小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.111

2005/08/23

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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十七

「見つけた! 英国人の娘だ!」
 その声に、人相の悪い男が数人、小路をのぞきこんだ。
「大津の娘か」
 少女たちはごくりと唾をのみこんだ。秀子は目を見開いて、たちつくした。
 男たちは、争って小路にはいろうとした。
「紙片をよこせ!」
 千勢がとびあがり、秀子の手をひっぱった。
「逃げなきゃ!」
 少女たちは、いっせいに身をひるがえして、小路の奥へむかって走りだした。
 月華は、先頭で走りこんできた男の股を、思いきり蹴りあげた。
「ぎゃ!」
 股をおさえて、男が転がり、あとにつづいていた男たちがそれにつまづいて、総崩れになった。
 月華も、すぐに少女たちのあとを追った。
 小路はどんどん細くなっていく。
 どこへ続く道なのかわからないまま、千勢たちは必死で走りつづけた。
 空は夕焼けで真っ赤になっていた。千勢はそれに気づいて、夕日の方角をめざして、小路を折れた。
 西へむかえば、少しは街に近くなる。軍がやってくるとしても、西の方角からにちがいない。どこかで事前にくいとめなくては——考えなくてはならないことが、一度におしよせてきた。千勢は泣きたくなるのを必死にこらえて、ひたすら走った。
 前方に、舗装された道がみえた。ふつうの住宅街にはいったのだ。あそこまでいけば、停車場もわかるかもしれない。こみあげてくる涙が、千勢の視野をゆがませた。
「きゃっ」
 いきなり前をふさいだものに、千勢は思いきりぶつかって、しりもちをついた。
「このへんで、俺たちから逃げられると思うなよ」
 大柄な男が、息をきらせて、前に立ちふさがっていた。
 先回りされた!
 美智子がとっさに、脇の小道にとびこんだ。八重たちもあとに続いた。
 月華が千勢の前にとびだして、男に突きをくらわせた。
 男がひるんだすきに、千勢も美智子たちのあとを追って、脇道に走った。
「いやあっ」
 美智子の悲しげな声が、壁に反響した。
 行き止まりだった。
 小道の先は、住宅の裏壁に囲まれた、小さな空き地だった。
 三方を壁にはばまれて、六人にはもう、進む道は残されていなかった。

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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