小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


全て表示する >

[ibunko]アカシア少女探偵団 No.118

2005/09/01

■アカシア探偵団ブログ■http://blog.melma.com/00134063/
■■あいぶんこブログ■■http://blog.livedoor.jp/ibunko/
┏━━━━━━━━━━━━
┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
┗━━━━━━━━━━━━

十八

 がっちりと縛りあげられたゴドノフが、兵士にまわりを固められながら、黒塗りの軍用車に押しこめられるのを、千勢は空き地に座りこんだまま、見送った。
 直武が、千勢の目の前にしゃがみこんだ。
「おまえ……」
 しばらく、兄と妹は見つめあっていたが、千勢がぽろぽろと涙をこぼしたのを見て、直武はなにもいわず、千勢の頭を抱きかかえた。
「よくやったな。鳩笛、役に立ってよかったな」
 千勢は泣きながら、うなずいた。
 少女たちは、みな泣きつづけていた。
「くわしいことは、あとでゆっくりきかせてもらおう。いま、車をよんでいるから」
 直武のことばに、秀子がはっとして顔をあげた。
「あ、椛……」
 千勢はあわてて秀子の口をおさえて、
「あの、学生さんは?」
 と代わりにきいてやった。
「だいじょうぶ。さっき別隊が保護した」
 こんどは千勢がはっとした。
「暴動は!」
 直武は千勢の頭をなでて、
「そっちも大事ない。学生を保護したあと、おだやかに解散させた」
 千勢はほうっと安堵の息をついた。
「よかった……」
「まったく、あの帳面を見せられたときは心底驚いたが、無事おまえたちを保護できてよかったよ」
 車がきたのを見て、直武が立ちあがった。
「帳面?」
 千勢は、お尻についた土を払いおとしながら、きき返した。
「佐田さんという人が、うちへ持ってきたんだよ。お母さんがそれを見て、びっくりして連絡してきたというわけだ」
 やっぱり渡しておいてよかったわね、と八重が美智子にささやくのが、きこえた。
 千勢は、米子に渡す前に、星ヶ浦のことを破りとっておいてよかったと、胸をなでおろした。
「ところで、あの婦人は?」
 看護兵が、月華を介抱しているのを示して、直武がたずねた。

---------- 
※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
---------- 
■解除・登録⇒ http://ibunko.com/text/mbook/acacia.html
□問い合わせ⇒ acacia@ibunko.com
■制作・発行⇒ アイ文庫(有) http://ibunko.com

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。