小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.046

2005/05/17

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「いい? これはぜったい大人にはしゃべらないでね。でないとわたし、外へは出してもらえなくなってしまうわ」
 急に千勢が声を落としたので、美智子と八重はただならぬものを感じ、ごくんと唾をのみこんだ。
「玲ちゃんと市場をさがしたんだけど、変な男たちにからまれたの」
「ええっ」
 ふたりが大声をあげたので、あわてて千勢は「しいっ」と人差し指を口にあてた。
「秘密なのよ、大声ださないで」
 あわててふたりはうなずいた。
「どうもそのときのようすから、大勢の人が秀子さんをさがしているみたいだったの」
「え? じゃあ、日本人子女なら誰でも、というわけではないの?」
「男たちが誘拐犯と関係あるかどうかはわからないけど、とにかく秀子さんをさがす人がいっぱいいるってことは、確かね」
 神妙な顔をして、千勢は腕ぐみをした。
「すごいわ、千勢ちゃん。女探偵ね」
 美智子が感心していった。これまで情報に関してはいちばんと自負していたが、これからはその座を千勢に譲らねばならないかもしれない。
「このことが失踪事件と関係あるかどうかはわからないけれど、わたしはなんとなく、秀子さんは身代金目当てに誘拐されたんじゃない、って気がするわ」
 月華が「先をこされたか」とつぶやいたのも、気になっていた。なにやら、危険な人間たちが大勢、それぞれ秀子さがしに暗躍している。秀子がつかんでいるなにかをもとめて――。
「問題は、秀子さんがなにをもっているのか、ということだわ」
「なに? なんの話?」
 美智子と八重は、いまや千勢を、尊敬のまなざしで見つめるようになっていた。
 千勢も、なんだか自分が優秀な女探偵になったような気がして、興奮してきた。
「みんな、秀子さんがもっているなにかをほしくて、秀子さんをさがしているようだったの」
「なにかって、なにかしら」
「それよ」
 千勢は美智子と八重の肩を抱いて、しゃがむよううながした。
 三人はたがいに頭をくっつけて、かがみこんだ。
 息をつめるふたりに、千勢はおごそかにいった。
「『北京のお宝』よ」
 ふたりは、緊張の糸が切れたように呆けた顔で、千勢を見つめた。
「千勢ちゃん、探偵小説の読みすぎじゃない?」
 千勢はあわてて手をふった。
「ちがうって、男たちがそういってたのよ」

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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