九州・沖縄

奄美・沖縄エッセイ

奄美・沖縄についてのエッセイです。とくに、発行者が関心を寄せる、琉球王国の文化、現在の奄美・沖縄についての随想、とくに、ウタ、書籍、などについて、思うままに記していく、かなりわがままなマガジンです。

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amaoki-essay088

2018/11/08

  ◆□▼ 京都のクワズイモ▼□◆

ハイタイ。古都は、本格的な秋を迎えていま
す。それにしても、今年の夏は、猛暑、大雨
に台風と、自然の脅威を身近に感じた季節で
した。私が職場の通勤に使う叡山電車は、9
月初めの台風21号の影響で、貴船駅から鞍馬
駅までの一区間でしたが、最近まで不通でし
た。森の緑の中を、秋には紅葉のトンネルを
走ることで知られる電車ですが、その森の木
々が台風で多く倒れたせいで、開通までにた
いへん時間がかかりました。そのせいで、京
都の風物詩である鞍馬の火祭も縮小せざるを
得ませんでした。デレビが報じたところによ
れば、線路沿いだけではなく、山中の木が広
い範囲に渡り、倒れているのでした。

さて、ここ数年身近に感じていることを少し
書きます。沖縄や奄美の島々の島々の植生の
なかで特徴的なクワズイモという植物があり
ます。wikipediaによれば、サトイモ科の常
緑性多年草で、大きな葉が特徴で、大きなも
のは、傘にして人間が入れるほどのものがあ
ります。観葉植物としても親しまれているも
のです。クワズイモの名は、「喰わず芋」で
、見た目がサトイモに似ているのですが、食
べられないので、そのように呼ばれています
。茎や根茎には毒性もあるそうです。

奄美や沖縄の島々には、これがいろいろなと
ころに自生していて、南国的な景観を形作っ
ています。たとえば、奄美で生活した日本画
家田中一村の代表作の一つは「クワズイモと
蘇鉄」です。一村もその南国的な姿に惹かれ
たのでしょう。私もこの植物が好きで、ある
夏に京都伏見の自宅近くのスーパーの片隅で
鉢に植えられて売られていたのを見つけて買
って帰り、自宅の玄関先に置いて、南国的な
緑を楽しんでいました。でも、屋外に置いて
おいたため、冬の寒さに葉がしおれてしまい
ました。それで、仕方がないので、鉢から出
して庭の片隅にそのまま放置していました。
そうすると、次の年の夏、気付くと、根茎部
がしっかりして根付き、これから小ぶりでし
たが、緑の葉がたくさん生えてきました。

Wikipediaによれば、クワズイモの分布は、
中国南部、台湾からインドシナ、インドなど
の熱帯・亜熱帯地域で、日本では四国南部、
九州南部を経て琉球列島に分布しているそう
です。つまり、京都では、基本的には屋外で
は生育しないことになります。でも、ウチの
庭のクワズイモは、冬の最中には、葉が萎れ
てしまうものの、暖かくなるとまた葉を茂ら
します。根元を確認すると、根茎が大きくな
ってしっかりとしてきています。自宅のクワ
ズイモの成長を数年間見つめながら、やはり
地球の温暖化ということを考えざるを得ませ
んでした。

そう思っているところに、先日、職場にバッ
クナンバーが積まれていた『トリーノ』とい
う、日本野鳥の会が発効する小冊子あり、こ
の2018年秋号をめくっていると、以前にこの
メルマガでもとりあげたことのある写真家・
文章家藤原新也の文章を見つけました。そこ
には、房総の海に面した山中の藤原の自宅に
、沖縄から移植したクワズイモが「冬には萎
れかけていたものが立派に育つようになった
」と書かれていました。藤原は、自宅近辺の
身近な自然、たとえば、海岸の生き物や昆虫
なども含めた、生態系の変化について、地球
温暖化との関係が触れていました。

千葉にある藤原の自宅でも、クワズイモのみ
ならず、やはり沖縄のゲットウという植物(
これは可憐な白い花を付け、葉からはとても
良い香りがします。これで餅米を包んで蒸し
た餅は沖縄ではよく食べられます)、さらに
雑草の伸びが倍になったことを踏まえて、藤
原は「東京、千葉あたりの緯度も亜熱帯化し
ているということであり、異常と見なさなけ
ればならない」と述べています。私は、この
文章を読みながら、やはりそうなのかという
思いを強くしました。とくにここ数年の身近
な環境の変化には目を見張るものがあります。
これについて藤原は「こういった自然の定点
観測をしていると、この地球の変化というも
のは学者が机上で言及する予測関数を裏切っ
て、ある時を境に急激に変化するのではない
かとの恐れをすら持たざるを得ない」と述べ
ています。

今回のメルマガを読んで頂く方にも、藤原の
指摘のように、ここ数年の急激な気候の変化
を感じている方も多いのではないでしょうか。
ただ、藤原の文章のタイトルは「白昼のホタ
ル」というもので、自宅近くの榎木に集って
いる玉虫のことを、「太陽の光を反射してそ
れは昼の蛍のように見える」ので、そのよ
うに呼んでいるのですが、これが気候の変化
にもかかわらず、減らないことに希望を見い
だしています。そして、次のように文章を閉
じます。「私は房総の家に行くと、晴れ渡っ
た真夏にこの『昼ホタル』玉虫がキラキラと
輝き、榎木の大木の周りを乱舞する様子を眺
めながら、『まだまだ地球は死んでいない、
頑張れ』と独りごちるのである。」乱舞を見
たことはありませんが、玉虫は、田舎育ちの
私にも、特別な虫でした。これを捕まえると
、その見た目のように、まるで宝石を手に入
れたようでもとても嬉しかったことを思い出
します。

いずれにしろ、私たちは、身近な自然を通し
て、「自分の目で」気候の変化を見つめなく
てはならないことを、藤原の文章が、そして、
私の自宅のクワズイモが教えてくれているよ
うに思います。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-    
     ■◇■ あとがき ■◇■

他にも、身近なところでは、ウチの奥さんが
育てているアボガドが、鉢の中で大きく葉を
付けています。これもみなさんもご存知のよ
うに、「森のバター」と呼ばれる、熱帯、あ
るいは亜熱帯の、栄養価の高い実が成る植物
なのですが、スーパーで買ってきた実を食し
たあとに、種を水耕栽培して、芽と根が生え
たものを鉢に植え替えたものです。何度か失
敗したようですが、これもやはり、クワズイ
モと同じように、根付いています。

今号を書いているのは、11月6日(配信は8日)
なのですが、昼間は気温が20度を超え、自宅
の窓を開けていていもシャツ1枚で過ごすこ
とができます。このような状態が続けば、今
年の冬はどうなるのでしょうか。風にそよぐ
アボカドを見ながら、大きな気候変動のこと
を思わざるをえません。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

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創刊日:2004-12-03  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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