小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.025

2005/04/08

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 ┃
┃ 『アカシア少女探偵団』 ┃
┃                        ┃
┃       大庭花音         ┃
┃  written by Kanon Ohba ┃
┃       -*-*-*-          ┃
┃   http://ibunko.com    ┃
┃   acacia@ibunko.com    ┃
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 思わず千勢は、身を乗りだしてたずねていた。
「秀子さんのお母さまって、外国の方なの?」
「千勢、はしたない」
「だって秀一郎さんが」
 直武がにらんだ。千勢は肩をすくめて、乗りだした身をひっこめた。
「情報通だねえ、千勢ちゃん」
 劉生は気にするでもなく、いった。
「母親は英国人だよ」
 直武は劉生の袖をひっぱって、目を見ひらく千勢から離した。
「ということは、あまり千勢には聞かせたくない話になりそうだな」
「ん? そうかね」
 しらじらしく劉生がいった。
「昨日、大津家の息子に偶然あって、自邸に招待されたんだよ。もちろんそこには、日本人の奥方がいた」
 直武は、ひそひそ声で劉生にいった。
「うむ。秀道氏がロンドンに遊学していたころに知りあった女性だそうだ。横浜の妾宅に住まわせていたんだが、先日亡くなって、娘をひきとったとか」
「なるほど」
「お兄さまったら、ずるい。わたしにもきかせてよ」
 千勢がわりこんできた。
「おまえは知らなくていい」
「どうして? わたしだってもうわかるわよ、秀子さんと秀一郎さんは、腹違いの兄妹ということでしょ」
 ぎょっとする直武に、千勢は胸をはってみせた。
「小説ではそういうお話、いっぱいあるもの」
「まったく、ちかごろの小説ってのは、百害あって一利なしだな」
 直武がいまいましそうにいった。
 玉玲が、なにやら考えこむようにして、つぶやいた。
「お母さんが英国人か……もしかして……」
「どうしたの、玲ちゃん」
「千勢ちゃん、その子の背って、けっこう高い? 髪の毛はちょっと茶色っぽい?」
 突然質問されて、千勢はとまどった。
「そう、背はわたしより頭半分ぐらい高いの。玲ちゃんより少し高いかしら。髪は、ええ、栗色だわ」
「うしろでひとつにまとめてる?」
「ええ、いつも茶色いリボンで、ひとまとめにしてるわ。どうして知ってるの?」
「たぶん、昨日、市場で見た子だわ」
「市場で?」
 思わぬ場所だけに、千勢ばかりでなく、直武も劉生もふりかえった。
 昨日の夕方、ピクニックの弁当の食材を買い出しにいった玉玲は、市場で、その場にふさわしからぬ西洋人風の顔立ちの少女を見かけたのだという。
「きれい、きれいって、どうきれいなのか聞いてなかったけど、お母さんが英国人なら、あんな顔立ちなんじゃないかと思って」
「市場で、なにしてたんだろう」
 劉生が好奇心まるだしできいた。玉玲は、ひとことでこたえた。
「逢い引きね、あれは」
「ええ!」
 三人はそろって大声をあげた。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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