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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM230話「零捨十入」

2004/11/01

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.230
                      発行部数 1160部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 個人的な話ですが、最近、インターネットで入手したパソコンの壁紙
をとても気に入っています。同居人はブリトニー・スピアーズなる米国
人の壁紙を飾っていますが、私のそれは、私が大好きな竹内結子が微笑
んでいるもので、パソコンを開くのが楽しみになりました(なんとなく
オタクくさいのですが)。

 そこで思ったのですが、何をやるにもちょっとした変化や工夫をする
だけでずいぶん物事が楽しくなるということ。そういえば、インドネシ
アに来て以来、季節の変化がないことを言い訳に服を買ったりすること
もすっかりなくなりましたが、数年ぶりに壁紙を変えたように久しぶり
に服を買って、友人たちとの飲み会に参加しようかなと考えておりま
す。

 今回は、インドネシアで生活しているうちに無意識のうちに変わって
しまった金銭感覚について書いてみました。同じような心境を持ったこ
とがある読者の皆様がいらっしゃれば幸いです。それでは本編をどう
ぞ。


     -----------------「零捨十入」--------------------

 「3862円のお返しでございます。お確かめくださいませ」

 日本に帰ってコンビニやCDショップでものを買うたび、いつしか僕
はこの言葉に違和感を感じるようになった。むろん、僕の手元にはレ
シートと共に手渡された3862円のお釣りが存在する。文句を言う理
由などどこにもない。けれど、インドネシアで同じような状況の場合、
1桁の単位までお釣りが戻ってくることはまずあり得ないからだ。

 そうしたこの国のおおらかさ(というかいい加減さ)を体感するに
は、タクシーに乗ることをお勧めする。ジャカルタやスラバヤ、バリな
どの大都市のタクシー(その他の地域のタクシーは滅多にメーターを使
わない)には10ルピア(0.12円)単位で料金が表示される。仮に
メーターが8760ルピアの表示のときに1万ルピア札を渡しても、た
いていはお釣りなど戻ってこないし、良くて1000ルピア(12円)
札1枚のみ。「1000ルピアのお釣りよこせ」なんてブルーバードタ
クシー以外のタクシー運転手に言うものなら、露骨にいやな顔をされる
し、「1240ルピア返せ」なんて言うものならば、「キチガイじみた
ケチ」か「インドネシアのことを何も知らない新参者」呼ばわりされ
る。

 インドネシアの大手スーパー「ヘロ」では、石鹸1240ルピアと1
0ルピア単位の価格がついているにも関わらず、合計14万8720ル
ピアの買い物をして5万ルピア札3枚を渡しても1000ルピア札1枚
と100ルピア硬貨1枚しか戻ってこない。しいて付け足せば、レジ係
りの心境次第で、80ルピアの代わりとしての小さな飴玉1個が付いて
くる。

 どうしてこんなことになるかと言うと、インドネシアという国の国民
が最低価格として認識しているのが「100ルピア」だから。かさばっ
てしまう硬貨を嫌い、かつ高級輸送機関の趣が強いタクシーが1000
ルピア単位なのは例外なのだけれど、屋台でナシゴレンをつついてもキ
オス(雑貨屋台)でジュースを買ってもすべては100ルピア単位で動
く。そもそもインドネシアには1ルピア単位のお札や硬貨は存在してい
ないのだ。

 ということは、インドネシアで流通している最小価値の硬貨は100
ルピアと思いがちだけれど、最小価値の硬貨は25ルピアとなってい
る。日本の1円玉を少し厚くしたような25ルピア硬貨は滅多に見ない
のだけれど、たまに機嫌が良さそうなレジ係がくれることがある。気が
良さそうなお姉さんもたまに25ルピアの次に価値がない50ルピア硬貨
を渡してくれる。しかしながら、100ルピア単位で動くインドネシ
ア。25ルピアや50ルピアは1円玉がそうであるように道端に転がっ
ていても誰にも相手にされない。プガメン(流しのギター弾き)やスト
リートチルドレンに渡そうとしても、嫌がって投げ返してくる。そんな
かわいそうな25ルピアや50ルピア硬貨は結局、額面どおり使われる
のかが怪しい募金箱に消えていくことになる。

 ここで不思議に思うことは、10ルピア単位で商品を販売するヘロ
は、誤差なく1日の総売り上げを出しているのかということ。僕は以
前、薬屋やコンビニでバイトしていた経験があるのですが、日本のスー
パーでレジ打ちしていて、レジに打たれた総売り上げとレジの中に残っ
ている金額に誤差があれば始末書を書かされる。10ルピア単位で商品
を販売している「ヘロ」の場合、レジ係の心境次第で飴をあげたり、2
5ルピアを渡したりしたら間違いなく誤差が出るのですが、果たしてい
いのでしょうか? まぁ、そんなことはおおらかなインドネシアの許容
範囲に入っているはずだし、そもそも利用価値のない25ルピアや50
ルピアが廃止されずに今でも流通しているのがいかにも「インドネシア
らしい」のですがね。

 というわけで今の僕は何の考えもなく、8750ルピアのメーター表
示が出たタクシーには1万ルピア札、14万8720ルピアの買い物を
スーパーでしたときは「零捨十入」で1200ルピアのお釣りとともに
飴玉1個を期待するようになった。ちなみに「四捨五入」ならぬ「零捨
十入」とは10ルピア以上なら100桁の数値が1つ繰り上がることを
意味する。ただ、「零捨十入」とは言ってもキオスやタクシーでは「細
かい硬貨やお札がない」といった理由で「零捨百入」(100ルピア以
上で1000桁の数値が1つ上がる)、「零捨千入」(1000ルピア
以上で1万桁の数値が1つ上がる)になるので、細かいお金は常に持ち
歩くように。付け加えると、細かいお金の入手手段は25ルピアや50ルピ
アが入手できる大手スーパーや、たくさんお金を持っていそうな高級店
に行った時に、あえてお釣りをもらうようにして10万、5万ルピア札の高
額紙幣を崩しておくことがインドネシア生活では重要となっている。

 「3862円のお返しでございます。お確かめくださいませ」

 こうして、日本に帰ったときの僕の財布からは1円玉、5円玉が消え
た。「別に4,5円間違っていても構わないですよ」と心の中でつぶや
きながら、何ともいえない違和感のうちに、1円玉はレジの前においてあ
る募金箱に入れ、5円玉は穴があいた硬貨を珍しがるインドネシア人へお
土産としてあげるようになった。もし、日本へ本帰国した際、僕はいつ
までこの行為を続けるのか。きっとこの行為が無意識のうちに行われな
くなったとき、インドネシアの生活スタイルを抜け出し、日本の生活に
順応した自分に気付くことになるのかもしれない。

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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
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