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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM235話「携帯電話紛失」

2004/12/13

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.235
                      発行部数 1162部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 クリスマスまで2週間を切り、日本ではクリスマスムードもそろそろ
高まっていることと思います。さて、インドネシアはというと、人口の
10数%はキリスト教徒であり、25日のクリスマスは祭日ということ
もあり、モールに行けば、サンタクロース頭巾を被った従業員が出迎
え、吹き抜けにはクリスマスツリーがでーんと立っていたりしていま
す。

 が、「クリスマス=雪=寒い」という日本人的感覚に陥っている私に
は、暑くてコーランが聞こえてくるインドネシアでクリスマスの実感が
ありません。「クリスマス=恋人たちの盛り上がり」なんてこともイン
ドネシアではないので、この6年「そういえば今日クリスマスだったっ
け」ぐらいにしか捕らえていなかったのですが・・・そろそろ街に出れ
ばジングルベルが聞こえてくる日本的クリスマスを送りたいものです。

 今回は、先日体験した携帯電話紛失事件について書いてみました。イ
ンドネシアに来てから6年、100円もしない安物ヘルメット2個しか
盗まれていないことが自慢だったのですが・・・それでは本編をどう
ぞ。


-------------「携帯電話紛失」----------------

 「水嶋さん、携帯電話をなくしていませんか?」・・・外での仕事を
終えて事務所に戻った僕に後輩が声を掛けてきた。聞けば僕の携帯に何
度電話を掛けても通じないらしい。そんなはずはないと思ってかばんを
開けようとすると、チャックが見事に開いており、中にあった携帯電話
が跡形もなくなっていた。雨期になったジャカルタの上空を覆う真っ黒
な雨雲や雷鳴が、傘を持たない僕に事務所へ戻ることを急がせた。地面
を激しく打ち付ける雨音が僕を走らせた。そして注意力散漫になった僕
は携帯電話をなくし、言いようもない徒労感だけが僕の心に残った。

 ジャカルタやバリ島などに住んだことのあれば、携帯電話を紛失した
ことがある方もいると思う。インドネシアは、携帯電話を盗んでも足が
付きにくく、中古携帯市場が大繁盛しているのが紛失の大きな要因だ。
インドネシアの携帯電話の利用法は、テレコムセルなど携帯電話会社の
電話番号のチップと、1枚10万、15万ルピアの通話料を示す13桁
の番号が入ったプリペイドカードを購入するだけのプリペイド式。日本
のように住所や名前を書いて登録する必要がないので、盗んだ携帯電話
を売ってもまず足がつかない。それに、携帯電話が値崩れしにくく、新
しい型であれば、新品価格の50−70%で引き取ってくれるから、携
帯電話屋の軒先には、新品と同じくらいのスペースで購入先不明の中古
携帯が並んでいるし、中古携帯に対する市民の抵抗も少ない。西ジャカ
ルタ・ロキシマスの携帯専門デパートをうろつけば、容貌に似合わな
い高価な携帯電話を売りに来るチンピラ風の男たちの姿が見えるし、夜
になれば、赤斧を持ち、人通りの乏しい大通りで信号待ちする運転手か
ら携帯電話を強奪する赤斧強盗が出没する。こうしたチンピラ風の男た
ちに奪われた僕の携帯は、今ごろ何も知らないジャカルタ市民の手に収
まっているのかと思うと、ますます自分のふがいなさに腹が立ってき
た。

 どうせ戻ってくるはずはないので、最新携帯カタログを入手して帰宅
すると、メードさんが1通の書置きを残していた。「マサトの携帯に電
話したらバスキさん(仮名)という人が出て●●ビルの13階に働いて
いるって言ってたわよ」・・・翌日、僕は半信半疑で●●ビルの13階
に出向き、電話でアポイントメントを取った上で、バスキさんに会うこ
とにした。

 ●●ビルの13階は、インドネシアの某大手企業のオフィスで、いわ
ゆる富裕層に属するインドネシア人たちがネクタイを締めて忙しそうに
働いていた。出てきたバスキさんは、今年の総選挙で汚職撲滅を訴えて
第6党に躍進した急進派イスラム党「福祉正義党」前党首ヒダヤット・
ヌルワヒッド氏そっくりの、あごにちょびひげをたくわえたいかにもま
じめなイスラム教徒然としていて、見覚えのある青色のノキアの携帯を
片手に持っていた。

 聞けば、僕の携帯は、●●ビルの玄関に落ちていて雨に打たれていた
ところをバスキさんが拾ってくれたらしい(つまり先を急いでいた僕が
かばんから社員証をしまいこんでタクシーに乗る際にはずみで携帯を落
としたのでした)。しかも、バスキさんは、信用ならない●●ビルの警
備員や事務局に預けるのを避け、電話を掛けてくるであろう所有者から
の連絡を待つことにし、一番最初に電話を掛けてきた僕のメードさんに
連絡先を教えて、携帯の電源を切っていたという。さらに、僕が所有者
であることを確認するため、バスキさんの携帯電話にかけた時に使った
電話番号と、僕が伝えた僕の会社の電話番号が一致していることを確認
していた念の入れようで、「君が携帯電話の所有者であることが判明し
たから返します」といって、笑顔で僕に携帯を渡してくれた。僕は、イ
ンドネシアではモノを盗まれたり落としたりしたら返ってこないという
概念に凝り固まっていたことを恥じた。日本でも落ちていた財布を警察
に届ける市民がいるように、インドネシアでも売却しても足がつきにく
い落ちていた携帯を拾って返す市民がいたのだった。

 翌日、僕は改めてシュークリーム10個を抱えてバスキさんにお礼を
しに行った。数時間後、「とてもおいしい日本のお菓子を同僚と楽しん
で食べました。アラー(神)はすべてを知っているのです」と書かれた
SMS(ショートメールサービス)が送られてきた。交通違反を見逃
す代わりに10万ルピアを要求する警官、外国人と見ると執拗に賄賂を
ねだる出入国管理局職員、電車やバスに跋扈するスリ、借金をしても絶
対に返さないインドネシア人がいる。けれど、アラーを信じ、誘惑に打
ち勝つインドネシア人もいる。「アラーは何でも知っている」・・・
戻ってきた携帯電話の液晶画面に映し出されたバスキさんの言葉が強く
印象に残った1日だった。

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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
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