小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.052

2005/05/25

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「千勢、きなさい」
 直武によばれて、千勢はドアのほうへ進んだ。劉生がでてきた。
「劉生さん!」
 あわてて千勢は、劉生のそでをつかんだ。
「千勢ちゃん。さっきの、なに? あとで、っていったの?」
 千勢は指を口にあてて見せた。黙った劉生に、
「そう。ちょっと待っててくださる? 大事なお話があるの」
 と小声でいった。
 劉生はうなずくと、
「じゃあ、外でぶらぶらしてるよ」
 とやはり小声で返し、なにげないそぶりで、そのままほかの記者たちと外へでていった。
「劉生の仕事のじゃまをしちゃいけないよ」
 直武が千勢を迎えいれながら、いった。
「してないわよ」
 千勢はこたえて、部屋にはいった。
 残っているのは、大津氏と、警察関係者だけだ。千勢はにわかに緊張した。
「お嬢さん。警察にきていただくのはなにかと外聞もあるので、ここで話をききたいと思って、少尉におねがいしたんですよ」
 さきほど中央で話していた男が、いった。
 大津氏に話をききにきたのではなく、千勢の話をきくためにここにつれてこられたのだということを、千勢は悟った。
「砥部警部どのだ」
 直武にいわれ、千勢は無言でお辞儀をした。
「お嬢さん、土曜日の夕方、このお宅の前で不審な人物を見かけたそうですね」
 砥部はさっそく話をきりだした。
「はい」
「外見については少尉からききましたが、あらためて教えていただけませんかね」
 千勢は、先日見たとおりのことをくりかえした。
「何歳ぐらいの男でしたか」
「二十二、三だと思います」
 直武が眉をあげた。砥部がいった。
「ほう。ちらっと見ただけで、わかりましたか」
 千勢はぎくりとした。たしか、土曜の夕方見たときは、そこまではわからなかった。直武にも、若い男としか伝えなかった。日曜にふたたび会ったせいで、イメージがよりはっきりしていたのだ。
「え、いえ……でも若そうだったんです。兄と同じぐらいかなと……」
 砥部の目に、千勢は心臓をえぐられるような息苦しさをおぼえた。
「体型はやせ形。背は?」
「ええと……兄よりは低かったと思います……」
 千勢は慎重にことばを選んだ。
「服の特徴は?」
「うす汚れていて……灰色のような……」
 たぶん、日曜に着ていたのも、同じものだったはずだ。
「顔の特徴なんかは、もうちょっとくわしく思い出せませんか」
「それは……ちょっと……」

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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