小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.117

2005/08/31

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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 さっきの蹴りで痛めた腕は、あっけなく蹴りあげられた。銃を押さえようとした拍子に、引き金がひかれた。
 銃声が鳴り響いた。
「月華さん!」
 銃が空に飛んで、弧を描いた。
 月華の足元で、硝煙がたちのぼった。
「このあま!」
 ゴドノフはすさまじい形相で、月華に襲いかかった。
 ゴドノフは、拳闘の心得があるらしかった。こぶしをくりだすたびに、しゅっしゅっと風を切る音がした。
 月華は、右へ左へ体を反らせて、そのこぶしをかろうじて避けていたが、しだいに壁際へ追いつめられていった。
「加勢するのよ!」
 千勢の声に、少女たちは、石を拾ってはゴドノフめがけて投げはじめた。
 だが、ゴドノフの分厚い体には、少女たちの投げる石ていど、なんの影響もないといったようすだった。
「地獄へいけ!」
 ゴドノフが叫んだ。
 顔面にくりだされるこぶしを避けていた月華は、いきなりみぞおちを打たれ、声もたてずに、前かがみに崩れた。
「きゃあっ」
 少女たちがいっせいに叫んだ。
 肩ではあはあと息をしながら、ゴドノフがこちらをふりかえった。
 戦いの興奮を顔に乗せたまま、ずんずんと近づいてくる。
 少女たちはかたまって、壁際をずるずると逃げまわったが、すぐに追いつめられた。
 ゴドノフが、秀子を見すえた。
「おまえ、暗号を解けるな?」
 秀子は目をうるませて、首を力いっぱい横に振った。
「だれから紙片をあずかった?」
 秀子は首を振りつづけた。涙の粒が飛びちった。
「もう逃げられんのだから、観念して――」
 ゴドノフが秀子の腕をつかもうと、手を伸ばした。
 そのとき、銃声が響いた。
 ゴドノフが手を押さえた。手のひらから、血が吹きだした。
「動くな!」
 さっきも同じことばをきいた。でも、さっきのことばは、目の前の男がいったのだ。
 千勢はぼんやりとその声を反芻した。
 ききなれた声。
 わたしを守ってくれる声……。
 直武だった。


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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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