が北京にいっていたとでもいうのか」
 砥部のいらだちをみて、劉生はにやりとした。
「記事には書いてないが、もうひとつきいた話をご披露しましょうか」
 砥部は薄い眉をあげた。
「なんだね、それは」
「至宝の秘密について――それがなにを示すのかは、やつらも知らないんですが――書いた紙片をもっていると考えられている婦人ですがね。英国人の娘だというんですよ」
「なんだって?」
 砥部と直武が、そろって声をあげた。
「秀子嬢の母君は、みなさんご存知のとおり英国人だ。顔立ちも日本人ばなれしている。それでまちがえられたんではないか、と考えたんですがね」
「ふうむ」
 砥部が腕をくんだ。
「どうして記事にしなかったんだ」
「もちろん、大津家の内情を配慮したんですよ」
「ほう、そういう意識があるのかね、君たち新聞屋にも」
 警察よりはね、といいたかったが、劉生は黙っていた。
「秀子嬢が本当に紙片をもっているという可能性は……」
 直武がいった。
「まさか。だって北京の話ですよ。彼女は内地からきたばかりでしょう? 単なる人違いじゃないですかね。それより、最近北京からきた英国婦人をさがしたほうが、話は早いと思いますよ」
「君に指示されるいわれはない」
 砥部が苦々しそうにいったので、劉生は素直に、すみませんといってやった。
「わかった。ご協力感謝する。もう帰ってよろしい」
 直武がドアをあけ、劉生を外へ出してやった。
「あとで会おう」
 直武のことばに、劉生は、
「仕事でなら、もういやだぜ」
 といった。直武は思いきり劉生をにらみつけ、ドアを閉めた。
 ちょっと気の毒だったかな。そう思いながらも、警察に恩を売ってやったとほくそえむのを、止めることができなかった。劉生は口笛を吹きながら、明るい五月の陽光のなかへ出ていった。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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