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地球規模の広がりを見せるHIV/AIDS問題。アフリカなど途上国を中心に、現状と国際社会、市民社会の取り組みの最新情報を伝えるメールマガジン。

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(GAU321号)グローバルファンド前事務局長マーク・ダイブル氏の生きざま

2017/07/23

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★「第321号」目次

●対策・課題別記事、アフリカ以外の地域別記事
・(タイ・バンコク)MSMの感染の89%を削減=HIV感染初期の識別で
・(タジギスタン)タジキスタン政府、ハーム・リダクションにおけるインドの教訓を学ぶ
・グローバルファンド前事務局長マーク・ダイブル氏の信念:3つの疫病の終息のために
●アフリカの地域別記事
・(南アフリカ共和国)暴露前予防(PrEP)の導入進む南アフリカの課題
・(ウガンダ)HIV患者が飢餓と関連の合併症で死亡している

------------------------------------Vol.13 No.19 ---

◆発 行:(特活)アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル3F
・電 話:03-3834-6902
・FAX:03-3834-6903
・電子メール:info@ajf.gr.jp
◆バックナンバー:下記ブログをご覧ください。
http://blog.livedoor.jp/ajf/
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◆本メールマガジンから転送・引用を行う場合は、事前に発行者にご連絡をお願いします。

<対策・課題別・地域別(アフリカ以外)記事>

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(バンコク)MSMの感染の89%を削減=HIV感染初期の識別で
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抗レトロウイルス治療(ART)は、HIV感染の可能性も低下させるものである。ARTは広く使われるようになってきたが、男性とセックスする男性(MSM)の間では感染率がいまだに高い。HIV感染の初期の特徴として、ウイルスの複製が急激に高いレベルで行われること、感染力が強いことがあげられる。そのため、HIV感染初期の状況にあるMSMに早い段階でARTを行えば、で感染を削減することができると考えられる。

タイの首都バンコクで、感染初期からARTを開始したMSM88人を対象とし、早期にARTが導入されなかった場合の予測感染者数と比較した。40人は感染初期の第4世代抗原抗体検査(編集部注)でステージ1と2であった。残りの48人は第3世代の抗体検査法で陽性であったが、ウエスタンブロット法では陰性もしくは不確定、すなわち第4世代検査法ではステージ3であった。この研究前の4か月間におけるコンドームを使用しない性行為は83.7%であったが、ART開始から24週までに21.2%に下がった。感染して1年以内の感染拡大の予測数は、介入なしの場合は27.3、診断後に行動変容のみ起こした場合に8.3、ウイルス量低下のみの場合に5.9、両方満たす場合で3.1だった。つまり、この両方を満たす場合では、88.7%も感染を削減することができたことになる。

結論として、HIV感染初期は感染拡大において重要な時期であり感染初期の段階での早いART開始により、感染を削減するのが可能であることが示唆された。

(編集部注)現在、HIV検査は第4世代まで進化している。第3世代が抗体検査であるのに対し、第4世代は、抗原抗体検査である。これにより、感染しているのに検出できない「ウインドウ・ピリオド」の期間を短くすることが可能になっている。

原題:Acute HIV Infection Detection And Immediate Treatment Estimated to Reduce Transmission by 89% among Men Who Have Sex with Men in Bangkok
出典:Journal of the International AIDS Society
日付:2017/6/28
URL:http://www.jiasociety.org/index.php/jias/article/view/21708

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(タジギスタン)タジキスタン政府、ハーム・リダクションにおけるインドの教訓を学ぶ
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【2017年5月24日、ドゥシャンベ(タジキスタン)発】2017年5月27日から6月2日まで、中央アジアにある旧ソ連の一国、タジキスタン共和国の政府からの派遣団がインドを訪問した。スタディツアーの目的は、政府プログラムと政策の枠組み内でのハーム・リダクション(特に薬物使用者の健康被害軽減)プログラムの実施の方法や、ハーム・リダクションへの資金手当ての方法、また、これらのプログラムの枠内で、NGOがハーム・リダクション・プログラムの中での非医療的なプログラムを実施する場合の資金提供方法について学ぶことである。

派遣団には、共和国麻薬・アルコール臨床センターのマフマドラヒム・マラーホフ・センター長Makhmadrakhim Malakhovを筆頭に、機関を代表する有識者が含まれる。派遣団には、ユーラシア・ハーム・リダクション・ネットワーク(EHRN)事務局のナタリア・ポドロヴァ氏Natalya Podogovaとオリガ・ベリャーエワ氏Olga Belyaevaが同行した。

インドでエイズ問題に取り組むNGO「インド・HIV/エイズ同盟」 HIV/AIDS Alliance in Indiaは、受け入れ機関としてEHRNに手厚いサポートを提供した。インド訪問中、派遣団は、国家エイズ対策機構National AIDS Control Organization、インド・HIV/エイズ同盟、ターン・タラン市民病院・国営OSTサイト Government run OST site in Tarn Taran civil hospital、全インド医科大学メサドン・センター All India Institute Of Medical Science (AIIMS) methadone centre、薬物使用者をターゲットとした介入サイトInjecting Drug Users Targeted Intervention (IDU TI) site、国連合同エイズ計画 UNAIDS、国連薬物・犯罪事務所UNODCの職員や専門家と会合を開いた。

原題:Government officials from Tajikistan will learn the Indian experience in harm reduction 
出典:EURASIAN HARM REDUCTION NETWORK
日付:2017/5/24
URL :http://www.harm-reduction.org/news/government-officials-tajikistan-will-learn-indian-experience-harm-reduction

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マーク・ダイブル・グローバルファンド事務局長の信念:3つの疫病を終結するために
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【2017年6月26日、ワシントン発】世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)のマーク・ダイブル Mark Dybul 前事務局長は多忙な身であり、世界中を飛び回っている。4年の任期中ダイブル氏は、過去2回にわたる「増資会議」で、数百億ドルの資金調達を指揮し、傾いていたグローバルファンドの名声を取り戻した。先月、ダイブル氏は、事務局長を1期で退任し、ワシントンに戻った。これからはまた、ジョージタウン大学メディカルセンターの教授としての生活である。

ダイブル氏が事務局長に就任した2012年11月、グローバルファンドの評判は危うかった。各国に支援金の管理を任せる運営方針は、あとで外部の会計監査を経ることにはなっていたものの、国によっては資金の不正使用がありうる状況となっていた。2011年、AP通信は内部監査を公にし、基金が医薬品でなく、車やバイク購入に使われていたこと、非合理で売買されているマラリア治療薬、架空請求書を暴露した。同年11月、役員会議で新しく、臨時の事務局最高職である統括マネージャー General Manager に任命されたコロンビアの銀行家、ガブリエル・ハラミージョ氏Gabriel Jaramilloは、職員を解雇し、上層部の総入れ替えをして管理体制を一新した。

度重なるスキャンダルから、スウェーデン、ドイツとアイルランドは寄付を停止した。しかし、ビル・ゲイツ、ボノ、多くの国の首脳や開発大臣は支援を続けた。「『グローバルファンドなしで、これからどうする』というのが彼らのメッセージだった」とダイブル氏は語った。

キャリア選択について、「学部時代に、HIV大流行に関する記事を読んだのがきっかけであった…HIV介入には、研究が唯一の道だった…」とダイブル氏は語った。哲学の学位をジョージタウン大学で取得した数年後、彼は同大学で医学学位を取得した。それから、研修医としてサンフランシスコで1年エイズ患者の治療をした後、アメリカ国立保健研究所 National Institute for Health のアンソニー・ファウシ研究室に入った。2002年から6年間は、エイズ流行の終息をビジョンに、大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)のために働き、最後にはPEPFARの最高責任者であるグローバル・エイズ調整官も務めた。

ダイブル氏については、誰もが「人間味豊か(human)」と言う。キャリアの絶頂期で、資金調達を画策したり、政治的な地位を勝ち取る必要がなかったとき、ダイブル氏のスピーチは神学者のようであった。「感染症を終息させるには、我々はより良い人間にならなければいけない。尊厳と敬意を持って互いに接するべきだ」と語った。

原題:The gospel according to Mark Dybul, the man working to end three plagues
出典:devex Do good. Do It Well. 
日付:2017/6/26
URL:https://www.devex.com/news/the-gospel-according-to-mark-dybul-the-man-working-to-end-three-plagues-89027

<地域別記事(アフリカ)>
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(南アフリカ共和国)暴露前予防(PrEP)の導入進む南アフリカの課題
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【2017年6月20日、ケープタウン発】南アフリカ共和国の東部に位置し、国内第2位の人口を有する都市ダーバン出身のサムケリシウェ・チリザさんMs.Samkelisiwe Chilizaは、暴露前予防 PrEPについての話を聞いたとき、迷わず南アフリカ共和国エイズプログラム・調査センターthe Centre for Aids Programme and Research in South Africa (Caprisa) を通じてこの調査に参加した。

暴露前予防はHIV陰性の人を感染させないようにするために特定の抗HIV治療薬を投与することである。暴露前予防は、南アフリカを含む多くの国々で行われた臨床試験で安全性と効果が示されており、南アフリカ医薬品管理評議会the South Africa Medicines Control Council (MCC) によって認可されている。毎日1錠服薬することでHIV予防の効果は高い。この薬は人間がHIVウイルスの暴露を受けたときにHIVが体内でその複製を作るのを阻害し、感染を防ぐ。

サムケリシウェさんは現在南アフリカで暴露前予防を受けている若い女性の一人であり、周囲の女性達にも、HIVの拡大を防ぎ自分たちも安全でいられるよう、このPrEPに参加するように勧めている。サムケリシウェさんによると、多くの若い女性がすでに感染しておりPrEPの適用ができないという。

デズモンド・ツツ・HIVセンターthe Desmond Tutu HIV Centre のリンダ−ゲイル・ベッカー教授Professor Linda-Gail Bekker によると、PrEPは予防の1つの策であり、治療ではない。正しい方法で継続して服薬することで効果がある。しかし、現在このPrEPは13,000人しか受けておらず、それはセックスワーカーや男性とセックスする男性MSMである。さらにそのうちさまざまな組織によるプロジェクトを通じてPrEPを受けている人はわずか1,387人である。

ベッカー教授は、PrEPが広まらない一方で、政府に対してPrEPをすべての必要とする人に提供すべき、ということを理解させるためのアドボカシーが行われているという。PrEPは高額であることから政府は必要な人々への提供に踏み切れない。現在PrEPへのアクセスは、薬局で購入するか国内で実施されているPrEPの効果測定などのプロジェクトに参加するかの2つの方法しかない。このため、ベッカー氏によると、コミュニティの人々にPrEPについて伝えていくことは、こういった介入についての知識を与えることになりHIVから自分を守るための意思決定をしていく上でとても重要であるという。

世界保健機関(WHO)のガイドラインによると、PrEPはHIVに感染するリスクのある人々に開始される。ウィッツ・リプロダクティブヘルス・HIV研究所(WRHI) のデボラ・バロン氏Ms. Deborah Baronは、PrEPは南アフリカで広められるべきだという。なぜなら、アフリカの東部から南部では毎週7,000人の若い女性がHIVに感染しているが、そのうち3分の1はここ南アフリカ共和国で起きているのだ。バロン氏はさらに、若い女性がPrEPに興味を持てるようにユース・フレンドリーなPrEP投与モデルやツールが必要だという。

2015年後半、南アフリカ保健省は、WHOのガイドラインに沿ってハイリスクにある人々を守るための検査・治療を実施していくと同時に、PrEPの経口薬に関する政策およびガイドラインを作成した。抗レトロウイルス治療薬ARTであるテノホビル配合剤TDF/FTCはMCCによりPrEPとして使用されることが承認された。南アフリカ保健省は必要な人々にPrEPの提供を継続してすすめている。チリザさんのようにPrEPを開始し、女性たちに伝えてくれる人々はHIVを予防するオプションを広げてくれる。

原題:South Africa: Now I Am Not Scared of Testing for HIV
出典:What’sUpHIV
日付:2017/06/20
URL: http://whatsuphiv.blogspot.jp/2017/06/now-i-am-not-scared-of-testing-for-hiv.html 

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(ウガンダ)HIV患者が飢餓と関連の合併症で死亡している
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【2017年6月16日 カンパラ発】東アフリカの内陸国ウガンダの北部では、ここ3ヶ月の食料不足により、グル(Gulu)地方のHIV陽性者たちは治療を続けることができず、飢餓に関連した合併症で亡くなっている。よい食事は薬の副作用を制御する助けになるため、抗レトロウイルス治療やその他の投薬治療中の者にとって、十分な食事は重要である。

当該地域のHIV陽性者団体の副代表であるヘレン・ラムヌ氏 Hellen Lamunuは、彼らが支援する100名以上の患者が空腹のために投薬を中止したと語った。「マンゴーの収穫期には、少なくともそれを食べて服薬できたため状況は少しマシだった。現在マンゴーの収穫期は終わり、多くの人が服薬を断念している」「治療中の子どもがどんどん弱体化して栄養失調になっていくのに、私たちが出来ることは何もない」と彼女は言う。

ラムヌ氏はまた、多くの患者が、1日に1度だけ(朝や昼と違い)何か食べるものがある夜に、服薬するようになってしまっていると話す。団体の記録によると、飢饉と食糧価格高騰により、グル地域のHIV陽性の約160世帯が食糧支援を切実に必要としている。

ウガンダ最大のHIV対策NGOである「エイズ支援機構」The AIDS Support Organization (TASO) のグル地域の責任者であるベネット・キヅィト氏 Bennet Kizitoは、お腹を空かせた患者から不満の声が上がっているという。「多くの患者は、日に二度の食事も取れない貧困の人々だ。翌日のために、その日の食事を抜く者もいる。抗レトロウイルス薬は大きな錠剤なため、何か胃の中に食べ物を入れないと厳しく、これは治療中の者にとって心配な状況だ。」と彼は言う。キヅィト氏は、センターは、状態の悪い患者や栄養失調の患者に補助食を渡すので精一杯で、全員に配るのは難しい、と付け加えた。「大多数のHIV陽性者は家族がいなかったり、社会的支援が不足している。患者は病院に連れてこられて放置されることもあり、同情的な他の患者からの支援に頼って生き延びている状況だ」と話す。「病院スタッフが、患者がうちの被支援者だと気付いて連絡を寄越し、彼らが回復するまで私たちが食糧支援をすることもある」という。

抗レトロウイルス薬の副作用は、ここ数十年で大きく改善され、食事なし、1日一回の服用で済むようになった、とキヅィト氏は言う。しかし、併発感染している患者は、複数の薬の副作用に対抗するため、必ず何か食べる必要がある。「HIV陽性に加え、多くの患者が結核や高血圧、細菌やウイルス感染を併発し、1日に2〜3度服薬する必要がある」と彼は言う。「患者が抗レトロウイルス薬、抗結核薬、抗菌薬、鎮痛薬を空っぽの胃に入れるところを想像してみてほしい。副作用は耐え難いものになるだろう」

近年、作物の生産に影響を及ぼす気候変動や不安定な降雨により、国内の多くの地域は飢饉に悩まされている。

●原題: Uganda: HIV Patients Die From Hunger Complications
●出典:The Observer
●日付:2017/6/16
●URL: http://www.observer.ug/news/headlines/53373-hiv-patients-die-from-hunger-complications.html
 
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編集後記
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先週は、「持続可能な開発目標」(SDGs)のグローバルな進捗状況などを評価する「ハイレベル政治フォーラム」への参加でニューヨークに行っており、二つのサイドイベント開催など、多忙を極めたため、提示発行ができず申し訳ありませんでした。来週も続けて発行しますね。どうぞよろしくお願いします。(MI)

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