小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.045

2005/05/16

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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 千勢は直周に送られて、女学校に車をのりつけた。あたりには、おなじく心配した親たちのせいで、女学生たちをのせた自家用車や洋車《ヤンチョ》がひしめいていた。
 週明けの教室は、かまびすしかった。
 情報雀たちがあちこちを飛びまわり、しいれた情報を提供したり、新しい情報をしいれたりした。どれも秀子失踪に関するものばかりだ。
「きいた? 千勢ちゃん!」
 教室にはいるなり、江上美智子がとんできた。
「秀子さんのこと?」
「それ以外のなにをきくっての?」
 みな、興奮しきっていた。学校にきてから話をきいた者も多く、おろおろする者、勝手に推理する者、さまざまだ。
「誘拐されたんですってね」
 田中八重が泣きそうな顔で寄ってきた。
「わたしたちもあぶないって、父なんて、学校にもいくな、なんていうの」
「そんなこと」
 千勢は苦笑した。
「あら、だって警察は、日本人をねらった誘拐ということで捜査を始めたらしいわよ」
 新聞記者の父親からしいれたらしい話を、美智子は披露した。
 最近、共産党が勢力を伸ばしつつある。南京事件も、実は共産党が裏で手をひいていたらしいとの話もある。
 共産党は、各地で支持者をつのるのに抗日を標榜しているという。抗日というスローガンで、人民を一致団結させようというのだ。
 今回の事件は、それが表面化したものではないか。つまり、日本人子女を誘拐し、抗日姿勢を人民にむけて喧伝するとともに、身代金を要求して活動資金にあてようというのだ……。
「身代金の要求なんて、あったの?」
 千勢がたずねた。
「それが、ないのよ」
 美智子は肩を落とした。
「だから、いまひとつ目的がわからなくて、大人たちも困っているみたい」
 そういえば、と美智子は、
「千勢ちゃん、昨日の夜、遅くまで秀子さんをさがしに歩いたんですって?」
「やだ、どうして知ってるの?」
「お母さまからご連絡があったのよ、うちに」
 お母さまったら……千勢はあらためて、どれだけ母を心配させたかを思った。これで昨日の事件のことを話しでもしたら、もう二度と外へは出してくれないかもしれない。
「ごめんなさいね、心配させて」
「ううん。で、どうだったの? なにか手がかりは見つかった?」
「いいえ、でも……」
 話すべきかどうか、迷った。でも友だちだから、いいだろう。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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