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YOGYA滞在記-SENYUM-

インドネシアが好きな方にこの国の本当の雰囲気を感じてもらえるよう、ジョグジャ、ジャカルタ滞在5年の私が1日本人としての視点を交え、ニュースなどでは伝わってこないインドネシアの魅力について綴っています

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YOGYA滞在記-SENYUM-vol.095

2001/12/23

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*YOGYA滞在記 -SENYUM- *       vol.095
                                   発行部数 915部    
             
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*このメールマガジンはインドネシア、ジョグジャカルタ市での3年半の
留学を終え、首都ジャカルタで、もの書きの仕事に就いた”私”が日々
体験し、感じたことをつづったものです。

<筆者からの一言>
 「スハルト入院!」17日夜、このニュースを見た僕は、1つの時代
が終わりかけていることを改めて浮き彫りにしたものだなぁとなんだか
感傷的になってしまいました。やっぱり、インドネシアの大統領という
職を解かれると、それまでのうん十年間、大統領として張り詰めていた
心が一気に解けてしまって、急激に老け込んでしまうものかとスカルノ
初代大統領の場合と見比べていろいろ考えてしまいます。

 スカルノ氏は実質的に権力を失ってから5年後に病気で亡くなってい
ます。一方のスハルト氏は来年で4年・・・なにはともあれ、独立の
父、開発の父の次はどんな人物の時代が続くのでしょうか?(メガかア
ミンかはたまたユドヨノさん?)

 そんなこと書いた95号が今年最後の送信になります。私はクリスマ
スも正月も仕事で、色気も何もない年末を送りそうです。このため、3
0日、1月6日の送信分を年末年始休みとさせていただいて、1月13
日からまた通常通り、週1回配信を行っていきます。来年で3年目を迎
えるYOGYA滞在記を来年もよろしくお願いいたします。それでは読
者の皆様よい年末年始を!


--------------------「ワヤンの世界」--------------------

 僕がもの書きになってからというもの、日々インドネシアで起こる
ニュースを会社のパソコンでパチパチ打っているたびに、僕の心はしば
らくの間、出口のない迷路の中をさまようことになる。別の言い方をす
れば、影絵で有名なワヤンの幻想的な世界に迷い込んだかのように。そ
の理由は、インドネシアで起こる政治、経済ニュースが、イン
ドネシアの国民性を如実に現しているからだ。

 例えば、ついこの間逮捕されたスハルトの三男トミーのために、銃弾
70発を隠し持っていたとして逮捕されたスハルト元大統領の孫、アリ
・シギット。アリさんは逮捕されてもうずいぶん経つけれど、トミー逮
捕に関心が向いていて、誰もがアリさんに対する関心を失いかけていた
ころ、ニュースの隅っこに「アリ・シギット被告に懲役2ヶ月22日」
と出ていた。逮捕されたころは、アリは死刑だ!なんて論調が新聞の紙
面をにぎわしていたのに、懲役2ヶ月22日は軽すぎるなんて声は鳴り
を潜め、「すべての人に満足のいく判決」となったそうだ。そういえば
アリさんは、警察に内緒でこっそり抜け出し、病院に逃げこもうとした
こともあったし、気絶したふりをして取調べから逃げようとしたことも
あったっけ。

 かくいう、トミーもトミーだ。スハルト元大統領にめちゃくちゃかわ
いがられたおぼっちゃまは、彼の経営する大型スーパー「ゴロ」の不正
土地取引事件で懲役1年6ヶ月が下されると、当時のワヒド(グス・
ドゥル)大統領に1億5千万ルピアを賄賂として送って恩赦を請求。こ
れを、金だけはちゃっかり奪ったグス・ドゥルに断られると、だだをこ
ねるように地下に潜伏してしまった。

 警察は、トミーとつるんでいるのかいないのか、だらだらとトミー捜
査を開始。その間、お金持ちで甘いマスクのトミーは、隠れ家を転々と
しながら、女優たちと密会してお遊び。挙句の果てには有罪の判決を下
した裁判長を殺す始末。それが、前警察庁長官の退任直前にあっさりと
逮捕された。もう、これは警察庁長官の退任に合わせて、裏工作があっ
たとしか言いようがない。トミー逮捕にいつも陽気なソフヤン・ヤコブ
警視総監が、逮捕されたトミーを従えて、ますます陽気に雄弁を振るっ
ている記者会見を眺めていて、僕はいいようのないばかばかしさとイン
ドネシア的な温かみの葛藤の中にいた。どうせほとぼりがさめたらト
ミーは釈放されるんだろ・・・

 さらにいえば、スハルト一家はインドネシアの正月ともいえる、断食
明けの大祭、レバランを家族一家で過ごしたいから、その日だけ、ト
ミーに外出許可を与えてくれなんて、一般の罪人なら絶対許されないば
かげた請求をした。トミーもトミーで、取調べに嫌気がさしたのか、
仮病を使って病院に逃げようとした(その後の健康診断でうそがばれ
る)。

 そのほかにも、闇に葬り去られかけている事件はいくらでもある。ス
ハルト元大統領の汚職疑惑は、スハルトが入院したのをいいことに大統
領特赦で赦されそうな雰囲気だ。ワヒド前大統領の汚職捜査も進展がな
く、今、話題の食糧庁汚職事件2もまるで、安っぽい推理小説。事件に
関与する高級官僚が責任のなすりつけを繰り返すばかりで、一向に答え
を出す気配がない。

         ”一向に答えを出す気配がない”

 実はこれこそが、インドネシアの国民性を如実に現しているんじゃな
いかと、ジャカルタにひょっこり出てきた田舎者の僕は思う。何か問題
が発覚しても、それに対してはのらりくらりの発言(悪く言えば言い
訳)で、問題をうやむやにし、いつのまにか闇に葬むってしまう。

 それをインドネシア政治研究の第1人者、ベン・アンダーソンは、ワ
ヤンの世界と表していた。「ワヤンの世界」・・・それは、あらゆる人
間関係がめちゃくちゃに絡まりあって、奥がまったく見えない、だらだ
らのんびりと続いて、いつまでたっても明確な答えが出てこないのに、
いつのまにやらうまく収まっている世界だ。

 そう、うやむやにしてしまうのに、いつもまにやらうまくいってい
る、それがインドネシアの強みであり、魅力なんじゃないかなとこの4
年余りのインドネシア滞在で僕は思うようになった。日本はあらゆるこ
とにきっちりしていないと気が済まないから、書類1枚忘れただけで、
戸籍謄本もだしてくれない。でも、インドネシアは”しゃあないねえ”
といって、書類を1枚忘れても、提出期限を遅れても受理してくれる。
もちろん理論上は日本が正しいのかもしれないけれど、その日本は不況
に苦しみ、人々の心が下を向いている。でも、当のインドネシアは頭が
痛くなるような問題を山のように抱えていても3%成長を成し遂げ、決
して裕福でない一般庶民の心は現実を忘れたかのように上を向いている
のだ。

 インドネシアの考え方と日本のそれのどちらがいいなんて、僕が決め
ることなんてとてもできはしない。でもいざ、危機が訪れたときに、強
いのはインドネシアのほうじゃないかなって僕は思う。

 日本人って考えすぎで、打たれ弱いのかな?それとも、インドネシア
人が能天気なだけなのかな?・・・毎日会社のパソコンでインドネシア
のニュースをパチパチ打ち込んでいる僕の悩みもまた、ワヤンの世界の
ように奥がまったく見えないものなのだ。そんな僕の心を知っているの
かどうか、となりでは笑い声をあげながら談笑するインドネシア人ス
タッフがいた。そのインドネシア人スタッフたちを見て、僕はやりきれ
ない気分になった・・・僕はもしかすると、どこかで、能天気なインド
ネシア人をうらやましく思っているのかもしれない。

●30日、1月6日分は、誠に勝手ながら冬休みをいただくため、次号
送信は1月13日になります。ご了承ください。
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              発行者 水嶋 真人
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創刊日:2000-07-09  
最終発行日:  
発行周期:週1回  
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