小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.039

2005/04/28

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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「あんた、偉いひとだったんだなあ」
 若者と年寄りは、いまや陳を尊敬のまなざしで見つめている(ように見えた)。
「で、どこまでいくんだね」
「大連だ」
「お役目でかね」
「もちろんだ」
 いまだに皇帝に深くかかわる役人を装い、陳はいばってこたえた。
「わざわざ大連まで、皇帝さまのお言いつけでねえ。そりゃご苦労なこった」
 年寄りがうなずきながら、ほうほうと何度も感心するので、陳はすっかりいい気分になった。
「お役目って、なんだね」
 若者がきいた。
「紫禁城の宝物を取り返しにいくんだ」
「宝物?」
 陳はしまったと気づいたが、遅かった。
「そんなお宝が、大連にあるのかね」
 若者が疑わしそうな目でいった。陳はこれ以上しゃべってはまずい、と思いながらも、その目に反発しないではおれなかった。
「ふん、名人の墨跡や壺なんぞのとんでもない値打ちものが、お城にはごろごろあるんだ。
おまえら田舎もんには、見ても価値はわからんだろうがな」
「あんたにはわかるのかね」
「あたりまえだ。俺にはものを見る目があるからな」
 内部の警備をまかされることはめったになかったが、担当者が休みのときに、何度かまわされたことがあった。
 あるとき、たまたま小さな壺が目にはいった。懐にすっぽりはいってしまうような大きさだった。そう思ったとき、つい魔がさして、陳は壺を持って出てきてしまった。
 誰にも見とがめられることはなかった。たいしたものではないのだろうと陳は安心して、壺を古道具屋にもっていった。
 道具屋の主人は、しげしげとそれを見つめると、陳が思ってもいなかったような大金を出して、それをひきとった。
 これを皮ぎりに、陳は城内警備のたびになにかしら持ちだすようになった。役人の給料の何倍もの金が、楽々と転がりこんできた。
 とくに品物を選んだことはない。雑多に並べられている小さなものにとんでもない値がつくのだから、選ぶ必要もなかった。
「おやじさん、大連での宿のあてはあるのかい」
「いや」
 陳が首をふると、若者は、
「じゃあ、俺のところにくるといい。いろいろ話も聞きたいしな」
 といって、にやっと笑った。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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