小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.062

2005/06/08

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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 溥儀の宝の一部が、大連に流れている。それに、西洋娘と偽役人がからんでいる――ということか?
 ゴドノフは酔ったふりをして、さりげなく尻の位置をずらし、男たちに少しでも頭を近づけようとした。
 男たちのひとりが、ゴドノフにちらっと鋭い視線を送った。声が低くなった。
 気づかれたか。
 潮時とみて、ゴドノフはふらりと席をたった。男たちがはっと、筋肉を緊張させるのがわかった。
 ゴドノフは注意を払うそぶりもみせず、さっさと通りを歩きだした。
 お宝、紫禁城……頭から、それらの単語が離れない。
 あの男たちを尾行して、もっとくわしい話をさぐりだすべきだろうか。お宝があれば、使いこんだ活動資金の埋め合わせができるではないか。
 そう思うやいなや、ゴドノフはくるりと向きをかえ、きた道を戻りはじめた。
 男たちは、すでにいなかった。
 ゴドノフは舌打ちをして、そのままぶらぶらと進んだ。
 中国人たちの間には、広く流れる噂になっているらしい。いずれ、もっと確実な話が耳にはいるだろう。あんなならず者たちより、偽役人とやらを見つければ、話も早いのではないだろうか。
 ゴドノフはくすりと笑った。「犬も歩けば棒に当たる」とは、よくいったものだ。酒をもとめて歩いていただけで、けっこうな情報がはいってきたではないか。
 明日からの活動が楽しみになってきた。今日は、もうしばらくこのうきうきした気分を楽しみながら、時間をつぶそう。
 次はどの屋台にしようかと、鼻歌まじりに見つくろいながら歩いていると、突然、
「ゴドノフ先生じゃありませんか!」
 という日本語に、よびとめられた。
 ふりかえると、椛島がいた。横浜でロシア語を教えていた、西洋人の少女にのぼせあがっていた、あの椛島だ。
「おやあ、椛島くんじゃないか」
 今日の昼間、君のことを思いだしていたんだよ。そう思いついて、ゴドノフはうれしそうにくすくすと笑った。
 椛島もうれしそうに笑った。
「てっきりロシア……いや、ソビエトに帰られたのかと思っていたのに、まさか大連なんかで会えるなんて!」

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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