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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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SENYUM202話「あいあい傘」

2004/02/03

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *        vol.202
                      発行部数 1120部

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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 札幌雪祭りの写真がこちらの新聞をにぎわすくらい、日本は今冬真っ
盛りだと思いますが、そんな冬の日本を3年ぶりに味わうべく、来週か
ら10日間ほど、一時帰国することを予定しております。

 3年前の冬の帰国時には、ストップオーバー先のバンコクで荷物が
ジャカルタに置き忘れられていたことが判明したため、薄着のシャツ1
枚にジーパン、サンダルという初夏のいでたちの中、恥ずかしい思いを
して、宇都宮線を下り、帰途に着いたのですが、今回はきちんと手荷物
の中にジャンパーを用意しておくし、サンダルはやめておきます。しか
し、日本の冬に順応できず、風邪でダウンなんてことにならないことを
祈るばかりです。

 そのほか、帰国前には出張があるため、誠に勝手ながら8、15、2
2日の3週間お休みをいただきます。次回配信は29日となってしまう
のですが、日本でさまざまな用事があり、休暇の帰国とは言えないた
め、どうかご理解ください。1回くらいは温泉に・・・でもバスクリン
で我慢します。

 今回は、ほんの小さな話題ですが、これぞインドネシアと勝手に考え
ていることについて書いてみました。それでは本編をどうぞ。

■8日は出張、15、22日は日本一時帰国のため、お休みをいただき
ます。次回配信は29日を予定しておりますので、ご了承ください。

--------------------「あいあい傘」----------------------

 展示会場ですべての用件を終えて外に出ると、猛烈なスコールが真っ
黒な空から降り注いでいた。

 僕と同じように展示会場を出た数百人のインドネシア人たちは、天井
のある出口付近の地べたに腰を下ろし、たばこをふかしたり即席の友人
とよもやま話を繰り広げている。誰も時間を気にしているそぶりを見せ
ないし、スコールが通り過ぎるのを待つのはさも当然の顔をして、見知
らぬ者同士、「雨が降っていますね」とか「どこから来ましたか」と
いった質問を合図にたわいもない会話に身を投じ、そこらじゅうの床に
腰をおろす。それがインドネシアの儀礼であることは十分に理解してい
ることだし、僕もたばこに火をつけてスコールが通り過ぎるのを待とう
とする。けれど、たばこを1本まるまる吸い終わっても、雨は一向にや
みそうもなければ、僕には次の用件が待ち構えている。僕は意を決し
て、折りたたみ傘を取り出し、降り続く雨の中を野外へ飛び出していっ
た。

 大通りに向け、歩を進めていく僕の視界にはある種、こっけいな風景
が広がっていた。つい数分前にスコールがやってきたのだろう、人1人
がやっと入れるくらいの青い簡易電話ボックスの列には、身を縮めて雨
宿りをするオジェック(バイクタクシー)親父たちの列がある。竹の骨
組みの上にビニールを被せただけの屋台には、10数人のビジネスマン
が身を寄せ合ってスコールが過ぎ去るのを待っている。これが日本な
ら、間違いなく雨宿りの代償に屋台の食事を注文するはずなのに、誰も
何も注文せず、ただ屋台の中で腕を抱えるだけ。商売上がったりの屋台
主も黙ってそれをやり過ごす。プガメン(小遣いせびりのギター弾き)
たちは、狂ったようにスコールの雨の中を上半身裸で走り出し、仲間に
馬鹿にされながらも笑顔を見せる。と、屋台の中にいた1人の若者が僕
の傘の中に入り込んできた。

  「大通りのバス停まで連れて行ってもらえないかい?ちょっと油断
していたら雨が降ってきたんだよ」

 そう言い訳してはにかむような笑顔を見せた彼に、僕は一瞬躊躇しつ
つも、彼をバス停まで連れて行って上げることにした。

 彼は大通りまでの約300メートルまで、とにかくあらゆることを質
問しまくった。それが傘に入ることを許されたお礼であるかのように。
「君は何人か、そうか日本人か。日本はいいところ、俺もいつかは日本
に行って働いて金を稼ぎたい。結婚しているのか?してない?じゃぁ恋
人はいるのだろう。いない、うそつけ、日本人ならいくらでもインドネ
シア人の恋人が出来るはず、なんなら俺が紹介してあげようか?」・・
・インドネシア人男性は初めて会ったばかりの者に対しても、まるで人
見知りをしないし、なれなれしいほどにあらゆる質問を浴びせ掛けてく
る。僕はそんなインドネシア人の男たちの話を聞いていると、愉快にも
なれば、不愉快にもなるのだけれど、傘を差すこと以外用事のない今の
僕は愉快な気分になる。当初は硬かった僕の表情も自然と和らぐ。こう
してほんの5、6分ですっかり打ち解けた彼は「今度遊びに来いよ」と
言い残し、バス停の人ごみの中に消えていった。

 と、今度は、バティックシャツに身を包んだ高級官僚風の親父がバス
停の中から僕の傘の中に割り込んできた。「君は歩道橋を渡るのだろ
う。わしを反対側のバス停まで送ってくれないか」・・・こうして再
び、ひとしきり僕の傘の中にはいらなければならない「言い訳」をした
後、親父の質問が始まる。出身地、結婚や恋人の有無、年齢、職業、宗
教、インドネシア滞在歴・・・どうしてインドネシア人は簡単に外国人
の僕の傘に平気で入り込めるのだろう、なぜに同じような質問を浴びせ
掛け、会話に熱中できるのだろう、そして僕はなぜそうしたインドネシ
ア人を受け入れているのだろう・・・結局、バスに乗るまでに3人のイ
ンドネシア人(すべて男性)と相合傘をした僕は、雨に濡れるジャカル
タの町並みを眺めながら思案に暮れていた。

           ・・・・・・・・

 「というか、本物のインドネシア人で雨期を何十年も経験しているの
だから、外出の際は、傘くらい携帯しろよ」と大いなる疑問が頭をよぎ
りつつも、それは無理だと確信している。折りたたみ傘を持たないこと
がインドネシア人だと思うし、スコールに降られて他人の傘に飛び込
み、それが許されて(許して)しまうのもまたインドネシア。こうし
て、今日もスコールがやってくるたびに、どこかで子供たちの傘貸し屋
さんが繁盛し、見知らぬ男性と外国人の相合傘が生まれていくのを想像
すると、なんだかうれしくなる。

■8日は出張、15、22日は日本一時帰国のため、お休みをいただき
ます。次回配信は29日を予定しておりますので、ご了承ください。
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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
発行周期:週1回  
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