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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM215話「メードさんの結婚式」

2004/06/14

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.215
                      発行部数 1107部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 先週、体調不良(風邪引いたうえ、腰と首をやられました)のため、
SENYUMを1週間、お休みをしてしまったこと、まずは深くお詫び
いたします。私の場合、疲れを感じると、首と肩、そして腰に来て最後
に強烈な頭痛が襲うのがパターンになっています。そんなときは、こち
らでも売っているサロンパスを張ったり、インドネシア人がそうするよ
うにコインを腕や背中に押し当ててゴリゴリしたり(ミミズ腫れになり
ます)するのですが、何でインドネシア人はゴリゴリするようになった
のでしょう?インドネシア人に聞いても生まれたときからそうだったと
いうし、今のところ答えが出ていません。知っている方がいらっしゃい
ましたら、ぜひご一報くださると幸いです。

 今回は、身内であった幸せな出来事について書いてみました。それで
は本編をどうぞ。

------------------「メードさんの結婚式」--------------------

 昨年8月から、僕のアパートで週2回、掃除と洗濯をしてくれるジョ
グジャ出身のメードさん(31歳・186、187号参照)が、結婚す
ることになった。日本ではすっかり普通のことになったけれど、インド
ネシア女性にとって、31歳での結婚はかなりの晩婚に値する。メード
さんと話していても恋人の話なんてぜんぜん聞かなし、奥手といわれる
ジャワ人女性の中でも奥手そうだったので、知り合いのインドネシア人
男性を紹介しようと気をもんでいたのだけれど、僕の取り越し苦労でし
かなかったわけだ。何はともあれめでたいこと、取るものも取り合え
す、バティックシャツで正装した僕と同居人は、結婚式が行われるメー
ドさんの自宅へ向かった。

 メードさんの家は、僕のアパートから車で50分もかかるジャカルタ
の西南のタンゲランとの境界線上にあった。大通りから路地に入り、庶
民の家々の間を迷路のように縫うバイク1台がやっと通れるほどのGA
NG(小道)を抜けると、小さな長屋の軒先に数人の若者が集まってい
た。飾り気のないコンクリートで作られた家々の軒先で、暇そうな若者
たちがのどかに世間話をしているのはカンプン(集落)でよく見られる
光景のひとつ。道に迷いかけていた僕が、何気なく結婚式の場所を尋ね
たら、この長屋の家の1つが結婚式場、つまりメードさんの家だと教え
てくれた。

 最近、インドネシアの富裕層は、ホテルや集会場で披露宴を行うこと
が多くなったけれど、一般的なジャワ人の場合、結婚式は新婦の家で行
う。僕の知る限り、そうしたジャワの結婚式は、来客に場所を知らせる
目印として竹製の飾りが軒先に飾られ、庭にテントが建てられて、大勢
の来客が近隣住民のイブイブ(おばちゃんたち)が共同で作った食事を
ほうばりながら談笑している。民家の居間に入れば、きんきらきんの傘
などで大げさに飾られたソファが置かれ、ジャワの伝統衣装に身を固め
た新郎新婦が、客1人1人と握手し、あいさつを交わす。けれど、メー
ドさんの小さな長屋は何の飾り気もなく、ただ普通の若者たちが軒先で
ノンクロン(だべる)しているだけ。だから僕はメードさんの家を見つ
けられずにいた。

 若者たちの案内でメードさんの家に入る。そこには、ジャカルタ庶民
の民家がそうであるように灰色のコンクリート床。そこにジョグジャか
らバスで1日掛けてやってきたメードさんの両親が、借り物の猫のよう
にちょこんと座っていた。居間は5人も座れば、満員になってしまうく
らい狭い。長屋の作りも居間の奥に4畳半くらいの狭い部屋が1つある
のみ。そこにお化けのQ太郎のような分厚い化粧を施したメードさんが
やってきた。小麦色の肌が真っ白になり、分厚くアイシャドウを塗った
メードさんは、いつもとずいぶん印象が違う。けれど、肝心の旦那が出
てこない。「旦那は?」と尋ねると、同じ長屋の2つ隣の部屋にいると
いう。つまり、隣の隣に住む若者と付き合っていたわけで、家が狭いか
ら旦那と自分の家の両方で、来客を迎えていたわけだ。

 メードさんの家が満員だったこともあり、旦那の家へ案内される。1
0年前に東ジャワから出てきた旦那は現在、日系車両メーカー勤務。日
本風に言えば、和歌山からメーカー直営の東京の修理工場に就職して1
0年の従業員といったところだ。家のつくりはメードさんの家と全く同
じだけれど、テレビもあればステレオもあるし、奥の部屋では熱帯魚も
買っている。職もあるし、まじめでおとなしそうだし、金銭的にも困窮
していなそうなので僕は安心する。付き合った経緯について尋ねると、
メードさんがうれしそうに一方的に話す。日本の青年たちと同じように
仲良しグループで行動しているうちに仲良くなってデートを重ねたこ
と、メードさんが意外にもてていてバイクレーサーなどとも付き合って
いたこと、信頼して身を任せられるからプロポーズを受け入れたことを
大きな声で話す。もてなしの品はピーナッツやスイカに東ジャワの伝統
菓子に水といったシンプルなものだったし、来客もつなぎを着たままの
作業員や非番のメード仲間たちで決して身なりはいいとは言えなかった
けれど、ジャカルタの下町の人情と言うものが良く出ていたし、地方か
ら上京して首都で暮らすインドネシアの若者たちの生活の一端を垣間見
たような気がした。なんとなく昭和30年代に地方から東京に出てきた
若者たちを見るような気分だった。

 メードさんの家から再び歩いたカンプンの小道では、うだるような太
陽の光の下、白と水色のスカートを身にまとった女子高生のグループと
すれ違い、おばちゃんが庭に水をまき、親父が竹製の椅子に腰掛けてた
ばこを吸っていた。そんなカンプンで新婚生活を始めるメードさん夫婦
を想像し、「こりゃ絶対かかあ天下になるな」とメードさんの新たな一
面を見て思ったけれど、しっかりもののメードさんとまじめでおとなし
そうな旦那の2人はきっとうまくやっていけるだろうということで僕と
同居人の意見は一致した。シンプルではあるけれど、隣近所の生活や表
情が見える人情のある集落、出来れば僕も日本で家庭を持ったらこうい
う場所に住んでみたい。

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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
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