小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.112

2005/08/24

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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 どんづまりの壁際で、八重がずるずるとすわりこんだ。顔は、とっくに涙でくしゃくしゃだった。
 千勢は、自分も腰がくだけそうになるのを、懸命に耐えた。
 頭上で、軒先につるされた鳥かごの小鳥が、かわいい声でさえずっていた。
 こんなのどかなところで、変な目にあうはずがない……小鳥の声に励まされて、千勢は気をおちつかせようとした。
 男たちが、にやにやしながら、近づいてきた。
「さあ、紙片をだしな。お嬢ちゃん」
 落ちつけ、落ちつけ。千勢は心の中で念じつづけた。
「そ、そんなもの、持ってないわ」
 やっとのことで、千勢はいった。
「あんたにゃきいてねえ。そっちの外人の嬢ちゃんだ」
「中国語はわからないわ」
 男は舌打ちをした。
「なんとかしろ。紙片をわたしさえすれば、なにもしないから」
「ほ、ほんとね?」
「おうとも」
 どこまで信じたらいいのだろう、判断がつかない。千勢はこんなとき、自分がどれだけ子どもかということを、思わないわけにはいかなかった。
「き、きいてみるから、ちょっと待って」
 月華は男たちをすさまじい目でにらみつけたまま、玉玲のほうに首を傾け、
「ちょっと、紙片をもってるなら、あたしによこしなよ」
 とささやいた。
「ちくしょう、はじめに奪っておくんだった。あたしとしたことが、子ども相手と思って、ずいぶん甘い真似を……」
 玉玲はいらいらして言い返した。
「もってるわけ、ないでしょう」
「だって、大津の娘だろ」
「どこでどうしてそういう話になったかしらないけど、秀子さんは北京にいったこともないし、もちろんお宝だって、まったくの無関係なのよ」
「そこ! ひそひそ話すんじゃねえ。もしかして、てめえがもってるのか。ちょいと身体検査をさせてもらおうか」
 男がにやにやして、月華にむかって一歩ふみだした。子どもたちはともかく、美貌の女を前にして、食指が動くというところだろうか。
「あたしに触るんじゃねえ!」
 月華が殺気をとばした。
「おっと。ずいぶん気の荒い女だぜ」
 ひひひ、と男たちは笑いあったが、じりっと体をひいた。月華が見かけによらず手強いことを、悟ったにちがいない。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
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