小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.040

2005/05/09

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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 北京を出てから丸三日ののち、陳は大連の地を踏んでいた。
 北京もいまはいい気候だが、こちらは海が近いせいか、空気もまるい気がする。
 若者は燕となのった。大連駅を出ると陳を洋車に乗せ、支那人街へとむかった。
 陳は「田舎」と嘲ったことも忘れて、大連の街に見とれた。
 街の規模はごく小さいが、道の両側を耐火洋風建築がしめ、統一のとれた街並みをつくっていた。アカシアの緑が目にあざやかだ。
「なかなかいい街じゃないか」
 陳は燕にいった。
「そうだろう。おもしろい場所もいっぱいあるぜ」
 洋車はメインストリートをひた走っていく。
「おもしろいって?」
「それはあとのお楽しみにとっておきな。案内するから」
 陳はにわかに懐具合が心配になった。
 おもしろい場所というのは、たいてい金がかかるものだ。父親がくれた金は、汽車賃に消えてしまった。陳にはもう、わずかな小銭しか、残っていないのだ。
「おい、どうも俺は、金を落としたらしい」
 陳はおずおずといってみた。
「なんだって? すられたのか?」
「わからん。財布はあるんだが、中身がなくなってる」
 燕は少し考えこむ顔になったが、やがて、
「まあ、金のことは兄貴に頼んでみよう。あんたを客としてもてなすかどうかは、兄貴が決めることだ」
 といった。
「兄貴って、あんたの兄さんかい」
「いや、兄貴分といったところだ。兄貴も北京の話を聞きたいだろうと思ってな」
 洋車は、まっすぐ支那人街へとはいっていった。見慣れた中国風の家いえにほっとしたものの、これからどこへ連れていかれるのか、次第に不安がつのってきた。
 燕は、洋車を長屋風の建物の前にとめさせた。
「この奥だ。ついてきな」
 燕は、陳を奥まったところにある部屋につれこんだ。
「兄貴、帰りました、燕です。列車で知りあった、北京のお役人をつれてきました」
 暗がりに目が慣れてくると、いちばん奥の壁ぎわにがっしりした男がすわっているのが見えた。まわりにも、数人の男たちが、たむろしている。
 陳は、のこのこついてきたことを後悔しはじめていた。どうみても、連中はかたぎの人間ではない。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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