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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM212話「ジョグジャ的スカテン」

2004/05/17

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *        vol.212
                      発行部数 1103部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 先々週末、私はジョグジャに里帰りしたのですが、私がジャカル
タへの家路に着いたまさにその時間、マリオボロ通りで大変な事件が発
生していました。161号で取り上げた私いちおしのお土産物店「ミロ
タ・バティック」が火事で全焼してしまったのです。

 ジョグジャ滞在中、私は、バイクでマリオボロを南下中、何気なく
「ミロタ・バティック」を見て、日本から来た友人を何度も連れて行っ
たり、日本一時帰国前にお土産を買うため、何度も通っていたことを思
い出していました。今、私の部屋の置物の多くもミロタバティックで
買ったもの・・・1日も早いミロタバティックの再建をお祈りします。

 今回は、そんなジョグジャに行った目的について書いてみました。そ
れでは本編をどうぞ。

----------------「ジョグジャ的スカテン」-------------------

 首都ジャカルタから45分、おんぼろのライオンエアー機(211号
参照)が高度を下げると、機内右側の窓からは、九十九里浜を髣髴とさ
せるジャワ南岸の海岸線が見えてくる。海岸線に別れを告げ、プルタミ
ナの石油基地を通り過ぎると、ジョクジャの環状線リングロードが姿を
見せる。ミニカーのように通りを往来する車、ジョクジャの大通りマリ
オボロ通り、その先に長方形の壁で囲まれた王宮、クリドソノ競技場・
・・ジョグジャのアジスチプト空港は市街地に近いため、飛行機は、
ジョグジャ中心部すれすれを降下して、滑走路に滑り込む。狭い空港の
滑走路の端でUターンをしている飛行機のわずか50メートル先には、
編み笠を被った親父2人がのんびりと田んぼに腰を下ろしてタバコを吸
う姿が見える。タラップを降りると、僕が2年半前まで何度も見た風景
が広がっていた。

 ジョグジャは僕が思っていたほど、変わってはいない。友人の車から
見るジョグジャの景色は、広告の看板が増えていたのが気についたけれ
ど、朝方、ソロ通りを市内中心部の西へ向けて自転車をこぐ労働者たち
の姿は、2年半後の今もあった。やけに新しくなったタクシーは、デザ
インに田舎くささを残しているとはいえ、すいぶん立派な車体になった
けれど、バイクが道路の主導権を握っていることは相変わらずだった。
アヤムゴレンのニョナ・スハルティの看板、トゥグ交差点・・・すべて
は僕の記憶のままだった。

 約2年ぶりにジョグジャに里帰りする決心をした理由。それは、ナビ
モハマド聖誕祭までの1ヶ月間、王宮前広場で年に1度開かれるジョグ
ジャの夜市、スカテンのニュースをたまたま見たことだった。そこに
は、サーカスのテントの代わりに、僕がこれまでのスカテンで見たこと
のないエアコン付きの立派な巨大テントが建っていた。アナウンサーは
「時代と共にスカテンも変貌してしまった」と嘆いていた。

 ジョグジャにいた3年半、僕はスカテンを週に1回は見に行った。1
970年代後半、まだ僕が幼稚園に上がるかどうかに連れて行っても
らった夜市の感覚、今でも記憶の片隅にとどまっている淡い思い出が現
実となって僕の視界に飛び込んでくるからだ。屋台のアセチンランプに
光る昔なつかしのロボットや拳銃のおもちゃ、今にも崩れ落ちそうなセ
ンスのかけらもない小さなメリーゴーランドにやけに早く回る小型の観
覧車、サーカスのテントに入れば、空中ブランコを失敗する芸人、日本
ではすっかり時代遅れとなった芸の数々。巨大な樽の中では遠心力を
使って壁を走るバイクがけたたましい音を立て、あやしい蛇小屋では、
蛇を鼻から口へ入れた親父が、これ見よがしに蛇の頭を食いちぎる・・
・あのレトロでどことなく怪しいけれど、心の隙間を埋めてくれるよう
な懐かしさや安らぎを与えてくれるスカテンが僕は大好きだった。

 だから、僕は友人のバイクを借りて、王宮前広場に向かった。マリオ
ボロ通りは相変わらずの混みようとはいえ、ジャカルタのスディルマン
通りの10分の1程度。路肩では、ベチャ親父がうたた寝を決め込み、
アンドン(馬車)がポコポコひづめをならして通り過ぎるのんびりとし
た時の流れは相変わらずだ。通りの路肩にできた臨時駐車場にバイクを
止めると、油の香ばしい匂いが辺りを包んでいた。広場の周りに軒を連
ねてドーナツやタフゴレン(豆腐揚げ)を売る屋台は2年前と変わって
いない。僕は少しだけほっとした。広場の外側からは、小型の観覧車も
メリーゴーランドも見えた。

 けれど、正面左側には、問題の真っ白なテントがそびえていた。25
00ルピアを払って中に入ると、そこはジャカルタで何度も見た物産展
会場が広がっていた。ニセモノの時計、銀細工、高周波マッサージ器、
最新タバコのプロモーションに各種民芸品を売るブースが次から次へと
顔を出す。ロボットや拳銃のおもちゃやあやしいお菓子を売る店はな
い、むせ返るような暑さもない、ジョグジャらしさが何も感じられない
・・・僕は足早にテントを抜けることにした。

 テントを抜けると、そこには2年前と同じ、いつものスカテンが2分
の1のスケールで広がっていた。くだらなさでは定評のあるお化け屋敷
は健在。バイクの荷台にフライパンとスピーカーを取り付け、怪しい話
術で子供だましのエスゴレンを売る親父も健在(髪を伸ばしていた)、
ブリキでぜんまい仕掛けで動く船のおもちゃもあった。けれど、サーカ
スも蛇小屋も樽バイク小屋も消えていた。子供たちの一番人気は、昔の
日本の地方遊園地にもあった電動式のゴーカートに取って代わられてい
た。

 サーカスの代わりというわけではにだろうけれど、イルカショーのテ
ントがある。VIP席2万5000ルピア。VIPはいるか2匹が入る
小さなプール脇に置かれた折りたたみ椅子。かぶりつき席である。

 ぽつんとVIPに座っていることに恥ずかしくなってきたころ、予定
時間を15分遅れてイルカショーは始まった。が、出てきたのはイン
コ、まぁここまでは予想通り。インコがあっけなく引っ込んだ後は、な
ぜか、かわうそ2匹のバスケットショー。「かわうそかよ」と思ってい
たら、バクソー屋台売りに扮した2匹は、小型屋台をプールに投げ入れ
リタイア。ついにイルカ登場か、と思いきや今度は巨大なアシカ君が・
・・結局、正味1時間のうち、イルカショーは15分もなかったけれ
ど、火の輪をくぐり子供を乗せたゴムボートを誘導するなど演技は合格
点。ちなみに3万ルピアと、ジョグジャ価格では高額な値段で、イルカ
とキスして写真を取れるコーナーもあり、子供たちに混じって僕も参戦
した。イルカの口はめちゃくちゃ硬く、勢い良くほっぺに口をぶつけら
れ、しばらく痛みをこらえる羽目になったのはやっぱりジョグジャ的で
した。

 気付けば、飛行機の時間が差し迫り、僕は急いでバイクに乗って友人
宅へ向かう。以前の半分の大きさとはいえ、僕が描くスカテンがまだ半
分残っていたことに正直、ほっとする。時代の流れといえばそれまでな
のかもしれないけれど、懐かしさと幻想的なジョグジャ的スカテンだけ
は変わらないでもらいたい、そしてできれば来年はくだらないサーカス
を見て、心の片隅に残る淡い記憶を思いっきり揺さぶってみたい。久し
ぶりのジョグジャツーリングを楽しんだ僕は、「またジョグジャに来よ
う」と決めていた。

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              発行者 水嶋 真人
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