小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.051

2005/05/24

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「おやじが英国にいっていたころ、深い仲になった女が産んだ子です。横浜で隠れ住んでいるぶんには、こちらも気にすることもなかったんですがね」
 秀一郎は、千勢の反応を見ようとして、わざと露骨に話しているようだった。千勢はその手にはのるものかと思いながら、
「そうですか。お母さまはお亡くなりになったとか。お気の毒に」
 といってやった。
 千勢の反応に、秀一郎は小さな驚きをみせた。
「小さなお嬢さんが、よくご存じで。まあ、こんな事件がおきちゃあ、あれこれ話題になるのはしかたないですがね」
 そして、あからさまに千勢への興味を示しはじめた。
「千勢さん、といいましたよね。思ったより利発な方のようだ、いや失礼。有島少尉が目にいれても痛くないほどのかわいがりようだと聞いていたもんでしてね。どうです、今度いっしょに星ヶ浦にでもいきませんか。うちの別荘があるんです。なかなか快適な家ですよ」
 といった。
「あら、男の方と出かけたりしたら、兄に叱られますわ」
 千勢はそういって、しらじらしく笑った。そのとき、頭のすみで、ひらめくものがあった。
「星ヶ浦の別荘って、よくお使いになりますの?」
 千勢が話にのってきたと勘違いした秀一郎は、にこやかに話しはじめた。
「いや、近いからかえって使わないんですが。瀟洒な洋館で、ロマンチックというんですかね、お嬢さんがたには好評ですよ」
「まあ、すてき」
 頭のすみで、なおも信号がちかちかした。だが、どうしてもその意味をつかめなかった。
「星ヶ浦のどのあたりになりますの? 夏になれば、兄たちとよく出かけますから、その折りにでも寄らせていただきますわ」
「大歓迎ですよ。黒石礁のほうにあるんです。海が目の前なんですよ」
 千勢は頭のなかで、ざっと星ヶ浦の地理をおさらいし、だいたいの場所の目星をつけた。
「まあ、たのしみ」
「でも、おいでのときは前もってご連絡くださいよ。管理人をおいてないんでね。近いから、いくときに先に使用人を送って掃除をさせるんです。このまえ秀子をつれて一度いったんで、今ならまだきれいなんですけどね」
「ええ、わかりました。さっそく兄に話しますわ」
「できればお兄さんには内緒でいらっしゃいよ」
 千勢は困って、ほほほ、と笑ってごまかした。
 そのとき、応接室のドアが開いて、どやどやと男たちがでてきた。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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