小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.067

2005/06/15

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「今の状態では、捜査を撹乱させる意図ありとも思われかねんぞ」
 直武はいまいましそうに、新聞を食卓のむこうに押しやった。
 あわただしく朝食をすませると、直武は急いで家を出ていった。
 千勢は不安になった。「捜査を撹乱させる」ことになるとは、思ってもみなかったのだ。
「劉生さん、だいじょうぶかしら」
 食器を片づけている玉玲を手伝いながら、千勢はささやいた。
「だいじょうぶでしょ、あの人は」
 さらりと玉玲がいった。
「これに乗じて、さらに情報を集めようってぐらい、考えてるわよ」
「玲ちゃん、よくわかるわねえ」
 千勢は感心した。だが、すぐに顔を曇らせた。
「でも、わたしたちから『ほじくりだした』んだとわかれば、お兄さま、きっとものすごく怒るわね」
「記事にするくらいだから、きっとあのあと、何か証拠になるようなことをつかんだのよ。わたしたちからの話だけじゃ、いくらなんでも新聞には書けないでしょうから」
 玉玲のことばに、千勢は少し安心して、
「そうよね。じゃ、学校にいってくる」
 といって、食事室をでた。

 その朝、劉生は出社するなり、警察から出頭を命じられた。
「まったく、居丈高なんだから」
 あくびをかみころしながら、劉生はぶらぶらと大広場へむかった。
 広場に面した大連警察署の窓枠の白が、睡眠不足の目にしみた。目をこすって、入り口の階段を登りかけると、屋内の暗がりのなかに、直武の姿が見えた。
「よう」
 劉生が声をかけた。
 直武は黙ってふりかえった。顔が怒っている。
「おまえ、どういうつもりだ、あんな記事書いて」
「どういうって……少しでも捜査の進展を助けようとしたんだよ。臣民として当然のことだ」
 のうのうという劉生に、直武は頭をふった。
「捜査撹乱の意図について、調べさせてもらうぞ」
「なにいってんだよ」
 劉生が驚いていった。
 砥部警部が廊下にでてきた。
「きたな、勝原くん。今朝の新聞記事には驚かせてもらったよ」
「そうですか」
 劉生はぼりぼりと頭をかいた。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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