小説

【アイ文庫】長編小説「アカシア少女探偵団」

昭和2年、大連。千勢の通う女学校に転校してきた美少女をめぐって、女詐欺師、ロシア人活動家、中国の変な役人、陸軍将校、新聞記者らが入り乱れ大騒動! アイ文庫で配信された長編小説を好評にお応えして再配信。


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[ibunko]アカシア少女探偵団 No.109

2005/08/22

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┃ 【あいぶんこ長編小説】 
┃ 『アカシア少女探偵団』 
┃                        
┃       大庭花音         
┃  written by Kanon Ohba 
┃       -*-*-*-          
┃   http://ibunko.com    
┃   acacia@ibunko.com    
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 椛島は、大柄な男に襟首をつかまれ、高くつるしあげられた。椛島は苦しげに細い体をよじって、ばたばたともがいた。
 それをみて、群集はますます大声をあげはじめた。
 興奮は、加速度的に高まっていく。
 理由など、どうでもよかったのだ。こうした鬱憤ばらしを、だれもがまっていたにほかならない。
「なあんか、ひっかかるよなあ」
 月華がずいと前に進みでた。少女たちはびっくりして、おもわず小路の奥に、数歩ひきさがった。
 月華が発散するものに気圧されて、むらがっていた中国人たちは、道をあけた。
 陳が月華をみた。
「あんた、役人じゃなかったのかい。ついこないだ、皇帝万歳っていってたくせに、舌の根も乾かないうちに、もう共産党万歳だって?」
「なに……」
 陳の顔は、みるみる蒼白になった。
「なんだって、役人?」
 かたわらにいた男が、陳の顔をのぞきこんだ。
「おまえ、共産党員じゃないのか?」
「お、俺はれっきとした共産党員だ! ゴドノフさんのお墨付きだ!」
 怯えた顔でそう言い返すと、今度はむらがる人々にむかって、きんきん声でわめいた。
「はやく、この日本人に、金のありかをはかせるんだ! 金がみつかったら、みんなで山分けだ!」
 そのことばに、中国人たちはどっと椛島に押しよせた。罵るもの、石を投げるもの、こぶしをふりあげるもの、すべてが椛島にむけられたものだった。
 椛島は、いまにも失神しそうなようすで、高々とぶらさげられていた。
 月華が人波によろめいた隙をねらって、陳は人ごみのなかに駆けこもうとした。だが一瞬はやく、月華の左腕が、陳の襟をつかんでいた。
 月華はそのまま、陳をずるずるとひきずって、小路につれこんだ。少女たちは怯えて、さらに奥へあとずさった。アンモニアの臭いが鼻をついた。
「なにを企んでる?」
 月華が顔を近づけて、すごんだ。陳はふるえあがった。
「な、なにも企んでなんかいない! は、離せ!」
「冗談いってるんじゃねえよ、おっさん。北京のお宝を狙ってたお役人どのが、いきなり共産党員たあ、いくらこのご時勢だからってむちゃくちゃじゃねえか」
「む、むちゃくちゃで悪かったな」
 陳は唾を飲みこもうとしたが、喉は渇ききっていた。
 月華はふたたび陳を、正面からにらみすえた。
「なんか裏があるだろう? 正直に話せば、離してやる。どうしても話さないというんなら」
 月華はそこでいったんきって、陳に微笑みかけた。
「その根性に敬意を表して」
 陳もつられて、にっと笑った。
 月華の目が、ぎらりと光った。
「二度と話せないようにしてやろう」

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※この小説はフィクションです。団体名などいずれも架空の設定です。 
※ルビは《》で囲っています(青空文庫形式)。
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創刊日:2005-02-17  
最終発行日:  
発行周期:平日毎日  
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