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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM229話「ダンドゥットとクラプトン」

2004/10/25

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.229
                      発行部数 1160部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 断食月も今週で第2週目。私もようやく断食月の雰囲気に慣れ、こっ
そり昼食を取ったり、たばこを吸ったりするのが苦でなくならないよう
になりました。毎年のように書いていますが、午前3時ごろから聞こえ
てくる「サフール」の叫び声と太鼓はやっぱりいいものです。お湯を沸
かしたり、歯を磨いているときとか「サーッフール、サフル」なんて思
わず口ずさんでしまいますし。

 というわけで断食明けの大祭(レバラン)まであと3週間。最大で1
週間以上の休みを取る邦人もいるわけで「豪州で羽を伸ばしてくるわ」
とか「日本に里帰りします」とかうらやましい話を聞く一方、多分3日
間以内の休みしか取れない私は南カリマンタン州バンジャルマシンに行
くことに決めました(ホーチミン行きのチケットは満員で断念しまし
た)。

 バンジャルマシンはマイナーな土地ですが、バリト川に広がる水上
マーケットやカリマンタン1美しいと言われるモスクなどがあります。
「RCTI・OK」のCMに出てくる水上マーケットの風景のとりこに
なっている私的には楽しみなのですが・・・レバラン中も水上マーケッ
トが開いていることを祈るばかりです。

 今週はある乗り物のBGMについて書いてみました。それでは本編を
どうぞ。

 
--------------「ダンドゥットとクラプトン」--------------------

 今年1月、首都ジャカルタに新交通システムの一環として「バスウェ
イ」なるものが誕生した。ジャカルタは、日本のように首都圏の鉄道網
が発達していないから、都心はとにかく渋滞してしまう。そこで、特に
渋滞の激しい、南ジャカルタの繁華街ブロックMと北ジャカルタの中華
街「コタ」間約10キロを結ぶ大通りにバス専用レーンを作って、渋滞
の心配がない交通機関を作ってしまおうというもの。当初は、ジャカル
タの目抜き通りであるスディルマン、タムリン通り(片側5車線)の中
央分離帯寄り各1車線ずつを占領してしまうから、「渋滞がさらに悪化
する」とひんしゅくを買ったけれど、今ではすっかり都心の1つの風景
として定着している代物である。

 香港の下町の雑踏をほうふつとさせる中華街コタの屋台で庶民的中華
料理をつつくのを何よりの楽しみにしている僕も、バスウェイの開業以
来、毎週のようにバスウェイのお世話になっている。大通りにかかる歩
道橋の真ん中にできたスロープを降り、中央分離帯にできた銀色の停留
所でカード型のチケットを購入(どこで降りても2500ルピア)、入
り口でチケット入れにカードを差し込んで停留所の中に入り、5分もす
れば、赤とオレンジ色で塗られた真新しいバスウェイ専用のバスがやっ
てくる。

 バスウェイが開業する前、僕はエアコンつきの1番バス(ブロックM
−コタ間3500ルピア)に乗ってコタに向かっていた。エアコン付き
とはいっても、築20年以上も経っているおんぼろバスで、車掌にせか
されながら、大通りの路肩から、完全に止まっていないバスの乗降口に
向かってジャンプする。中にはプガメンと呼ばれる流しのギター引きや
ら、自作の詩を読むお兄さん、ライターや辞書やキャンディーを売る売
り子が次から次へとやってきて「演奏」やら商品の素晴らしさを語る
「口上」を始める。道路は渋滞し、バスの運転手は延々とばかでかいク
ラクションを鳴らし、車掌は客を乗せるため、行き先の名前を連呼した
り、次の停留所の地名を何度も連呼する。バスは客が乗るたびに何度も
急停止するし、壊れた窓からは車やバイクの騒音がとめどなく聞こえて
くるから、例えるならダンドゥット(インドネシア演歌ロック)のよう
に騒々しく、目的地にたどり着くまで「落ち着き」を得ることなどな
かった。

 けれど、バスウェイには、プガメンや物売りが乗ってくることはな
い。バスの乗降口には警備員がいて、車中の治安に目を配る。冷房はこ
れでもかというくらい効かせているし、窓は完全密封されているから、
通りの雑踏も気にならない。車内の清潔さは保たれていて、何よりバス
専用レーンを走るから、急停止することもなければ渋滞に巻き込まれる
こともない。休日の昼間なら客もほとんど乗っていないから、座席に腰
掛けて、一般車線の渋滞を尻目に周囲の風景を楽しむことができる。運
転手もびしっと背広で決めていて、ときどきしゃれた車内音楽をかけ
る。そんな運転手の1人がかけていたのは田舎臭いダンドゥットではな
く、「ロッド・スチュワート」や「エリック・クラフトン」だった。

 「ロッド・スチュワート」に「エリック・クラフトン」・・・今まで
僕は彼らの歌がインドネシアの風景にマッチするとは思えなかったけれ
ど、なるほど、快適、渋滞知らずのバスウェイの中で彼らの曲をきくと
意外とマッチする。夕日に映えたモナス(独立記念塔)、街路樹からも
れる木漏れ日を見ながら、ロッド・スチュワートがハスキーな声で愛を
歌い上げる。夕闇迫る近代的なビルディング街を背にエリック・クラプ
トンが切なくレイラを歌う。風景は同じはずなのにおんぼろバスから見
るそれとは雰囲気が異なる・・・背広の運転手のにくい心使いに、僕は
思わずうれしくなった。そして、バスウェイに乗るたびに、携帯ラジオ
をONにして昼間ならボサノバ専門局、夜ならラップやソウル専門局か
ら流れる音楽をBGMにジャカルタの風景を楽しむようになった。

 渋滞知らずで乗り心地抜群、治安もいいバスウェイは今後、順次増設
していく計画だと言う。個人的にはゆっくりジャカルタの風景を楽しめ
るバスレーンを支持したいところだけれど、昔、僕が乗っていた1番バ
スは最近、ちっとも見なくなってしまった。「ロッド・スチュワート」
と「ダンドゥット」を比べたら、むろん「ロッド・スチュワート」の方
が音楽的センスも聞きごこちも断然上だけれど、インドネシアに永く住
んでいると、ときどき無性にダンドゥットが聞きたくなってしまう・・
・だから僕はときどき、あえておんぼろバスに乗って、売り子の口上や
車掌の「連呼」に耳を傾けるようにしている。

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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
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