小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


全て表示する >

[ibunko]アカシア少女探偵団 No.047

2005/05/18

┏━━━━━━━━━━━━┓
┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
┗━━━━━━━━━━━━┛

「でも、北京って? 秀子さんは横浜からきたのよ」
 八重がいった。
「そうなのよねえ。そこがわからないの」
 千勢がため息をつくと、美智子が目を輝かせて、ささやいた。
「ねえ、もしかして、秀子さんは女スパイで、横浜からきたというのも真っ赤なうそ、実は北京で諜報活動をやっていた、っていうことはない?」
 今度は千勢と八重があきれる番だった。
「美智子ちゃん、あなたのほうが探偵小説の読みすぎだわ」
「だって、北京とつなげるには、そういう風にしか考えられないじゃない」
 うーん、と三人は考えこんだ。
「ちょっと整理してみましょう」
 千勢がいった。
「事実だけをあげてみましょう。まず、おとといの夜から秀子さんが家にもどらない、ってこと」
「まって、わたし帳面に書いておくわ。これから調査をすすめるためには、記録をとっておくことも重要だと思うの」
 八重が自分の机から、帳面と鉛筆をもってきた。
「そうね、でもだれにも見られないようにするのよ」
 八重は、これ以上なくまじめな顔でうなずいた。そして、帳面をひらき、
「事実その一、大津秀子嬢が五月七日土曜夕刻より自宅に戻らざること」
 と書いた。
「それから、昨日の夜、わたしが市場で秀子さんとまちがえられて、からまれたこと」
 美智子が口をはさんだ。
「どうして、秀子さんをさがしてるってわかったの?」
「おまえは大津の娘か、っていわれたのよ」
「ふうん」
 八重は、次のように書き記した。
「事実その二、有島千勢嬢が五月八日日曜の夕刻市場にて無頼の男たちに大津秀子嬢と間違へられからまれしこと」
「それから、男たちからわたしたちを助けてくれた女の人が、やっぱり同じことをきいて、行方不明だといったら『先をこされた』といったこと」
「女の人が助けてくれたの?」
 信じられない、といった顔で美智子がまた口をはさんだ。
「そうなの。すごく強いの。名前は……たしか李月華とよばれていたわ」
「どう書くの?」
 八重にきかれて、千勢は帳面のすみに「李月華」と書いた。
「たぶんこういう字だと思うわ」
 八重はそれを見ながら、こう書いた。
「事実その三、有島千勢嬢の難を救ひし婦人(氏名は李月華なり)が『大津の娘なりや』と問ひ千勢嬢が秀子嬢は行方不明なりと答へし後『先をこされた』と云ひしこと」
「これでいい?」

---------- 
※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
---------- 
■解除・登録⇒ http://ibunko.com/text/mbook/acacia.html 
□問い合わせ⇒ acacia@ibunko.com 
■制作・発行⇒ アイ文庫(有) http://ibunko.com

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。