小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.063

2005/06/09

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「ほんとだねえ、すごい偶然だねえ」
 ゴドノフはにっこりした。これはおもしろい。
「先生、あそこの屋台にでもすわりましょうよ。僕は今日、大連についたばかりなんですよ」
「そうかね、今日ついたばかりで出会えるなんて、ほんとにすごいことだねえ」
「ええ、ほんとに……先生、ずいぶんごきげんですね。なにかいいことでもあったんですか?」
 いつもむっとした表情で、ロシア語を教えていたゴドノフが、こんなににこにこするところを、椛島は初めてみた。
「いいこと? 君に会えたじゃないか!」
 ゴドノフと椛島は、つれだって屋台の前に並べてあるベンチに、腰をかけた。
「そういえば君がのぼせていた、あの女の子はどうしてる?」
 くすくす笑いをしながら、ゴドノフはようやくのことで、そうたずねた。
 椛島は顔を真っ赤にした。
「先生、千里眼でももってるんですか? 実は、僕、彼女を追って大連にきたんです」
 そうか、俺には千里眼があるのか。ゴドノフはますます幸せになった。
 今日は楽しいことが、たくさんあるな。
「君にしてはずいぶんと思いきったことをしたね」
「ええ、その……このまま彼女が、永遠に僕の前から消えてしまうのかと思うと、いてもたってもいられなくなって」
「若いということは、すばらしい」
 ゴドノフは椛島と、白酒で乾杯をした。
「あれ、きついときいていましたが、けっこう飲みやすいですね」
 杯をあけて、椛島がいった。
「君、油断しちゃいけない。これはウォッカ並みだよ。あんまり急いで飲むと、ひっくり返ってしまう」
 ウォッカ、といったとき、ゴドノフは突然、自分が椛島にあわせて、日本語で話していたことに気づいた。
 さっきまで感じていた至福感は、急激にしぼんでいった。
 ――俺はへまをしてしまった!
 目の前の青年が、急に疎ましくなってきた。こいつのせいで、とんでもない失敗を犯してしまった。
「先生、大連ってきれいなとこですね。先生はどうしてここに?」
 椛島はあいかわらず、人の好さそうな顔で、笑いかけてくる。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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