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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM218話「バナナの葉」

2004/07/12

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.218
                      発行部数 1105部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 ASEAN外相会議にインドネシア史上初の直接大統領選挙と行事目
白押しでメルマガをサボってしまった先週(申し訳ありません)。やっ
と大統領選が終わって山を越えたと思ったら、曽我さんがジャカルタに
やって来て、日本のマスコミが大挙して押し寄せ・・・慣れ親しんだ光
景や知り合いの人たちが、次から次へとNHKに映るたびになんとなく
不思議な感じがするのですが、大きなニュースが続いているジャカルタ
であります。

 でも、曽我さんがジャカルタでジェンキンスさんと再会しても、ジャ
カルタはごく限定された地域を除き普通のジャカルタであるし、インド
ネシアは先週も今週もインドネシアであります。曽我さんの話は日本メ
ディアに任せて、私はこれからも日常生活でふと思った「インドネシア
らしさ」を書いていこうと思っています。

 私の実家の栃木の田舎町の隣町、国分寺町にインドネシア料理店「カ
ンプン・バリ」ができて、母が早速試しているそうです。かんぴょうの
町にもついにインドネシア料理店ができたと言うのもなんとなく感慨深
く・・・日本に帰っても、インドネシア語で話せ、インドネシアを思い
出せそうなので、店長と友達になって常連になろうと思っています(グ
ドゥックあるのかな)。それでは本編をどうぞ。


-------------------「バナナの葉」-------------------------

        「ブンクス、ヤ(包んでね)」

 ジョグジャカルタに留学していたときも、ジャカルタで社会人をして
いる今も、1人で屋台で昼食を取るときに、僕はいつもこの言葉を使
う。屋台が人気で混んでいるとき、時間がないとき、そして1人で屋台
で飯を食べるのがさびしいとき・・・別にお持ち帰りにして包んでも
らっても料金に変化がないし、屋台主もいやな顔をせずに、きゅうりと
にんじんと小さな唐辛子の酢漬けも、チリソースのサンバルも、きちん
とビニール袋にホチキスで止めてくれて、黒いビニール袋に入れてくれ
るブンクスを多用する。

 でも、ジャカルタに来て、ブンクスをすると興ざめしてしまうことが
多くなった。ナシゴレンもミーゴレン(焼きそば)も、マルタバ(オム
レツ)も、ジョグジャ名物グドゥックも、みんな白いプラスチックケー
スに入れて渡してくるからだ。だからジャカルタのどぶ川や歩道には、
アクア(ミネラルウォーター)のプラスチックボトルと同じくらい、白
いプラスチックケースがそこかしこに投げ捨てられ、オレンジ色のつな
ぎを着た清掃員がせっせと片付ける。

 僕が、ブンクスの包みにこだわりを持ったのは、ジョグジャで留学生
活を始めてまもなくのころだった。留学仲間で大変お世話になった日本
人女性の案内で、民家の軒先に出ているジャワ料理の屋台でブンクスし
てもらったとき、ご飯の上にチャプチャイ(野菜炒め)やテンペ(発行
大豆の揚げ物)が乗った僕の晩飯を包んでいたのは、バナナの葉っぱ
だった。日本人がその昔、おにぎりを笹の葉で包んだように、インドネ
シアの伝統では、バナナの葉で食物を包む。透明プラスチックより笹の
葉でくるまれたおにぎりに「らしさ」を感じるように、テンペやチャプ
チャイを包んだバナナの葉に、僕はインドネシア料理の「らしさ」を感
じたわけだ。

 それから、僕は、ジョグジャで「バナナの葉でブンクスしてくれる」
屋台探しを始めた。グドゥック、サテ(焼き鳥)、ボールに盛られた
ジャワ料理が並ぶ屋台・・・昔ながらの町並みが残る王宮周辺の屋台で
はいまだにバナナの葉で包んでくれるし、バナナの葉で包んでくれる屋
台にはずれが少ないことを僕は知った。「バナナの葉は殺菌効果がある
んだよ」そう教えてくれた屋台主もいたし、わら半紙の内側にサラン
ラップを張り付けた紙でブンクスしてくれる屋台に比べ、アリや髪の毛
が入っている割合もずいぶん少ないことが判明した。いつしか、僕の頭
の中には「バナナの葉を使う=清潔」という情報がインプットされた
し、バナナの葉で包んでくれた晩飯をバイクのハンドルにぶら下げて、
ジョグジャの街中を走ることが、いかにもジョグジャらしくて、そのと
きの僕の心はずいぶんうきうきしていたものだった。

 けれど、かつての日本がそうだったように、インドネシアでも時と共
に合理化が進む。バナナの葉よりプラスチックの値段の方が安くなって
くるわけで、首都ジャカルタでバナナの葉で食べ物を包んでくれる屋台
に出会うことはほとんどない。ジョグジャでは、わら半紙の内側にサラ
ンラップを張り付けた紙で食物を包んで輪ゴムで止めるのが主流になっ
たし、ジャカルタでは、店の名前が入った白いプラスチックケースが主
流になっている。僕の仕事場の周辺の屋台の質が悪いのかどうかは知ら
ないけれど、アリや髪の毛が入っている割合は明らかに増えた。屋台近
くの通りにはプラスチックケースがいくつも捨てられ、犬や猫が残飯を
漁っている。当然、周りの匂いも良いものとは言えない。

 そんなとき、僕はジョグジャのバナナの葉っぱでブンクスしてくれる
あのジャワ料理の屋台を思い出す。いすに座るのではなく、床に敷いた
ござに座って包んでくれるのを待つジョグジャの屋台。バナナの葉はい
ずれ土に返るし、すえた匂いはしない。「都会にはありとあらゆるもの
が揃っているけれど、庶民レベルでは、伝統が残る農村部の方が清潔な
んだよな」・・・今日もまた、プラスチックケースでブンクスされた弁
当を見るたび、僕はそう小さくつぶやいている。

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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
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