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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM226話「大家族主義」

2004/10/04

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.226
                      発行部数 1148部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 イスラム世界は11月中旬にレバラン(断食明けの大祭)を迎え、大
型連休に入るのですが、その1ヶ月前に当たる今がジャカルタ在住日本
人にとって思案のしどころ。つまり、この大型連休をどう過ごすのか考
えるのですが、レバラン前後は空前の民族大移動で、各種交通機関は満
員、店は休みになるため、1ヶ月前の今から準備を始めなければ、ジャ
カルタで寝正月という羽目に陥りかねないのです。

 というわけで、私もどこに行こうかあれこれ頭を悩ましているのです
が、国内旅行は気が重いので、今、最も気になっているベトナム2泊3
日(私のレバラン休みは3日間)に行ってしまおうかと考えています。
今日、アオザイのベトナム人女性を見る機会があったのですが、やっぱ
りきれいだなぁとうきうきしてしまいました。ジャカルタ在住の読者の
皆様、もしくはインドネシアでレバラン休暇をうまく活用した方がい
らっしゃいましたら、ご一報ください。

 今回は、インドネシア人のある1面について書いてみました。それで
は本編をどうぞ。


--------------「大家族主義」--------------------

 ジョグジャの大学院に留学していたころ、僕は友人の結婚式で知り
合った西ジャワ州バンドン在住の大学生に招かれて、美人の町として名
高いバンドンを訪れたことがある。ジョグジャから夜行列車に乗ること
10数時間、駅で待っていた彼に連れられてミニバスを乗り継ぎ、向
かった先は、彼の下宿先であるタンテ(おじさん・大学講師)の家だっ
た。

 彼のおじさんの家は、小さな建売住宅。同じような家がずらりと並ん
でいる郊外の住宅団地(ルマ・ススン)の一角に位置し、お世辞でも広
いとは言えない。ほかのルマ・ススンがそうであるように狭い庭の先の
玄関をくぐればタイル張りの6畳ほどの居間があって、その先には、
取ってつけたような台所。居間の横には小さな4畳半の部屋が2つ、そ
の横にはバイクを置くガレージがある。日本とは違い、インドネシアの
住宅は、敷地面積をめい一杯使おうとするため、隣家とは壁1枚を隔て
ただけだから、隣家の様子は手にとるようにわかる。近所の子供の泣き
叫ぶ声、水浴びをする水の音。見慣れない訪問客の僕がいるから昼間は
玄関を開けっ放しで、路地を走るバイクや物売りの音がいやでも耳に入
る。家の中は、テレビ、ステレオ隙間を縫うように、背景をぼかしてロ
マンチックに仕上げたおじさん夫婦の写真が並ぶ。結婚し、子供ができ
た一家がようやくマイホームを手に入れた、そんな雰囲気のおじさん
宅。普通なら親子水入らずの生活を送りたいはずなのに、そこには彼を
含め、2人の下宿人がいた。

 インドネシアではバンドン、ジョグジャなどの学生都市を中心に、地
方から出てきた若者が親類宅にやっかいになるケースが決して少なくな
い。しかもその親類が遠縁の場合も多々存在する。大学生の彼にして
も、帰り際にタンテとの関係を聞いたら、「またいとこ」ぐらいの遠縁
なのに、もう半年以上もタンテ宅にお世話になっていると言う。「『ま
たいとこ』が正体不明の日本人を連れて来て泊まらせたうえ、その日本
人が、もう1人の下宿人の部屋を占領し、彼を居間のソファに寝させ
た」、と考えると、僕はタンテや彼に対してさぞかし恐縮してしまった
のだけれど、「日本人が来たって、タンテは近所に自慢していたから、
また遊びに来ればいい」と、彼は笑顔でジョグジャに戻る僕を見送って
くれた。

 ゴトン・ロヨン(相互扶助)、イスラム教の喜捨(富める者が貧しい
ものに財を分け与える)の精神の下、インドネシア的大家族主義は、今
でもあらゆる面で脈々と息づいている。そして、日本人である僕は、こ
うした光景に出会うたび、個人主義がすっかり幅を利かせるようになっ
た日本での経験を思う。母のまたいとこなんて会ったことも見たことも
なければ、またいとこを実家に下宿させる日本人なんて聞いたことがな
い。第一、僕の会ったこともない大叔父に下宿を頼もうとしたところ
で、相手にもされないだろう。

 けれども、インドネシア人女性と結婚した日本人男性からこんな話を
聞いたことがある。結婚後、日本人と結婚したことを知った奥さんの親
戚が、彼の家に次々と訪れた。「息子を専門学校に出す金がない」「母
親が病気になった」「バイクを買い換えたい」「家が雨漏りする」・・
・義母(奥さんのお母さん)のいとこから、義母の兄弟の息子に至るま
で、「親戚」を名乗るあらゆる種類の人物が金を借りに彼の元を訪れ
た。僕は、「親戚」たちをなだめ、励ましながらやんわりと借金を断る
方向へ誘導する彼の姿を何度も見たことがある。

 また、東南アジア一帯には「アモック」なる言葉が存在する。直訳す
れば「切れる」。村人が集団で泥棒にリンチを加えて虐殺、ちょっとし
た若者のけんかがきっかけで村同士の抗争に発展するニュースは、毎日
のように新聞をにぎわす。「集団で復讐」・・・日本人とはやや違った
インドネシア人が持つプライドを日々、垣間見ているだけに、僕は大家
族主義の裏側に潜む闇にちょっとした怖さを感じるようになった。

 僕は今でも、いやな顔1つせずに歓待してくれたバンドンのタンテの
顔を忘れることができない。そして、スハルト政権崩壊後の混乱でア
モック化した暴徒に、乗っていたバスが囲まれ、通り沿いのデパートが
襲撃されるのを尻目にすごすごと逃げ出したことも忘れない。正直に言
うと、インドネシアもしくは東南アジアに共通するであろう大家族主義
に触れるたびに、うらやましく思う反面、足が付かない海面で浮き輪を
つけて泳ぐような恐怖感に襲われてしまう。

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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
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