小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.048

2005/05/19

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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 千勢はさしだされた帳面を読んで、うなずいた。
「北京のお宝のことは?」
「そうそう、それね。男たちが、『北京からもってきたものを出せ』といったのと、女の人が『あんたたちもお宝さがしなの』っていったのよ」
「ややこしいわね」
 八重は少し考えて、
「事実その四、無頼の男たちと婦人が『北京の宝物』に関するなにものかを秀子嬢が所持せりと目し千勢嬢に問ひただししこと」
 と書いた。
「誰かが秀子さんをさがしてるってことはわかったけど、それと千勢ちゃんがでくわした事件と、ほんとにつながるのかしら」
 美智子が八重の記録を読みながら、いった。
「そういわれてみると、そうね。でも身代金を要求してこないのなら、そういう男たちにつかまっているという可能性もかなり高いとみていいと思うわ。彼らの目的は、身代金じゃなく宝に関するなにかだから」
「男とはかぎらないでしょ? 女の人もさがしてるんだから」
「え、まあ……」
 千勢はいいよどんだ。
「でも、あの人はなんかちょっとちがうような気がして。だって助けてくれたんだもの」
「自分が横取りしようとして、千勢ちゃんを助けただけかもしれないわ」
 そういわれて、千勢は考えこんだ。たしかにそうかもしれない。
「でも、警察はまだつかんでない情報よね、これ」
 なぐさめるように、八重がいった。
「わたしたち、警察も知らないことを知ってるのよね」
 三人はしゃがんだまま、頬を染めてうなずきあった。わたしたちは、すごい秘密を共有したのだ。
 始業の鐘が鳴って、三人はびっくりしてとび起きた。
 先生がはいってきた。教壇につかれる前にと、みなばたばたと席に戻った。
「みなさん、大津秀子さんが失踪されたこと、もうご存じのようですね」
 一同、黙ってうなずく。
「警察が、懸命に捜査しています。日本人子女をねらった誘拐かもしれませんので、みなさんもくれぐれも用心なさるように」
「はい」
 千勢たちの担任の中島悦子先生は、三十代なかばの婦人だ。いつも慈母のように千勢たちに接してくれる。
 先生の目の下は心なしか黒ずんでみえた。日本人子女をあずかる女学校教師として、今回の事件にはさぞ心を痛めておられるのだろう。
 千勢は、わたしの手で事件を解決しようと心にきめた。わたしのほうが、きっと警察より進んでいるわ。そう思うと武者震いがしてくるのだった。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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