政治・経済

甦れ美しい日本

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甦れ美しい日本 第070号

2006/06/14

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年6月15日 NO.070号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >


◎ゲスト執筆者

1.塚本三郎   世の中、そんなに甘くない 
2.松島悠佐   軍事のはなし(13)「軍事の透明性その2」 
3.伊藤 武   村上ファンド事件の本質とは 

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤 守       大東亜戦争の真実を求めて65
2.奥山篤信      硫黄島の壮絶な戦い-日本人の叙事詩として永遠に
3.松永太郎    「プロミス」という名のソフトウエア(3) 現代の情報戦争
4.西山弘道     政権末期
 
◎緊急投稿   
 
 奥山篤信    非常識な福井総裁バッシング

◎図書室

1.「チャイナ:増大する脅威」 China: The Gathering Threat.By Constantine C. Menges. Nelson Current 2005(松永太郎)
2.日米開戦の真実 / 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解くby 佐藤 優 小学館(奥山篤信)

◎ 映画寸評 フランス映画「親密すぎるうちあけ話」 奥山篤信
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 塚本三郎
 世の中、そんなに甘くない   
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 ここ数年、貯蓄よりも投資へという、流れに乗って、世はまさに投資ブームとなった。
まじめに働くよりも、日々の株式投資による儲け、即ちデイトレーダーの流行とまでいわ
れるようになった。
 それが間違いだとばかりはいえない。まじめに働いて得たおかねを、贅沢をせず、貯蓄
に廻しても、銀行がゼロ金利ならば、その資金を活用すべきだという意見は正論である。
 東京証券取引所に上場している殆んどの企業は、少ないとはいえ、年一%以上の配当金
を株主に提供している。その上、株価の上昇に伴って資金の値上がりも期待できる。
 そのような意味で、日本経済の実体に基づいて、日本人の思考は、極めて健全な方向に
歩みつつあった。その健全にして、素朴な日本人の金銭感覚を愚弄したのが、堀江貴文で
あり、村上世彰ではなかったか。
まじめに働く者が必ず勝つ。正直者が馬鹿をみない世の中。これは日本人の基本的な考
え方である。日本政府が、自身で発行した国債を、スムーズに消化させ、かつ負担を軽
くし続けるためにとっている、ゼロ金利政策に対して、庶民はいつまでも盲従してはい
ない。その対抗手段として、証券の売買に眼を向けつつある。その健全性を謳い文句と
しつつ、実際には、庶民のささやかな希望を打ち砕いた。その上、生き馬の眼を抜くと
言われ、先見性を自負するファンドマネージャーまで、欺いたのがこの二人ではなかっ
たか。
彼等を中心に集められた資金は、二〇〇六年十二月、投資顧問業界一二九社の契約資産
残高は、一四五兆円に達しているという。
村上世彰(村上ファンド代表)容疑者の逮捕に関する情報の洪水で、いっとき新聞、テ
レビは、占領されたかと思う程であった。
 
 村上氏は九歳のとき、貿易商の父親からもらった百万円が元手だった。そのときから愛
読書は『会社四季報』という。矢張り、華僑の子としての血統に生まれ、育てられた日本
人離れの血であろうか。そして平成十一年、ファンドを設立したころ数十億円だった運用
額は、逮捕直前には約四千億円にも膨れ上がったと伝えている。
 「株主から経営改善を求め、日本の企業を変える」と発言したことは、正しい。
しかし実際にやって来たことは、市場のひずみに目をつけて、利を求め続けただけでは
ないか。彼の発言が一々嘘で固められたものであることは、今後次々暴露されるであろ
う。
堀江氏のライブドアを誘い込み、彼と組み、ニッポン放送の株式の過半数を取得して、
経営権を取ると持ちかけ、しかも時間外取引の手法をも指南した。
ライブドア側は、村上氏の勧誘通り、共闘し、ニッポン放送株を買い進めた。
 しかし途中、高値になって、村上氏は黙って売り抜けた。わざわざ同じ屋根の下に住む、
いわば同志と信じ込ませた堀江氏をも、金儲けの餌として嘘で固めて誘い込み、莫大な利
を掠め取った。しかも、ニッポン放送を、安易に支配出来たその奥には、フジテレビとい
う大きな資産と、信用が控えており、それをも金儲けの対象として視野にあったはずだ。
 
二〇〇五年秋、ベンチャー企業家らが集まったパーティー会場で、「駄目な会社は乗り込
んで、社長を首にする」と言い、「皆さんも気をつけて下さい、いつ行くかわからないか
ら」とも言った。そのパーティーには、相当数の経営者も居り、企業の上場の危険を察
知した人も居たに違いない。
 「村上さんの発想は、会社に土足で入ってかき回すだけで、まともな投資家ではない。」
と一人の投資家は吐き捨てるように言ったと。
ライブドアのニッポン放送株買占めで、ルールの抜け穴を使わせた堀江貴文被告を指南
したのは、村上氏であることがわかった。これは、「ライブドアにニッポン放送を買わせ
て、儲けようと思ったわけではない」と開き直り、これは市場のヒズミを直すためだっ
た、と強調した。しかし、村上氏は実際には「改革者」ではなく、市場のルールをかい
くぐり、インサイダー取引で一般株主を欺いた。
 純資産が時価総額の二倍以上を基準にして、買収企業株を対象として調べ、株式価値の
向上策を訴え、含みを吐き出させる。つまり、「さや取り」の運用である。
 村上ファンドの顧客は、半年という短期で契約を打ち切ることができる。そう契約しな
がら、長期の経営課題である、企業価値の向上を唱えている。一方で短期的に成果を出さ
なければならない出資者を背負っている。
これでは公的年金のような、大型で、長期の出資者とは、運用方法で喰い違い、まじめ
な出資者は逃げ出す。かくて短期間で、より高い利回りを追求した村上ファンドは、「時
間の壁」に追い詰められていたとみる。
我慢の哲学が、その人の価値をつける。人間が、他の生き物と根本的に異なり優れてい
るのは、感情と欲望に堪えることが出来ることであろう。
金融戦争の勝者は、限界を知って、そこまでは冷静に我慢できる人だ。
村上氏は最初から出資者に、時に短期間の約束をすると共に、資金を高利、年三〇%の
目標で集めたことである。それに従えば、法の裏をくぐって稼ぐ以外になかったであろ
う。
我慢しようにも、自らが半年と約束した、無理な出資約束をして来たことだ。
いっとき飛ぶ鳥を落とす勢いであった堀江氏は、日本一のお金持ち。否、世界一とまで
豪語したときの、テレビの会見を思い出した。集めた資金の巨大さ、即ち、分を超えた
量が、彼の判断力を狂わせると危惧した。彼の自負心は、半年後には脆くも崩れた。
 そして、村上氏もまた、塀の中に取り込まれ、非難の集中砲火を浴びている。
文明社会は、悪人が得をすることを許さない、国家の法律とルールがある。
今国会で漸く、こうした市場の抜け穴を狭めるための、金融商品取引法が成立した。即
ち大量保有報告書の提出期限を、最大三ケ月半から三週間に短縮された。その他、ファ
ンドそのものにも登録制・届出制が導入された。それでも未だ彼等の保有する資金は一
四五兆円に達し、「会社は株主のもの」という片寄った思い上がりと、市場攪乱の原因は、
まだまだ正常化に程遠い。
 郵政省が民営化した。郵貯残が二三〇兆円、簡易保険一二〇兆円、計三五〇兆円と報告
されていた。これ等の巨大な、世界一の民間銀行となった資金は、国家の楯を失ってどこ
へ流れるのか。世界のハゲタカは目下、日本の巨大な金融に乱入をめざしつつある。 
不相応な財は毒と化す
 分不相応なものは、地位も、名誉も、財宝も、自分のものとならない。否、むしろ自身
を傷付ける。!)お金だけは、いくら在っても邪魔にはならない!)という言葉は、貧しい一
部の人の合言葉でしかない。
月の砂漠をはるばると 旅のラクダが行きました 金と銀とのくら置いて 二つなら
んで行きました。
優雅にして、仲の良い男女が、理想の旅を歌ったのは、つい数十年前であった。
 一バーレル二ドルの原油が、七〇ドルを超え、中・近東は、油田の王国と化した。この
地下の財宝が、この国をして、瞬時に近代国家と成長した。それを誰も咎めはしないし、
敵視したのでもない。それなのに、今やこの中・近東油田地帯は、世界動乱の火薬庫とな
っている。身内の仲間のテロである。それを利用しようとする、近隣諸国でもある。
 人間は大自然の中で生まれ、大自然に育てられた、ひとつの生き者であるにすぎない。
 動物も、植物も、鉱物も、地上に於ける持って生まれた任務があったはずだ。人間は、
それぞれの特長を生かし、調和させて、万物の王と自負しているにすぎない。
   愛 あなたと二人 二人のため 世界はあるの
ささやかな幸福のためならば、他人を傷つけない限り、二人のためにあるの。
中・近東の地方の油田にしても、その財宝は、運用する集団や、人物の人徳そのものが、
薬として役を果すか、あるいは毒として牙をむいて逆襲するのか。財・宝に問題がある
のではない。一切はそれを持った者の徳分による。
「この世の中で、絶対的に善なるものは、良き意志だけだ」とは、カントの道徳論だ。
地位も、権力も、財産も、すべては、それを用いる人物の良心の有無にある。人類の二
千年の努力の集積である科学さえも、人類の財産と言い得るか、破滅の核爆弾の保有を
豪語する独裁者さえ、この地上にかいまみられる。
何が、その人にとって分相応なのか。それを計ることはむずかしい。
仏教では、徳、不徳と表現されている。その人の人格は、量ることができない。
持って生まれた、前の世からの引き継いだ徳分も確かにある。美しい相をもって生まれ
る子。財産家の家に生まれる子、利発な智恵を持って生まれる子、さらに頑健な体力を
持って生まれる子。それぞれ前世の因縁を背負って出生するから決して平等ではないと、
釈迦は説く。しかし、それも、この世の約八十年間の努力如何によって、その長短両所
は、左右される。そこにこそ、教育や、修行、信仰の分野がある。
「人間は持ったもので苦労する。この年になって、つくづくそんなことに気付いた。」こ
れは春日一幸先生が晩年、私に語られた言葉であった。
バブル崩壊で、自らが起業し、育て上げ、いっときは業界のトップクラスにのし上がっ
た春日楽器は、先生の晩年、始末に苦心された。「塚本君は学生時代に創った会社を、い
ち早く始末したが、俺は未だ始末できない。」と、早く会社を廃業させた私を、うらやま
しがっておられた。先生には、外にできた子供さんも居られたことは周知であった。
「人間は持ったもので苦労する」。地位も、財産も、まして可愛い我が子も、と言いたか
たであろう。
本年の正月、息子の嫁が孫三名を連れて実家の岡山に里帰りをした。可愛がってくれる
祖母が待っている。
我が家に戻った孫に、岡山のおばあちゃんは、沢山お年玉を下さったでしょう。と女房
が問うたら「世の中、そんなに甘くないよ」中学二年生の長女の返事に、大笑いした。

塚本三郎;                
愛知県名古屋市に生まれる 
鉄道省名古屋鉄道局に勤務し、県立中学校(夜間)に入学 
終戦とともに労働組合運動に従事 
運輸省に転勤し、中央大学法学部(夜間)に入学 
国鉄を退職し、中央大学法学部卒業 
昭和 33年 挑戦4回目にして初当選し、昭和生まれ初の代議士
(日本社会党所属)となる(以後当選10回) 
昭和 35年 民社党結党に参加 
昭和 49年 民社党書記長に就任(国鉄改革・電電公社民営化に取組む) 
昭和 60年 民社党中央執行委員長に就任 
平成 元年 民社党常任顧問に就任 
平成 9年 「勲一等旭日大綬章」を受章 
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2.松島悠佐
 軍事のはなし(13)「軍事の透明性その2」  
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前回軍事の透明性について、軍事には本来秘匿性が求められており、透明性を求めても
限界があることを書きましたが、視点を変えて民主主義国家の状態を見てみますと、透
明性は相当に進んでいます。

これには二つの視点があり、一つは相手国に対する信頼醸成のためであり、他の一つは
自国民に対する理解・コンプライアンスを得るためです。

相手国に対する信頼醸成ついては、90年代後半の東西冷戦時代から引き継がれてきたも
のです。当時は、東西ドイツの接点で軍事力が対峙した危険な状態が続いており、特に
相互不信から戦争に突入することを避けるため、信頼醸成の措置が採られていました。
例えば、自ら先制攻撃をしないことを明言し、戦略構想を明確にしたり、更に軍事費や
戦力配備の状況なども、相当のところまで公表し、さらには、大きな演習など大部隊が
集結する際には事前通報する等、誤解から戦争を誘発しないように努力していました。
その努力のほとんどは、アメリカを中心とする西側諸国の措置であり、ソ連・中国など
の東側では、秘匿状態が続いていたのはご承知のとおりです。

他方、自国民に対して軍隊の状態を努めて公表し、国民の理解を得る施策が重視される
ようになったのは、テレビが発達し、戦場の悲惨な状況を国民が茶の間で見るようにな
ってからのようです。夫や子供が戦っている戦場の実相を、国民が正しく知ることを求
め始めるようになったヴェトナム戦争の頃からでしょう。

この傾向は年とともに強くなり、91年の湾岸戦争で米軍は、司令部内にプレスセンタ
ーを設け、作戦の推移や戦闘の状況を、毎日詳細に報道するほか、従軍記者を同行し戦
闘の様相を取材させています。03年のイラク戦争ではその傾向がさらに顕著となり、
空母にも取材陣を乗せ、最前線にまで同行取材を許し、戦場の実状や兵士の活動を、直
接国民に伝える努力を払っています。

戦争は、人の殺傷を合法的に認めた唯一の行為であり、当然ながら平素の社会生活とは
違った規範で動いています。だからこそ、国民が疑念を持たないように、真の姿を広報
しなければならないのでしょう。このような視点から、軍事にも透明性が求められてい
ます。

もう20年も前になりますが、東西対立が激しかった時代に、西ドイツの防衛駐在官と
して勤務し、NATO(北大西洋条約機構)の演習を度々研修する機会がありました。
演習は基本的に公開で、同盟諸国の関係者はもとより、相手方のWTO(ワルシャワ条約
機構)からもソ連を筆頭に視察団が来るのが通常でした。

西ドイツ軍の演習公開に対する姿勢は非常に積極的で、演習という場を利用して、軍の
活動を正しく広報することに大きな狙いを置いていました。ソ連はじめ東欧諸国の視察
団に対しては、NATO諸国がヨーロッパ防衛のために強力な共同体制を採っているこ
と、軍は十分な錬度を持っていること、そして国民の支持が厚いことを演習によって示
し、それを認識させることに狙いを置いていたようです。また国内向けには、「徴兵制を
維持してまで、なぜ軍隊が必要なのか」「なぜ民有地を利用して、大規模な演習をしなけ
ればならないのか」などの疑問に答えるのが演習公開の狙いのようでした。

今民主国家では、軍事に対しても、ますます透明性が求められる時代になっており、積
極的に広報し透明性を高めることの効果を、基本から理解することが大事になっていま
す。

わが国では、毎年発行される防衛白書をはじめ、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画
などが公表され、その他にも新聞社が発行する装備年鑑や防衛ハンドブックなどを見れ
ば自衛隊のほとんどのことが分かるようになっています。その点では優等生です。
ただ行き過ぎがあります。もう2年半前になりますが、イラク派遣の国会審議の中で、
派遣部隊の編成装備、なかんずく携行する装備について、「無反動砲」「個人携行対戦車
弾」の射程や威力、さらに自衛のためだけに使用する際の抑制的な射撃の要領、加えて
迫撃砲は携行しないことなど、野党は執拗に追求し、派遣部隊の姿は丸裸になりました。
これでは、テロ組織に対してわが自衛隊の弱点を教えているようなものであり、これか
らテロやゲリラの攻撃を受けるかも知れないイラクに行くのに、何という非常識なこと
をするのだろうかと、憤りを禁じ得ませんでした。
前回申し上げた、中国の脅威があるかないかを閣議決定するのと同様、これも軍事音痴
から来ているのでしょうが、国家の政策として軍事問題を判断する政治家は、少なくと
も軍事の基礎的な意味ぐらい理解して欲しいものです。(06・06・13記)

松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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3.伊藤武
 村上ファンド事件の本質とは 
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今回の村上ファンドの根底にある問題は、いわゆるファンド投資用語で言う「スタイル・
ドリフト」ではないかと思われます。村上ファンドは日本の「アクティビスト」ファンド
のはしりであり、日本の旧態依然にはびこる時代錯誤的な企業慣習と、金融機関を中心に
もの申さない株主行動を改革し、企業経営を株主の利益と一致させる目標を掲げていまし
た。ところが、いわゆる企業に脅しをかける「グリーンメイラー」に変身したのではない
でしょうか。即ち、米国のスティ−ルパートナーズがユシロ化学やソトーに対し敵対的株
式投資を行い、内部留保資金を配当としてはきださせ、株価を吊り上げたのと同類のファ
ンドであるという解釈です。公開市場で、怠惰な経営をしている会社を狙い打ちし、潜在
的な企業価値を引き上げようとすることは、市場経済では、当然で好ましい行為です。ス
ティールパートナーズにも見られように、企業資金をただ眠らせ全く効率利用をしないこ
とは、経営者としてあるまじき行為です。ところが、グリーンメイラーやハゲタカファン
ドが胡散臭く見られるのは、自己利益のみを追求し、投資利益を絞りとってしまえばお終
いだからです。
 
村上氏の記者会見で他に何を言ったかは別として、「お金儲けしていけないのですか」の
コメントが毎回テレビに映される個所です。ファンドの使命はお金儲けして、ファンドの
投資家にリターンを提供することです。但し、問題になるのは、どういう手法でリターン
を稼ぎ出すかです。ファンドの投資目標は必ずファンドの目論見書に明記されます。ファ
ンドの投資方針の手法のことを業界用語では、投資スタイルと呼びます。長年、村上氏に
対する評価は、資本市場の改革者で、表向きではなくても、多くの賛同者を得ていたのが
事実です。日銀の福井総裁もその一人ではなかったのではないでしょうか。そのような状
況下で、福井総裁が村上ファンドに投資したとの理解であれば、悪いどころか、大変好ま
しい投資でしょう。
 
村上ファンドは、初期の時期はせいぜい¥40億程度のファンドであったのが、今回のス
キャンダル発覚時点では¥5,000億弱の規模になっていたと報道されています。常識
に考えても、ファンドが現在と発足当時と同じ方針の運用を行うのは不可能です。当然投
資スタイルは変身しています。
 
成功しているファンドのファンドマネジャーにとって、多額の新規ファンド資金流入に直
面し、既存の投資スタイルを継続できなくなれば、選択肢は二つです。既存の投資スタイ
ルを保持するため、新規ファンド資金受け入れず、ファンドをクローズにするのがその一
つです。でなければ、投資スタイルを変更し、多額の資金で運用できるファンドへ変身を
遂げるかです。ヘッジファンド業界で、ファンドマネジャー評価を行う場合、投資スタイ
ルはファンドマネジャーの基本的な投資哲学であり、専門投資家が考慮する最も重要な要
因です。ファンドのパフォーマンス評価を行う時、例えファンドの値上がり率が期待以上
に高くても、投資スタイルから乖離すれば、ファンドの売却要因になります。このことを
業界用語では、スタイルドリフトといいます。即ち、約束した投資手法から逸れると言う
意味で、ファンドの運用に対する信頼性が失われます。
 
マスコミでこれだけ騒がれながらも、残念ながら、今回の村上ファンド事件で、ファンド
の投資スタイルに触れたコメントは聞かれません。村上ファンドへ投資した専門投資家は、
当然彼のファンドの投資スタイルが、ファンド資金の急拡大とともに、変身していたこと
は熟知していたはずです。その背景には、いかなる投資方針でも、村上氏の手腕に信頼を
託してきたのでしょう。そのリスクのもとに投資していたので、ファンドが崩壊しても仕
方がありません。勿論、違法行為を行ってそれによる損失は別問題ですので、これについ
ては損害賠償の問題に発展するでしょう。
 
「お金儲けしていけないのですか」といった村上氏対して、言えることは以下です。ファ
ンド運用者はそのファンドに投資した投資家に対し、最大のリターンをもたらすことが使
命です。お金儲け以外に何でもありません。但し、ヘッジファンドはいずれも投資ガイド
ライン(投資スタイル)が設定されており、投資家はそのスタイルを選考し、ファンドマ
ネジャーがスタイルに忠実に運用出来る能力を信じて投資を行います。村上ファンドは、
村上氏の投資手腕が高い評価を受け、運用しきれない多額の金額のファンドになってしま
いました。何故かと言うと、ファンドの規模と成績は、村上氏自身の報酬に直結するから
です。ヘッジファンドの平均的な手数料は、運用報酬として運用資産の2%、それ以外に
値上がり率の20%を成功報酬として支払われます。¥40億のファンドの運用手数料は
¥8,000万にとどまります。ところが¥5,000億のファンドですと、運用手数料
だけで¥100億となります。それにもし、一年間の投資リターンが20%となれば、成
功報酬は¥200億となり、報酬総額は¥300億となります。社員数がごく少数で、こ
れといった設備投資も必要としないファンド会社が大企業以上の利益を上げることが可能
です。しかも、ファンド投資家の損失は差し引かれませんから、ファンドマネジャー自ら
が大きな損を出すリスクは全くありません。やはり村上氏も完全に節度を失い、お金と脚
光に目が眩んでしまったのでしょう。

 ヘッジファンドは性格上、金額が大きくなればなるほど、運用利益を計上することが困難
になります。なぜならば、株式ファンドであれば、株価が非効率的に安く放置されている
企業に投資し、何らかの方法で、株価を正常値に引き上げれば、普通以上の利益が出ます。
ヘッジファンドは、そのような市場の非効率性に隙間投資をするファンドです。規模が大
きくなれば、そのような市場非効率性の隙間に投資するチャンスは無くなってしまいます。
従って、ヘッジファンドはほとんど例外なく、ファンドの投資スタイルを全うするには、
投資資金の規模をあらかじめ制限し、その規模で運用し、その規模に達するとファンドを
クローズし、新規投資家からの資金の受け入れを停止します。ファンドマネジャーは自分
の特殊運用能力の範囲内で運用すべきであり、良識あるファンドマネジャーの多くはその
通りに実行しています。その意味で、村上氏の凋落は、いずれ、なるべくして凋落してし
まったと言えるかもしれません。違法なインサイダー取引を、うっかりしちゃったと言う
ことは本心でしょう。しかし、村上ファンドの規模が¥40億とか¥400億程度であっ
たら、そのような方向には逸れることはなかったでしょう。

伊藤 武:
英国ケンブリッジ大学経済学修士
ジャパンベンチャーパートナーズ創業パートナー
企業コンサルティング、投資銀行及び投資顧問業務に従事。
UBS投信投資顧問株式会社社長、ソロモン・スミスバーニー証券会社マネジング・
ディレクター歴任。
35年間に亘りニューヨークと東京で国際投資銀行業務の実績を積む。 
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて65
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それとは反対に、富岡課長は連合艦隊の先任参謀・黒島参謀とは意見を異にする。
「軍令部は全海軍作戦を大局的に見て、まず南方要域の確保に重点を置いていたか
ら、いきおい投機的なハワイ作戦に、虎の子の空母六隻を全力投入することには反
対していたので、空母三隻ぐらいならすぐOKを出したのである。黒島参謀は、私
との折衝のテクニックのためか、『連合艦隊案が通らなければ山本司令長官は辞職さ
れる』とまで言った」という。                
この中で気になる点が二つ出てくる。その第一は、米海軍のハワイ全周索敵飛行
が何故突然中止されたのか?という点である。
ロバート・A・シオボールド退役米米海軍少将が書いた「真珠湾の審判・・・真珠湾奇
襲はアメリカの書いた筋書きだった」(中野五郎訳。講談社)の序文に、ハルゼ
ー元帥が次のように書いている。
「我々は長距離偵察機には、惨めなほど不足していた。(中略)(PBY飛行艇は)旧
式で速力ものろく、もし広い洋上を三六〇度の全方向にわたり連続的に索敵飛行を
実施させるならば、ただでさえ足りない機材と乗員をくたくたに疲れきらせる他に
はなかったのである。その上、我々を更に苦しめた困難は、このPBY飛行艇の搭
乗員の大多数を大西洋方面の戦線に出動させるために、訓練せよという本省からの
命令であった。このような事情と、航空母艦ヨークタウンが米本国東海岸へ移動配
置についたのが相まって、我々の既に手薄な人的、物的戦力は、はなはだしく弱体
化していたのだ。
 しかしながら、もしも我々がマジック(日本の外交暗号電報を解読したもの)を
以前から知らされていたなら、当然三六〇度の全周洋上索敵飛行の実施を命令して
いたことであろうし、またそのためにはどんな無理をしても、機材と乗員が損耗と
疲労の極点に達するまで、この索敵飛行を強行していたであろう」
 これでかなりのナゾが解けてくる。米国政府は、日米交渉を継続する振りをしな
がら、着々と「第一撃」を加えさせるような段取りをしていたのである。その一つ
が「進入経路上の索敵飛行の中止」であり、第二が、空母「ヨークタウンの温存処
置」であった。
次に、気になるのが知米派といわれていた山本五十六大将が、南方作戦遂行を助
けるため、という理由で、何故米国民の「厭戦気分」を一気に覆すほどの「大バ
クチ」を決断したのか?という点である。勿論山本大将は「対米通告」が攻撃の
30分前になるように慎重に配慮したことは知られているが、結果として、当時の
在米大使館員たちの怠慢で1時間20分も遅延し、米国民の「反日感情に火をつ
けてしまった」のは承知のとおりである。富岡氏が述懐したように、山本五十六
連合艦隊司令長官の「ハワイ作戦成功劇」の裏には、陸軍の協力があったのであ
り、それがあって始めて海軍は空母六隻を全力投入できたのであった。
ところでわが国内には、今でも何かというと「陸海軍間の対立」という図式が先
行する傾向にあるが、開戦前の極めて重大な時期に、陸・海共に人を得て、協力
関係が円滑だったというこの事実は、再認識する必要があろう。しかも、今次大
戦の結果として海軍は、当初の華々しい「戦果」が国民受けしたためか、今でも
国民の間に人気が高いが、他方陸軍は、東條元首相を筆頭に、その責めをすべて
負わされて沈黙しているように思われる。
対ソ戦に備えた国家戦略を軸に築き上げられてきた陸軍は、「太平洋戦域」にお
いては、その実力を十分に発揮できぬまま「散華・消滅」していった・・・
ところで話題を山本元帥立案の「真珠湾攻撃」に戻すが、この作戦の採用によっ
て、日本海軍の伝統的な戦略が根本的に変更されたこと、ならびにあれほど天皇
陛下はじめ、対米戦を回避しようとしてきた政府の努力を「踏みにじる形」で、
いきなり米国領であるハワイに奇襲攻撃をかけたのか?の疑問は解明されない
ままである。そこで気になるのが、通説では「半年ほどは存分に暴れて見せます」
と言ったことになっている、荻外荘での当時の近衛首相と山本長官との会談の中身である。
 私の仮説では、この時の近衛首相との会談で、山本長官は見事に近衛首相の“罠”
にはまり、太平洋上で待ち受けするという海軍戦略を突然破棄して、真珠湾攻撃、
すなわち「対米戦争」の決心を披瀝したのではなかったのか?つまり、対ソ戦を回
避させようという近衛首相周辺を固めるコミンテルン一派の影響もあり、「対米戦」
を“唆された”のではあるまいか?               (続く)
 
佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信 
 硫黄島の壮絶な戦い-日本人の叙事詩として永遠に
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梯久美子(かけはし くみこ)著の『散るぞ悲しき』を読んだ。2006年第37回大宅壮一
ノンフィクション賞受賞の作品で去年の夏出版されていたが、僕は知らず今頃本屋で見つ
けたのだ。なかなか著者の視点、切り口がこの手の本として斬新で大変感銘を受けた。

Wikipediaによると;
栗林 忠道(くりばやし ただみち、1890年(明治23年)7月7日 - 1945年(昭和20年)
3月26日)は、日本陸軍の軍人。長野県埴科郡旧西条村(現長野市松代町)出身。旧制長
野中学出身。米国とカナダの駐在経験があり、陸軍の中では珍しい米国通だった。国際事
情にも明るく、対米開戦にも批判的だったとされるが、硫黄島の戦いで米軍との激戦を指
揮し、最後は自ら200名の兵士と共に突撃を行い戦死した。
 
この本を読んで、栗林の硫黄島での戦いというのが、日本人のいわゆる「美学」である万
歳突撃玉砕といった悲劇的な顛末いわゆる精神論的な戦史ではないことを僕自身が確認し
て(現に上記のWikipediaですら何か突撃だけが突出していて誤解する)、こういう合理
性に富んだ軍人の側面こそが危機に置いて必要であって、われら世代がしっかりと受け止
め次世代につないでいく必要があると思い、この本とは重複になるが、読まない人のため
にここに纏めることとした。当時戦勝国アメリカ軍人が日本のどの司令官が最も優秀であ
ったかとの問いに、口を揃えて栗林と答えるという、すなわち22平方kmの島を三倍もの
米軍の精鋭海兵隊の猛攻を水も食料もままならぬ兵士を率いて一ヶ月半も防衛したのだか
らそんな司令官はあとにも先にもいないということである。現に第二次大戦の四年間で海
兵隊には名誉勲章が84個与えられている。このうち硫黄島関連がなんと27個である、
四年間の大戦のうちたったの一ヶ月半の戦いで30%を占めるのである。

著者がこの栗林に注目したのは、家族との交信のなかで、死を覚悟して『自宅のお勝手の
隙間風を心配して、修理して来なかったことを悔いている』と書いている姿にあの時代の
死を直前にしての他の英霊とは異なる点で、これが著者の興味の原動力になったという。
確かに特攻で散っていった英霊たちの遺書には、私的な世界を書くとしても子供への愛情、
世話になった両親や妻への感謝であって、お国の為に殉ずる気持ちを淡々と書いたものが
多い。僕たちは、それを特攻たちの大義のために死ぬ気持ちと忸怩たる苦悩との葛藤とし
て受け止め、そこに含まれる意味を汲み取って感動するのである。栗林は何時死ぬかもわ
からないので死への覚悟の手紙は一通ではなく何通もあるが、とにかく家族への気配りは
細やかで、意外性がある。
 
僕は栗林が陸軍で数少ないアメリカ留学組であり、単身といえどもアメリカでの生活を通
じかなりアメリカへの理解と尊敬を深めた点が、この家族愛にも現れていると見る。アメ
リカの健全な家庭ほど家族中心の生活を送っており、妻思いであり子煩悩なのである。
これはフィクションであるが浅田次郎の『壬生義士伝』の吉村貫一郎が東北に置いてきた
家族を思う侍の心に通じるものがあるので、日本もそうかもしれないが。

栗林はエリートの条件である陸軍幼年学校出身ではないハンディもあり、ドイツ留学組が
幅を利かす陸軍において、対アメリカ戦に反対から、硫黄島に「左遷」されたという説も
ある。あのサンフランシスコオリンピックで国際的人気を集めたバロン西竹一中佐が同様
陸軍のアメリカ嫌いの勢力の妬みから硫黄島に飛ばされたと同様に。
 
どんなルサンチマンがあろうと栗林は硫黄島を死守することは、本土防衛の鍵であり、一
日でも長く守ることこそ作戦の肝であることを帝国軍人として自覚していた。栗林個人に
とってはかかる不条理な転属への思いがあれば、あのような死より苦しい渇水の中の地下
道作業よりも、むしろあっけない万歳突撃、玉砕のほうがよほど二万人の兵士とともに楽
であったに違いない。でもそこが栗林の偉大さでありプロフェッショナルな軍人だったの
だ。

アメリカ軍は当初5日の勝負と考えていた。それは戦争の定石である米軍上陸水際での総
攻撃とその後の万歳攻撃であわせて5日が精一杯だとの読みである。だが栗林は海軍の反
対を無視して上陸水際攻撃をせずに陣地に米軍をひきつけたのだ。Wikipediaによると、そ
の陣地は連日水に飢える兵士が、地熱と硫黄ガスに耐えながら島中に張り巡らした洞窟を
利用した地下陣地である。計画では坑道は地下で全島を結ぶことになっており、最も深い
ところで12mから15m、しかし、地下の猛烈な湿度や温度、そして酸化硫黄ガスにより兵
士は短時間しか作業に従事できなかった。加えて米軍の潜水艦による妨害によって物資が
思うように届かないなどの理由で計画は遅れ、結局坑道は全長28kmの計画のうち18km
程しか完成せず、また摺鉢山への坑道も僅かなところで未完成のままで米軍を迎え撃つこ
とになった。これらの状況にも関わらず、戦闘が実際に始まってみると地下坑道は所定の
役割を十二分に果たすことになる。

栗林は兵士と同じ割り当ての水と三度の食事で劣悪な条件を共にし将校としてのいっさい
の特別の待遇を拒否した。その姿に兵士たちは感動してかかる過酷な作業を続けることが
できたのだろう。そして過酷な状況にあって、兵士にとっては死ぬほうがどれだけ楽であ
ろうにも関わらず、一日でも長く生きて米兵と対峙し島を守ることを説いたのだ。渇水は
草に光る夜露にも口をつけたいほどのものだったらしい。

帝国軍人にはえてして大言壮語で現実を見ずまた見ないふりをして、結局真実が隠されて
しまうという、それは僕たち日本人の精神構造の特質で反省せねばならない点でもあるが、
栗林は傑出した合理主義を持ち合わせた冷徹な軍人であった。それに加え自己抑制の効い
たストイックさでもって部下に接した。栗林こそ僕たち日本人が永遠に忘れてはならない
軍人としての逸材である。陸軍には栗林以外にも僕たちの心の琴線に触れる軍人が多くい
る。僕たちはこれらの軍人の鑑を語り部として後世につないでいかねばならないと思う。

クリントイーストウッド監督の硫黄島が撮影中である。渡邉謙が出演するとのことだが、
果たして栗林中将はどのように描かれているのだろうか。アメリカ軍もこの日本軍の戦い
ぶりを敵ながらあっぱれと高く評価しており、日本軍に対する尊敬の気持ちがあると思う
ので、侮蔑するような場面はないと信じたい。

硫黄島の美談に関しては桜井裕子氏が『硫黄島で奮戦した益荒男たちに捧ぐ』として昨年8月
19日9月2,8日にメルマガ27号に栗林中将、29号30号に市丸利之助少将を中心にそれぞ
れ描いており、本文と重複するところもあるがバックナンバー
http://www.melma.com/backnumber_133212で再読できる。硫黄島の戦いの叙事詩は風化し
ないように何度も何度も語って語りすぎることはない。

最後に栗林の辞世の句として
国の為重きつとめを果し得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき
仇討たで野辺には朽ちじ吾は又 七度生まれて矛を執らむぞ
醜草の島に蔓るその時の 皇国の行手一途に思ふ

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.松永太郎
「プロミス」という名のソフトウエア(3) 現代の情報戦争
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どんなコンピューターのデータベース、あるいはデータにも侵入できる万能のソフトウ
エア、「プロミス」を各国の情報機関、捜査機関に売り歩いていた「新聞王」ロバート・
マックスウエルの企業帝国は、しかし、このころかなりの資金不足に陥っていた。それま
で傘下の企業の年金基金から、ひそかに「モサッド」の秘密工作資金へまわしていたのだが、
それもできなくなった。逆にマックスウエルは、イスラエル政府に掛け合い、これまでの
資金の返却を迫ったのである。

秘密工作資金を返却する、というのはあまり聞いたことがない。首相の息子が彼と接触
していたが、当然、断った。このころ、ロスチャイルドの銀行も支援を中止することに決
定したらしい。追いつめられたマックスウエルは「モサッド」を脅迫する、という大胆と
いうか自暴自棄の手に出た。「モサッド」は、もはや用済みどころか有害な人間とみなした。
この新聞王が、大西洋上で、行方不明になるのは、それからほどないころである。

マックスウエルから高額で、このソフトを買った中国情報機関は「モサッド」との共同
作戦で、ロスアラモスのデータベースへ侵入した。このとき核爆弾をテロリストがばら
ばらに分解して運搬できるような方法も入手したという。この情報が入ったときは、CIA
のテネット長官、イギリス情報部MI6のディアラヴ長官らトップが鳩首協議して、「モ
サッド」との情報共有を当面断絶することに決定した、というのであるが、なにか額面
どおりには取れない話である。

筆者が憶測するに、ここには裏があるような気がする。NYタイムズのジェイムス・ライ
ズンによれば、CIAは、ひそかにイランに核爆弾の製造技術を流したようである。これに
よってCIAは、逆にイランの核兵器開発状況をモニターできるからである。ロスアラモス
から「モサッド」との共同作戦で、チャイナに流れた情報が「加工された情報」でないとい
う保証は無い。

2001年10月、フォックス・ニュースは、FBIにもぐりこんだロシアのスパイ、ロバート・
ハンセンが、「プロミスという名のソフトウエア」をロシアの組織犯罪に流していた、と
伝えた。ロバート・ハンセンは、FBIにもぐりこんだもぐらとしては、過去最高の地位
にのぼった男である。この「組織犯罪」というのは、元KGBの連中だろう。そしてこの
「組織犯罪」が、「プロミス」をオサマ・ビン・ラーデンに流したという。つまりオサマ・
ビン・ラーデンは、アメリカを始め、各国の情報機関が血眼になって探している自分自
身の捜査情報をすべて見ることができるのである。

フォックス・ニュースがこれを伝えて、まもなくワシントン・タイムズも追随した。ワシ
ントン・タイムズによれば、ロバート・ハンセンは、死刑を免れるのとひきかえに、過去、
のプロミスの売り渡した先の情報をすべてFBIに提供することに同意した、という。フォ
ックス・ニュースやワシントン・タイムズの報道があってしばらくの後、FBIは、プロミス
の使用を中止すると発表した。各国の捜査機関、情報機関も相次いでプロミスの使用を中
止した。テロリストに「コンプロマイズ」されているソフトは、もはや使い道が無いのであ
ろう。

以上が「プロミス」をめぐる物語であるが、カリフォルニア州のアメリカ先住民族居留地
カバゾンに作られた「ワッケンハット」というアメリカ第二の警備保障会社の施設におけ
る暗い物語もある。しかし、これは実在するかもわからない陰謀組織にまつわる物語なの
で、ここらへんでやめておきたい。
(以上、マイケル・ルパート、ゴードン・トマス、ダニー・カソラロらの本による)。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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4.西山弘道 
 政権末期
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 小泉政権の最後の国会が、まもなく幕を閉じる。自民党幹部のブーイングも何の
その、6月18日までの会期を延長せず、教育基本法改正、国民投票法など重要法
案を軒並み継続審議とし、先送りした小泉首相の真意はいまだにわからない。政権
の有終の美を飾るため、国会よりも華やかな外交日程を優先したのか、はたまた意
中の後継者、安部官房長官への政権譲渡の環境作りなのか、最後まで“変人宰相”
の面目躍如だった。しかし、さすがに“政権末期”の脱力感が永田町に漂ってきた。
重要法案の先送りや、世界的とはいえ株安の進行、そしてある意味で小泉・竹中経
済路線の“先行指標”だった村上Fの崩壊・・・まさに、政権の“晩鐘”を告げる
事象が重なった。

 長期政権の最後はいつも脱力感が停滞した。戦後最長の7年間続いた昭和47年
の佐藤政権末期。栄華を誇った佐藤首相も、最後は権力を失い、“角福戦争”をただ
見ているだけで結局は、意中外だった田中角栄氏に宰相の座を譲らざるを得なかった。
 小泉政権と同じく5年続いた中曽根政権も、その末期は前年の衆参ダブル選挙圧勝
にもかかわらず、売上税法案が廃案となって求心力を失い、退陣を余儀なくされた。

 小泉政権の末期がこれまでの歴代内閣と異なることは、末期でも依然、45%とい
う支持率があることだ。竹下内閣末期わずか3%、同じく森内閣10%と比べたら、
これは驚異的な数字である。当然、小泉氏の美学として、この高支持率を背景に最後
のサプライズを考えているのかもしれない。それはお得意の外交になろうが、よくい
われる3度目の北朝鮮訪問は時間的にあり得ないだろう。イラク・サマワ訪問はあり
得るかも知れないが、パフォーマンスとしては今いちだ。とにかく、このまま“屁も
ひらず”静かに引っ込む御仁ではあるまい。サプライズは必ずあるだろう。

 「小泉内閣の5年間は一体、何だったのか」、政権の総括がそろそろ出てくる時期に
なった。歴代内閣史上に残る、エポックメーキングな政権だったことは間違いないだろ
う。改革政権として構造改革のエンジンをふかし、日本の産業構造を相当程度変えた。
それは、戦後の官僚主導による国家管理型資本主義、護送船団行政を脱して、純粋の
民間型資本主義、すなわち自己責任と自立による自由競争・市場経済を目指したもの
だった。しかし、その路線が果たして正しかったのか。小泉改革の“光と影”、社会的
格差論や地方の疲弊、ホリエモンや村上Fなど行き過ぎたマネー経済の結末などをみる
と、果たして米国型弱肉強食経済でいいのか疑問が湧いてくる。

 5年間の小泉外交についても然りである。
小泉首相が外交の軸足を日米同盟強化に置いたことは間違ってはいなかった。イラク・サ
マワに自衛隊を派遣したことで、どれだけブッシュ政権が感謝したことか、高い評価を
与えるべきだろう。
 しかし、これだけ小泉政権が日米同盟強化に貢献しても、あの国連常任理事国入り問題
をめぐる米国の態度はどうだったか。米国は独自の提案で、率先して日本の常任理事国入
りを後押しすべきなのに、それどころか日本がドイツ、インド、ブラジルの4カ国ととも
に提案した加盟申請案にも冷淡な態度をとった。日本側の外交戦略の失敗もあると思うが、
これが日本の日米同盟基軸外交の冷巌な結果である。

小泉政権の5年間、さらに次号以降で総括を続けたい。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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緊急投稿 奥山篤信
 非常識な福井総裁バッシング
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村上ファンド事件以降、日本の金融界はまさに魔女狩りの様相を呈している、これも全く
論拠を欠いた単に羨望から来た卑しい感情論からともいえる議論がほとんどだ。魔女狩り
の矛先は、日銀総裁就任以来冷静的確な判断に基いて手腕を発揮している福井氏の村上フ
ァンド投資の是非の議論である。民主党の小沢代表までが鬼の首を取ったような、小泉首
相の任命責任論を持ち出している。
果たして福井総裁に落ち度はあったのだろうか?
もともと福井総裁が富士通総研の理事長だった平成10年ごろ、同総研の研究会などに出
席していた当時通産省(現・経済産業省)官僚だった村上氏と知り合い、11年夏に同容
疑者がファンドを立ち上げた際に「応援の意味で」他の総研関係者とともに1人あたり1
000万円を拠出したものである。「引き続き繰り延べ投資しており、キャッシュアウト(現
金化)していないが、帳簿上の利益は納税している。そんなに巨額の利益があがっている
わけではない」と話している。
 
当時想像するに福井氏は自らの信念として、日本の旧態依然な時代錯誤的な企業慣習と、
金融機関を中心に本来の発言もしない株主行動を改革し、企業経営を株主の利益と一致さ
せる目標を掲げていた村上氏の理念に賛同したものと思われる。
 
いったい当時今の村上氏のインサイダー犯罪を予期できたものだろうか?福井氏がこの自
由社会で自らのリスクでファンドに投資することがなぜ問題になるのだろうか? 
道義的にすら責任など全くありえない。
 
問題があるとすれば、日銀の制度として、日銀総裁になる条件としてコンプライアンス上
なんらかの規定を日銀が福井氏に喚起したとして、それを福井氏が故意あるいは過失で満
たさなかったことがあった場合のみ、福井氏の責任は問われよう。でもそんなものは日銀
にもなかったのではないかと今のところ推定される。
 
一流紙、一流放送がこの問題で福井氏の責任を追求したり、脇が甘いということさえも、
全く非常識な大衆受け、それも妬み僻みを惹起する日本のジャーナリズムの痴呆的低レベ
ルを意味するものである。同様野党の頭脳レベルもその程度しかないのである。このよう
な「根拠なき熱狂」は、時間的推移と共に沈静化すると望みたい。
 
さらに付け加えると本来のジャーナリズムがなすべきことは、福井総裁の日銀総裁として
の輝かしい手腕と実績さらに今後日本経済再生に向けてなくてはならない人物であり、こ
のような福井バッシングこそ日本国家の国益を損なうものであることを、冷静に世論に訴
えることである。
奥山篤信
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1.図書室 「チャイナ:増大する脅威」 China: The Gathering Threat.
By Constantine C. Menges. Nelson Current 2005 松永太郎評
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 チャイナに関しては、長い間、日本人は「朝日」やNHKのような、いわば「おためご
かし」の情報しか知らされていなかった。宮崎正弘氏や平松茂男氏のような個人の専門家
の地道で、かつ徹底的な調査・分析によって、チャイナの内部事情や、その戦略を知ること
ができるようになったのは、ごく最近のことと言っていい。

しかし事情はアメリカも同様のようであって、アメリカも、伝統的なチャイナひいきの
ために、その実態は、あまり知られていなかったようである。しかし最近のチャイナの「経
済発展」あるいは「急速な軍事拡大」によって、その実情に関しての関心が高まり、それ
につれて「本音」、つまり、実態をあからさまに記述した本が、日本やアメリカを問わず、
続々と出版されているのは慶賀すべきことである。

 アメリカについていえば、チャイナは、この間、ご紹介したティムパーレイクの本「ね
ずみ年」(The Year Of Rats)などによると、在米華僑などを使って、大規模な情報工作を行
っている。とくに第二次大戦以来、因縁の深い民主党には相当の献金工作も行っている。
日支事変のとき、宋美齢の工作が効を奏したことに習ってか、議会や政府を問わず、その
情報宣伝工作を徹底させており、つねに議会をまわり、第二次大戦当時を思い出させては、
日本に対する敵意をあおるのが(ついでにお金も渡すのかどうか)、チャイナの宣伝工作の
基本戦略あるいは常套手段のようである。

 この本の著者は、ジョージ・ワシントン大学の教授でホワイトハウスやCIAの特別顧問
をつとめた戦略の専門家で、チャイナとロシアの過去から現在までの戦略を分析し、今後
の戦略を予測しようとしたものだが、かなりの読み応えがある。
 著者は、チャイナの戦略を7段階(フェイズ)にわたって分析、予測している。基本的には、
1.経済的に良好な関係を民主主義国と保ちながら、2.貿易収支の黒字、海外からの直
接投資、市場の部分開放などによって、東北アジア、および世界での経済的な地位を
確立する。「力によって屈服させ、金によって誘惑せよ」と江沢民は言ったそうである。
この屈服させるというのは、はっきり言えば脅迫することである。それによってアジア、
および南シナ海の支配権を追求しようとするが、その際、情報機関や政府の配下にある多
くの会社が使われるだろう。すでにパナマ、バハマ、スエズ、ロッテルダムなどにさまざ
まな会社を作り、間接的な支配権を狙っている。とくに重要なのは、言うまでもなくマラ
ッカ海峡の間接的な支配である。
 ここまでは、ほぼ現在までの、あるいは現在進行形の戦略であるが、日本の多くの経済
人が「中国との関係改善」を叫んでいるのを見ると、かなり成功しているのではないか。
 「第3段階」は、著者によれば2008年までに台湾を奪取する戦略である。政治工作、秘
密工作、および本土に多大の投資を行っている台湾の財界人などの協力によって行われる。
あるいは直接的な軍事行動に訴える、と脅迫するが、この場合は 最終的にアメリカとの
戦争を覚悟して行う(つまりブラッフではない)。つまり孫子の兵法にのっとって「アジア
のミュンヘン」を再現する魂胆である

 「段階4」であるが、このとき、チャイナは日本に対し、アメリカとの同盟関係を断絶
するように迫ってくる。かりに「段階3」において、アメリカが、かつてイギリス首相チ
ェンバレンがそうしたように、弱腰で、ひきさがってしまえば、たちまち「南シナ海」を
わが海とするであろう。たとえを続ければ、すべての「北東アジア」は、地理政治的には
チャイナの支配下に入るのである。

 この本に文句をつけるとすれば、日本国内における、「独自の武装を持とう、アメリカに
もチャイナにも屈服したくない」と主張する勢力(そんな「勢力」があったとは初耳であ
るが」を「ウルトラ・ナショナリスト」(つまり極右)と名づけている点である。かなり「共
和党より」な人でも、こうした見解を持つ、とすると、アメリカに対する日本の広報・宣伝
工作は、相当に腹をくくってやらなければならないだろう。彼らはいまだ第二次大戦当時
のプロパガンダのなかに生きているのである。これは払拭しなければいけない
私たちが、戦略的にも「靖国」を譲ってはいけない理由は、ここにある、と思われる、

松永太郎 
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2.図書室 日米開戦の真実 / 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解くby 佐藤 優 小学館
 奥山篤信評
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1941年の真珠湾攻撃直後、大川周明博士が「対米英開戦の理由」をNHKラジオで連日講
演し、翌月に刊行された速記録「米英東亜侵略史」が当時ベストセラーとなった。この本
はそれと博士の「英国東亜侵略史」を収録している。最近サヨクではないかと疑うような
人物が北一輝を書いたり絶賛したりしている。北そのものが天皇制を破壊せんとするスタ
ーリン主義者ということであれば、なるほど左翼系の評論家連が保守面をして北を賛歌す
るのも納得である。同様なぞの外交官佐藤優がこの本で大川周明の「普遍性」(最高の道徳
性をもったアジアの各国の多様性を認めたうえでの共栄圏)を評価し徒に偏狭な民族主義
者でないとその倫理とモラルを讃えている。僕などは、これもあと追いの議論ではないか
とも思うのである。田中均の戦略なども民主主義と市場経済の論理で中国を包囲する東ア
ジア共同体を考えていると論評している。佐藤自体は、逆にこの東アジア共同体に懐疑的
であり、大東亜共栄圏のときと同様の限界を見ている。結局佐藤も強国アメリカとの連携
強化を唱え、力の均衡論理で中国に対峙していくという現実的戦略を取っている。僕など
は田中均の東アジア共同体構想など中国に媚をうることしか脳のない典型的外務省のチャ
イナロビーの属国論としか見えないが、佐藤氏によれば上記の戦略があると評価している、
これも何かの仲間意識なのかよくわからない。

この本あまりピリッとしないが、ありがたいのは大川周明の論文が挟まっている点である。
それだけとしても買う価値はあるのではないだろうか。

奥山篤信
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映画寸評 フランス映画「親密すぎるうちあけ話」 ☆☆☆☆  奥山篤信
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2004年にパリで封切りした映画を日本では今頃上映したものだ。フランス語の題名の
直訳である。(Confidences trop intimes)名匠 パトリス・ルコントの名声に相応しい洒落
たそれでいてアメリカ映画にはありえない複雑で渋みのある映画だ。筋書きが面白い。セ
ラピストを求めて一人の女性が尋ねたのは同じ階に事務所を構える税理士であった。そこ
で女性はいきなり結婚生活の悩みを打ち明けはじめたのだ。税理士はその話に聞き入るあ
まり事務所違いであると言う機会を逸してしまう。なぞの女性はその後も事務所を訪れ、
悩みの夫婦生活や心の奥底を赤裸々に相談するのである。税理士は同じ階にある本物のセ
ラピストへと相談に行く。要は相談にのるほうが、いかに相談者の話(主観の世界)を客
観的に分析できるかということである。セラピストなぞ、実際は素人ですら可能であると
いっているところが面白いのであるが、この独身税理士は「セラピスト」をするうちに自
分の内面をサラピストされていくという展開になる。税理士は引っ込み思案のいわば閉じ
こもるタイプであり、子供のころの玩具を骨董品のように事務所に飾っている。恋愛に関
しても押しがなく、むしろ女性が迫ってきてという受身のタイプである。知らず知らずの
うちにこの謎の女性に惹かれていくのだが大胆な性行動にはでることはない、いじらしい
ような性格である。そのうち単純明快な税理士は完全に、なぞの女性に見透かされる。女
性の神秘性には、馬鹿みたいな男性の単純明快さから見て、いつでも騙されてしまうのは
世の常。むしろ男性のほうがいつも精神的な愛を求めているのではなかろうか。このセラ
ピーを通じての税理士の心の足取りは実は今様にセックスだけに走る世界とは別の、かっ
て存在したよき時代のプラトニックな愛ではなかろうかと思う。女性は亭主と離婚して南
フランスへと去っていく。やっとのことで腰を上げた税理士はそれを追って南フランスへ
と事務所を移転するのだった。この映画、なぞめいた話を、いぶし銀のような輝きを持っ
たパスカルエステヴの旋律が、いやがうえにも盛り立てる。女性の性愛への欲望と男性の
閉じこもった臆病さ、そのプラトニックな感情や心理を見事に音楽で演出してくれる。

最後の場面は、南フランスの新しい税理士事務所での再会そして「セラピー」の場面で終
わる。美しい旋律とともに天井からのカメラが、建築の平面図のようなアングルで二人を
映し出し(しばらくして寝室に消える?)、そこにキャスティングの文字が流れていく。
いつも席を立つ僕だが、流石に美しい構図に見とれた。今度こそ新しい二人の未来がある
暗示のこもったこの場面を是非最後まで席を立たずに余韻を楽しむ必要がある。

ところでなぞの女性を演ずるとても美しいサンドリーヌ・ボネールの奥深い知性のある表
情、絶対にアメリカ大陸には見出せないヨーロッパ人の心の襞の深遠さが感じとれるので
ある。同様税理士に扮するファブリス・ルキーニもヨーロッパならではの渋みである。
この映画こそアメリカ映画と質的世界で競えるヨーロッパ映画の真骨頂ともいえる。ひさ
しぶりに面白いフランス映画を見た。

奥山篤信
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